表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫とシオンと日没する国の果ての果て  作者: 大本営
第一章 猫とシオンと日ノ本オンライン
13/26

第13話

 山を下り初めてから一週間。

 僕達は最後の山を下ろうとしていた。

 ここまでくるのにいくつの山と谷を越えたのだろうか。思い出せないし、思い出したくもない。

 魔物の群れと戦っていないのに、もう無理! と何度も挫けそうになったことか。

 

「ゆっくりきたけど、たまにはこんな旅も良いよね♡」

「ゆっくりじゃないから! ほんと死ぬかと思ったから」

「ひどいなぁ、シオンはけっこう気を使ったんだよ。本気なら二日の距離なの」

 

 あれを二日?

 初日こそシオンはゆっくり歩いていたよ。でも翌日からは僕に合わせるのが面倒になったのか、結構容赦のない行軍だった気がする。人と猫では歩幅が違うとか、そういうことじゃないんだ。

 例えばそれは、二日目のこと。


 僕達は山登りを初めて最初の谷の前まできた。


「凄く深そうだね」

「えー、そんなことないの」

「だって足場もほとんどないよ。猫の僕は兎も角、シオンがここを下りていくのは危険すぎる。ここは無理をしないで別の道を探したほうがいい」

「大丈夫、大丈夫。あれを見て」

 シオンが指さす先には、絶壁のような崖を慎重に下っていく一匹の鹿がいた。

「ケイ君、昔の偉い人は言いました。『鹿が通えるならば、人も通えよう』と」

「誰だよ、そんな無茶なこと言った奴!」

「大丈夫、大丈夫。僕達はそこまで無茶はしないよ。その昔の偉い人は騎兵70騎と共に駆け下りるなんて無茶したけど、僕達は騎乗する必要ないの。大丈夫、楽勝♪ 楽勝♪」

「……ほんとう?」


 シオンは腰の手をあてて、えへんを胸を反る。


 ちなみに胸は揺れない。

 無い袖は振れないのだ。

 

 言葉に困る僕をシオンは嬉しそうに見つめる。

 悪戯を思いついた悪ガキのような表情だけど、シオンがやると不思議と憎たらしくない。

 仕方ないなぁ、分かったよ、やるよ。

 僕はほんとシオンに甘いらしい。


「あの場所は有名なショーカットできる道なの。ケイ君はシオンの真似をして後からついてくればいいよ~」

「ショーカット?」

 僕が問いをなげる間もなく、シオンは谷底へ向かって飛び降りた!

「……えっ」

 呆気にとられる僕。

 シオンはロープかなにかを木や壁に投げて、落下速度や方向を調整しながら、簡単そうに降りていく。

「こんな感じでいけるよ~」

 シオンはあっという間に谷底まで降りると、満面の笑みを浮かべながら無邪気に手を振ってくる。あの笑みは男を――いや生き物を狂わせる。どんな困難も可能と錯覚させて、力と勇気を奮い立たせてしまうんだ。

 僕みたいにね。

「ええーい、ままよ!」

 ほんと、死ぬかと思ったよ。



 思い返せば人里へ下りる前、兎と鴉と狼達に散々小言いわれたなぁ。

「いいかウサ。決してシオンに迷惑をかけるなウサ」

「這いつくばっても付いていくカラス」

「あとシオンに変なことでもしたら、喰ってやるオオカミ」

 

 こんな感じで警告されたけど、あれはこういう意味なのね。

 シオンと二人? きりで旅をするのが不愉快だったのかと誤解していたけど、本気の警告だったとは。

 今度会った謝っておこう。



 色々あったけど僕達は砺波(となみ)の郷まで、もう間もなくの距離まで来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ