表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/31

1-25 神速射手

小森とガルダを追いかけ、再び屋上へと到着する。

俺と龍夜の二人は小森に追いついたが、轟の姿はまだ後を追って来ない。

「あれ、先輩たちだけですか?轟君の姿が見えないねぇ~もしかして怖気ついちゃったのかな~あはは」

轟がいないことに気づいた小森が嘲笑いながら言う。

「あいつはそんな玉じゃねぇ。すぐに追いかけてくるさ」

「だから安心しろよ。それまで俺たちが遊び相手になってやろうじゃん」

龍夜が神器召喚で生み出した炎を纏った槍を構え力強く答える。

龍夜も同じ気持ちで轟のことを信用しているようだ。

「へぇ、それは楽しみだね。先輩たちも僕が元々弱虫だったからと言って、甘く見てたら痛い目を見るよ。やれ、ガルダ!!」

小森が放つ瘴気がガルダの体内に吸収され、ガルダの力を増幅させていく。

「ふん、我が主はやる気のようだな。だが、勘違いするなよ小森。我は貴様の下僕になったつもりはない。あくまで貴様は我に力を与えるための器に過ぎぬのだ」

そう言うとガルダは背中の翼を広げると、真上に向かって飛びあがった。

「この高さからは、お前たちの攻撃は届きもしまい。くらえ黒き旋風(ブラックウィンド)

地上から数メートル以上飛び上がったガルダは翼から風を巻き起こす。

巻き起こった旋風の中に黒い羽根が舞い、鋭利な刃のように突き立てながら真下にいる俺たちに向かって襲い掛かってきた。

「来るぞみんな、気を付けろ!」

「おう、分かっている。闘神の旋撃!!」

「分かってるよ勇飛。ヘパイストス!」

「あぁ、龍槍炎舞!!」

ヘラクレスが自身の大剣を目の前で弧を描くように回転させると、その遠心力を利用して襲い掛かる黒き旋風を防ぐ。

龍夜とヘパイストスも旋風の中に舞う黒い鋭利な羽を龍槍炎舞により打ち落としていく。

「ほぉ、少しはやるみたいだな。だがいつまでそうやって防ぎきれるかな」

黒き旋風を上手く回避する龍夜たちを見て少し驚いた様子のガルダだったが、さらに手数を増やすかのように旋風の勢いと黒い羽根を増やしていく。

「へっ、手数が増えようとこれくらい俺たちなら全然余裕だぜ!」

龍夜も負けじとまだまだ余裕である素振りを見せる。

「おっと、僕の存在も忘れてもらっちゃ困りますよ先輩方!」

ガルダの攻撃に目が奪われてしまっていた隙に小森が自身の力で発生させた瘴気を纏った風の衝撃波を龍夜に向けて放つ。

「やべっ、うわぁっ!」

小森の攻撃を受けて龍夜が吹き飛ばされる。

「龍夜!くっ…ぐあぁぁぁ」

それに気を取られたヘパイストスも黒き旋風の羽の刃の餌食となる。

「龍夜、ヘパイストス!!くそっ、この数を俺一人では…がはっ!!」

龍夜とヘパイストスが離脱したことで攻撃の1点がヘラクレスに集中し、防ぎきれなかった黒き旋風がヘラクレスに襲い掛かる。

「ヘラクレス!!っつ…くそっ」

ヘラクレスのダメージがフィードバックしたことで、その場に膝をついてしまう。

「ちくしょ~小森の奴も攻撃に参戦できるとは油断したぜ」

小森の攻撃を受けた龍夜が立ちあがると、再び炎槍を構え、今度は反撃の如く勢いよく駆け出した。

「とりあえず小森は俺が相手するから、勇飛とヘラクレス、ヘパイストスはあの鳥頭野郎を頼んだ!」

「一人で向かってくるとは無謀な真似をするね。あまり僕を舐めないでくれるかな!」

龍夜の作戦が功をなしたのか、挑発に乗った小森が龍夜に応戦を始める。

龍夜の姿に鼓舞され、俺も負けじと膝をついていた状態から立ちあがる。

「よし、小森の方は龍夜に任せるとして、俺たちであのガルダって悪魔を何とかしないといけないわけだが…敵は優雅に空からの攻撃に対して俺たちの攻撃は地上からで当てることもままならないか」

「ヘパイストス、遠距離武器は召喚できないのか?」

「生憎だが俺が作る神器は近距離武器専門だからな…今後は遠距離に対応した武器の持ち合わせも考えた方が良さそうだな」

ヘパイストスの神器の中に遠距離に対応する武器の一つでもあれば、少しは状況を打開できそうではあったが、その望みも希薄のようだ。

「ふははは、空中には手も出せない哀れな奴らよ。このまま為すすべもなく我の贄になるがいい」

打開策を考えている間もガルダの猛攻は止まることなく、上空から風を収束させて創り出した大きな風球を連続で投げつけてくる。

ガルダの放つ攻撃を避けることに徹するが、避けた風球が地面に接触したと同時に細かな風の刃となって四散する。

「くそっ、また小賢しい攻撃をしやがるな…」

四散した風の刃の強襲から何とか身を守るが、想像以上の手数に徐々に疲弊感が襲い掛かる。

「このままでは埒が明かんな。ヘラクレス、ここは一つ賭けに出るか」

「賭けに出るって、どうするつもりだヘパイストス?」

「届かないのなら、届かせればいいだろう!」

そういうとヘパイストスは、自身の持つ大槍の先端に足場のような板を作り出す。

「ヘラクレスよ、この先端に乗れ!」

「なるほど、理解したぜヘパイストス」

へパイストスの意図を理解したヘラクレスがヘパイストスの大槍の先端に足を掛ける。

「行って…らっしゃ~い!!」

そのタイミングを見計らったかのようにヘパイストスが大きく槍を振り回し、その遠心力でヘラクレスを宙へと吹き飛ばす。

「って、ただの脳筋作戦(ちからわざ)じゃねぇか!」

思わずツッコミを入れざる負えない状態だったが、止める間もなく既にヘラクレスは一人宙を舞っていた。

宙へと舞ったヘラクレスは空気抵抗に抗いながら体制を整えると空中でガルダの目の前まで辿り着いた。

「なんだと!?」

奇想天外な作戦に虚を突かれるガルダ。

「次はこっちの番だぜ。くらえ闘神の剣!」

ヘラクレスが闘神の剣を振り被りガルダに一撃を与えようとする。

「だが、甘いな!」

「って、ありゃ!?」

ヘラクレスの振り下ろした剣の軌道を瞬時に読んだガルダがそれを避ける。

ヘラクレスの闘神の剣はそのまま空を斬り、当の本人は何とも情けない声と同時に重力に抗うすべもなく地面へと急降下していった。

空中から見事な落下を決めたヘラクレスはそのまま地面に激突し、その衝撃で砂埃が舞い上がった。

「痛ってぇ…まさか避けられるとは思ってなかった。って、あ、勇飛…大丈夫か?」

砂埃の中から起き上がるヘラクレスが申し訳なさ程度の表情でこちらを見つめる。

それもそのはずで、ヘラクレスが盛大に空中から紐無しバンジーをかました如く地面に叩きつけられた衝撃で、俺の体も途轍もない衝撃を受けて、現在地面に突っ伏してしまっているからだ。

「ヘ~ラ~ク~レ~スくぅ~ん…」

ヘラクレスの呼びかけに恨みを込めた声音で反応し、ゆっくりと立ち上がる。

「お、おい勇飛、目が怖いんだが…」

「あぁ、誰のせいだろうな~あとで覚えとけよ」

久々に殺意の籠った目でヘラクレスを睨みつける。

「わ、悪かった反省している…」

普段から肝っ玉の据わっているヘラクレスでさえ、この時は一瞬恐怖を感じていたそうだ。

「おいおい、何やってんだよ勇飛!」

俺の様子を見ていた龍夜が心配したのか駆けつけてくる。

「っつ…結構ヤバかったけど何とかな…お前こそ小森の方は何とかなったのかよ?」

「あれれ先輩、逃げるんですか?さっきまであれだけ威勢が良かったのにね」

声のする方を向くと駆け寄ってきた龍夜の直ぐ後を小森が追いかけてきていた。

「龍夜、後ろだ!」

「あぁ、分かってんよ」

背後から迫る小森に瞬時に反応した龍夜は炎槍を突きつけて応戦する。

「おっと、危ない」

目の前に突き付けられた槍の切っ先に即座に反応した小森が退き距離を取る。

小森の横にガルダが空中から合流する。

「小森よ、そろそろこいつらとの遊びもここまでだ。終わりにするぞ」

「そうだね、もう十分楽しんだから先輩たちにはここで消えてもらおうか」

ガルダの合図に併せて小森が更に瘴気を増幅させる。

瘴気を吸収したガルダはもう一度空中に飛び立つと、巨大な風球を作り出し瘴気と融合させる。

「これで終わりだ人間ども。黒羽ノ(ブラック)剛嵐(テンペスト)!」

ガルダが黒羽ノ剛嵐を放つ直前だった。

空中のガルダに向かって光の矢と高速の弾丸が飛んでいくのが見えた。

突然の遠距離攻撃に攻撃を中断し、回避に移行するガルダ。

「だれだ!?」

ガルダが攻撃の飛んできた方向に視線を向ける。

「何とか間に合ったようだな」

間一髪のところでタイミングよく登場した轟の姿がそこにいた。

「タイミングは完璧…でも避けられた…」

同時に光を纏った弓矢を放ったアルテミスが残念そうな表情をしていた。

「やっと来たか轟。まったく遅ぇじゃねか!!」

轟の姿に気づいた龍夜が声をかける。

「間に合ったんだからいいじゃないっすか。先輩たちの危機を助けたことに変わりねぇし、今回はこれでチャラってことにしてくださいよ」

そう言いながら轟はゆっくりとこちらに向かって歩み寄ってくる。

「先輩たち、後は俺に任せてもらっていいっすか?」

後は俺に任せろと言わんばかりに俺と龍夜の目の前で歩みを止めて立ちはだかる轟。

「おいおい、後からやってきておいて良いとこ取りかよ~ってかお前ひとりで大丈夫なのか轟?」

「さっきまで愕然としていた様子だったけど気持ちの整理はついたのか?」」

「まぁ、先輩たちはそこで俺たちの戦い方(やりかた)を見ててくださいよ」

俺たちの心配とは裏腹に轟はどこから持ち出してきたのか手元の二丁拳銃をくるくると回しながら余裕の表情を見せている。

「まさか轟君も神使いだったとはね。ちょうどいいや、日ごろ不良たちに惨めな思いをさせられていた僕の恨み辛みを君にも返してあげるよ」

自分を虐めていた不良組の中にいた轟に対しても復讐心を露わにする小森。

「お前を倒す前に1つだけ言っておくぞ。俺はお前を虐めるために不良達(あいつら)の中にいたんじゃない。お前を助けるためにいたんだ」

「はぁ?何を今更そんなこと」

「そう反応するのも当然だよな…お前がこうなっちまったのも全てはお前に手を貸せなかった俺のせいだと思っている」

「だったら僕が虐められていた時にすぐに助けてくれたらよかったじゃないか!!」

「俺がこうして強くなったようにお前にも気持ちの面から強くなって欲しかったんだよ。お前が思っているほど、俺も昔からこうじゃなかった。お前と同じく俺も弱虫者だったんだよ」

「そ、そんなこと僕と何が関係あるんだ…第一君と僕は赤の他人じゃないか!君に僕の何が分かるって言うんだよ!」

「お前は忘れちまっているようだけどな10年前のことを…」

「10年前…まさか、健太郎ってあの(ケン)ちゃん?」

「懐かしいなその呼び名…そのまさかだよ正男…あの時とは容姿も言葉使いも変わっちまったから気づかなかったんだろうけどよ」

「10年前に急な転校で僕の前からいなくなったと思ったら、こんな形で再会することになるなんて…ククク、君は僕を裏切ってそんな強くなっちゃったんだ…そうやって強くなった優越感で弱い者を守るなんて偽善者のような言葉を言うようになったんだね。でも僕だって今は違うよ。君と同じくらい、いやそれ以上に強さを手に入れたんだ」

「悪魔に身を売って手に入れた力が本当の強さな訳ないだろ。今からそれを俺が教えてやる。悪魔に囚われたお前を救うことが今の俺の役目だからな」

「そういう上から目線が気に食わないんだよ!お、お前との過去なんて当の昔に僕は決別しているようなものなんだ!今更過去を掘り下げて僕に関わるんじゃねぇよ!!」

激高した小森から更に負の瘴気が溢れだし、その瘴気がガルダに吸収されていく。

「いいぞ小森、その負の感情が我の糧となるのだ」

小森から更に力を吸収したガルダが轟とアルテミスに向かって襲い掛かる。

「健太郎、気を付けて」

「あぁ、分かってるよアルテミス」

迫るガルダの強襲に対して臨戦態勢を取る轟とアルテミス。

「至近距離からでは避けられまい。黒き旋風!」

二人の目の前まで迫ったガルダが翼を大きく羽ばたかせると黒い羽根の刃が放たれる。

「避けられない?だったら全部撃ち落としたらいいだけだろ」

そう言うと轟は両手に二丁拳銃を構えると、ガルダの黒き旋風に対して魔力を帯びた弾丸を打ち放つ。

銃弾演舞(バレットダンス)!」

轟の二丁拳銃から交互に射撃される銃弾は毎秒10発の速さで、確実にガルダの放つ黒き旋風の刃を打ち落としていく。

「バカな…人間如きにできる技なのか!?」

二丁拳銃の速射速度もさることながら、毎秒10発の銃弾を全て命中させている轟の技量に唖然とするガルダ。

神速射手(ガンスリンガー)。私が健太郎に与えた能力。健太郎だから使いこなせる」

アルテミスも応戦するために光の弓を構えていたが、健太郎1人で片づけてしまったことを見ると、弓を下ろし、淡々とした表情で、驚いているガルダに説明する。

「こんなやつに何をてこずっているんだガルダ!お前が何もできないなら僕がやってやろうか!?」

轟の前に怯んだ様子を見せるガルダに対して小森が罵声を浴びせる。

「黙れ、人間が調子に乗るでない!だったら貴様も我にもっと力をよこすのだ!」

小森の言動にキレたガルダが小森の体内から無理やり魔瘴気を吸い出す。

「フハハハハ、これだけの魔瘴気の力があれば貴様らなど虫けら当然のごとく蹴散らしてくれる」

小森から大量の魔瘴気を吸収したガルダの胴体が先ほどよりも巨大化し、高笑いを上げながら全身に力が溢れていることを誇張している。

「うぐっ…なんだ…苦しい…」

しかし、それと同時に一度に大量の瘴気を吸い取られた小森が突然苦しみはじめ、その場に膝をつく。

「健太郎。あの子、このままだと…」

見て分かるように小森の状態がかなり危険であることを察したアルテミスが轟を促す。

「あぁ、これ以上悪魔の好きにさせるか」

「フン、ほざけ人間が!」

ガルダが羽ばたき勢いよく上空へと飛び立つ。

上空で轟とアルテミスを見下ろす位置まで距離を取ると、両手に黒い風玉を生み出して構える。

「上空から降り注ぐ無数の風の瘴気に朽ちるがいい。黒羽の連風弾波(ブラックストリーム)!」

先程の轟と同じように無数の風玉を両手から轟とアルテミスに向けて振り落とすように打ち出す。

「ったく、図体がでかくなっても、やることは安地からの攻撃とは肝の小さいやつだな」

上空からの降り注ぐ風玉を轟は物ともせず、軽やかな足さばきで回避する。

銃の技術だけでなく運動能力もかなり高いことが見て分かる。

「健太郎。ここは私がやる」

アルテミスが光の弓を構えると、ガルダのいる向きとは反して、上空に向けて光を収束した矢を解き放つ。

「フン、バカめ。どこに向かって打っている」

「バカはお前。閃光の霧雨(せんこうのきりさめ)

アルテミスが放った光の矢が上空で魔法陣を展開し、展開された魔法陣から閃光の如く無数の矢がガルダに目掛けて降り注ぐ。

「なんだと!?ぐおあぁぁぁ!!」

閃光の如く降り注ぐ無数の矢が、ガルダの翼を貫き、風穴を開けていく。

翼に穴をあけられたガルダが飛行能力を失い、地上へと落下する。

「がはっ…お、おのれ…あっ…」

地面に這いつくばるガルダが恨めしそうに顔を上げると、轟がガルダの顔面に銃口を突き付ける。

「これでチェックメイトだな。鳥頭野郎」

「ま、まて!やめろ…」

銃口を向けられたガルダが青ざめた表情で懺悔する。

「悪魔が人間に命乞いするようじゃ終わりだな。消えろ!」

ガルダの命乞いを聞き入れる慈悲もなく、轟は悪魔の額に目掛けて神魔を宿した銃弾を打ち放った。

「ぎゃぁあああああ!」

額を打ち抜かれたガルダが断末魔を上げて消滅する。

ガルダが消滅すると同時に小森の体からも瘴気が煙を上げるように消えていった。

「小森!」

意識を失うようにその場に倒れそうな小森の下に轟が駆け寄る。

「轟君?僕はいったい何を…」

悪魔との契約から解放されたことで記憶の一部が混濁している小森。

「お前は何も知らなくていい。俺がただ勝手に…」

「あぁ…そうか…10年前に轟君と僕は友達で…それを僕はすっかり忘れていたんだった。弱虫の僕は結局轟君みたいに強くなれなくて、その弱みから悪魔に力を貸して君たちを…」

「お前は何も悪くねぇよ小森。だから…もう何も気にするな」

「今頃色々気づくなんて僕は本当に馬鹿だよね…轟君、目が覚めたらまた昔みたいに…」

「あぁ、分かってる…」

目が覚めても悪魔と契約していた時の記憶が消えることを知っている轟は、小森の何か言いたげな表情に優しく頷くだけだった。

その表情を見た小森は安心したかのように意識を失った。

「健太郎。これで良かったの?」

「あぁ、俺なりのケジメはつけたつもりだ」

問いかけるアルテミスに自分なりの答えを返した轟は、踵を返すと勇飛と龍夜の下へ向かって歩み寄っていく。

「先輩たちにも色々世話になったっすね。とりあえずお礼だけは言わせてもらいます。ありがとうございました」

「意外と素直なところもあるんだな。それよりも俺たち二人で苦戦した悪魔をお前ひとりで倒すとは恐れ入ったぜ」

「おいおい勇飛、俺は全然余裕だったっての。仕方なく後輩に手柄を譲ってやっただけだぞ」

先輩としての意地なのか、横で不貞腐れた表情を見せる龍夜。

「まぁ、何にせよこれからも先輩たちとは神使いとして嫌でも関わることになりそうっすね…」

「嫌でもって、相変わらず可愛げのない後輩だなお前は…」

「俺みたいな奴に可愛げがあったらそれこそ気持ち悪いだろ。とりあえず俺は意識失った小森を保健室に連れていくんで、今後ともよろしく頼みますわ、先輩たち」

轟はそう言い残すと小森を背負って屋上を後にしたのだった。

「勇飛、龍夜!」

轟を見送る視界の下から突然アルテミスに呼びかけられる。

「うおっ、急に呼びかけられるからビックリした!視界に入ってなかったから尚更だぜ」

「龍夜、私のこと、子供扱いしてる…また脳天、打ち抜かれたいの?」

不意を突かれた龍夜が驚きの声を上げるが、身長の事を弄られたアルテミスが龍夜を睨むように見つめる。

「わ、悪かったって。冗談だよ、じょーだん!」

「ってか、まだいたのかアルテミス、轟の後を追いかけなくていいのか?」

「健太郎、素直じゃないだけ…だから…これからも、関わってくれると…嬉しい」

轟のことを思ってのことだろう。

これからも轟のことを頼むといった表情でお願いをしてきた。

「言われなくても分かってるよ。(あいつ)も今日から俺たちと同じ仲間だからな」

「そうだぜ、神使いと学園の先輩として今後も俺たちが面倒見てやるから安心しろよ。はっはっは!」

「そう、それなら良かった…ありがとう」

俺たちの言葉を聞いて安堵した表情を見せたアルテミスは、俺たちにお礼を言うと、轟の後を追いかけて行った。

「なぁ勇飛、結局のところ鉄也の依頼ってこれで解決したことになったんかな?」

「どうだろうな…まぁ結果的に轟は悪い奴ではなかったってことで、鉄也に報告しておこう」

こうして轟との一件を解決したことにした俺たちは、生徒会室へ戻り、鉄也への報告書をまとめることにしたのだった。


時は経過して翌日。

轟との一件を終えた後、生徒会室に戻った俺たちは水希と亜理紗に事の顛末を報告した。

俺たちが仕事に励んでいる最中、女子たちは、さぞ楽しい時間をお過ごしの様子だった。

その後、1日が経過して放課後の生徒会室にて、いつも通り生徒会の業務に勤しんでいる時だった。

「私たちが女子会に花を開かせている間に色々あったことは分かりましたわ…それで?どうして貴方がこの生徒会室にいるのかしら?」

亜理紗が視線の先にいた轟に質問を投げかける。

「別にいいだろ?いつも使っていた教室が閉鎖させられちまって、行くところが無くなったんだよ。それに俺も先輩たちと同じ神使いの一人なんだし、ここにいてもアンタに迷惑はかけてねぇと思いますけど」

「よくありませんわよ!生徒会の一員でもない貴方が勝手に生徒会室に入り浸ることなんて許されませんわ。それに年上に対する貴方のその態度も躾が必要かしら…?」

轟はいつも通り返しているつもりだが、その態度が亜理紗に火をつけてしまったのか、一触即発の雰囲気が漂ってしまう。

「まぁ風条院もそんなカリカリすんなよ。生徒会室に生徒会以外の人が入いっちゃダメなんて規則もないし、生徒会長の俺が良いって思えば良いんじゃねぇの?それにいつもそんなことで怒ってたら、お顔のシワが増えちゃうぜ☆」

轟をフォローするつもりで龍夜が横やりを入れるが、最後の余計な一言に亜理紗の額の血管が切れるような音がした。

「あぁ、ここにも躾が必要な馬鹿がもう一人いましたわね…」

ドス黒いオーラを纏わせながら亜理紗が立ちあがると、赤く鋭い瞳を光らせるような表情で拳を合わせて指ポキを鳴らしながら、ゆっくりと龍夜と轟に近寄っていく。

「ちょ、龍夜先輩が余計なこと言うから…この人やべぇんじゃねぇっすか…」

流石の轟も今の亜理紗の姿を見て恐怖心を感じたのか、怖気ついた表情が顔に出ている。

「ははは…その場の空気を和ませようとしただけなんだけどな…やっべ…」

龍夜もやっちまったなと言わんばかりの表情でから笑いをしている。

「二人ともそこにひれ伏しなさい!!」

ブチギレた亜理紗が龍夜と轟に躾を施し始め、生徒会室は大乱闘状態となった。

「勇飛君、アレは止めなくていいんでしょうか…」

「龍夜の自業自得だ…ほとぼりが冷めるまでそっとしておこう」

亜理紗に一方的にボコられていく龍夜たちの様子を眺める水希が心配そうに問いかけてきたが、あぁなってしまっては止めようがないことは分かっていた。

「あ、そう言えば、以前に目安箱に入っていたお悩みのこと覚えてますか?」

話を変えるように水希が、この前生徒会で実施した目安箱の話題を急に振ってきた。

「あぁ、友達ができるにはどうしたらってやつだっけ?急にそれがどうしたんだ?」

「あのお悩みなんですが、きっと轟君が書いたお悩みだったと思うんですよね」

水希の突拍子もない一言に思わず吹き出しそうになった。

「いやいや、そんなまさか…」

「流華の言う通り。あれ。健太郎が書いたもので合ってる」

俺が返答する前に割り込むようにアルテミスが俺と水希の間に入ってきた。

「アルテミス!?お前はいつも急に出てくるな…」

「アルテミスさん、やっぱりそうだったんですね」

「うん。健太郎。友達できなくて困ってた。私にいつも相談してた。だから私がアドバイスした」

「なるほどな…確かに見た目のせいか、周りの生徒からはちょっと距離を置かれてる感じだったもんな」

「ふふ、でも意外と可愛いところもあるじゃないですか」

「健太郎。素直じゃないだけだから」

普段から表に出さないだけで根は素直なやつなんだろう。アルテミスもそれを分かって信頼しているのだろうし、俺たちも轟の素直なところは受け入れていかないとなと改めて思う瞬間だった。

「まぁ、轟のことを思ったら、この件はここだけの秘密にしておこうか」

龍夜と亜理紗に公開しようものなら、これ以上に騒がしくなって収集がつきそうにないだろう。

こうして、新たに轟とアルテミスを仲間に向かい入れたことで、聖天六神と契約する神使い全員が揃ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ