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1-22 新星生徒会の誕生

金城とマモンとの戦いを終えた翌日、いよいよ生徒会選挙も最終日を迎えた。

昨日は亜理紗たちと別れた後、鉄也の気を引くために身代わりになっていた龍夜と水希のもとへ合流し、今日の最終選挙の準備を進めながら事の顛末を説明した。

一連の説明を聞いた水希は安堵した様子を見せていたが、龍夜は自分も戦いに参戦できなかったことを若干悔やんでいる様子だった。

とりあえず金城と契約悪魔のマモンを倒したことで、この後の生徒会選挙も無事に公平な戦いが行われることだろう。

しかし、マモンが消滅したことで金城も今回の一連の記憶を消失しており、意識を取り戻した本人も今ではなぜ自分が生徒会選挙に立候補したことすらも覚えていないとのことだった。

金城は選挙を棄権する形となり、最終日は実質龍夜と亜理紗の一騎打ちになった。

昨日と同様に最終日の投開票は体育館で全校生徒の前で行われることとなった。

全校生徒と教師一同が見守る中、ステージ上には立候補者の龍夜と亜理紗が横並びに椅子に座っていた。

「さぁ、今期の生徒会選挙もいよいよ大詰めとなりました。立候補者の火炉瀬さんそして風条院さんにはそれぞれ最後の演説時間が設けられます。この最終演説で投票の運命も決まることでしょう」

司会を務める生徒が会場を盛げようと進行する。

固唾を飲んで見守る生徒もいれば、司会の熱気に同調して声援を送る生徒がいたりと、会場の盛り上がりもいよいよ最終戦という局面を迎えている様子だ。

「龍夜君、大丈夫ですかね」

「泣いても笑ってもこれで最後だ。まぁやれることは俺たちも準備してきたし、あとはあいつ次第だろうな。でもいつも通りの龍夜なら大丈夫なはずさ」

隣で心配する表情で龍夜を見守る水希に励ましの言葉をかける。

「それでは、最初は風条院さんより最終演説をお願いします」

司会の生徒の呼びかけを聞いた亜理紗が立ち上がると、緊張とは無縁ないつも通りの凛とした姿で壇上へと登壇した。

「全校生徒の皆さんこんにちわ。改めまして、この度生徒会長に立候補しました風条院亜理紗です」

亜理紗は全校生徒の前で一礼すると、普段の上目使いな言葉とは裏腹に丁寧な言葉で話し始めた。

「私はこの学園を由緒正しき他校の模範となる学園を目指すための公約を掲げさせていただきました。それは私の家計の教えでもあるのですが、常に他者から尊敬される存在であること、世間の物事は正しい規律の上で成立していることを教えられてきたことにあります。この学園を規律あるものにしていくためには、私のような存在が皆さんに認められトップに立つことが相応しいと考えていました。そこにいるもう一人の立候補者は物事を楽観的な考えて、今回の生徒会選挙で生徒会長の座を狙っていることとのことですが、大した公約も掲げず、私から言わせて頂いたらレベルの低い思考だと思いますわ」

亜理紗が龍夜の方を指し、煽るするように言い放つ。

「亜理紗のやつ、龍夜を煽って挑発のつもりかよ…」

「これも風条院さんの作戦でしょうか。先に演説する側としては自分を優位に見せるような形でもありますが、龍夜君、挑発に乗っていなければいいですけど…」

相手の策にまんまと嵌っていないか心配する水希と一緒に龍夜の方に視線を向ける。

「おいおい誰が楽観的だってぇ?お前こそ規則だ何だのに縛られたお嬢様を演じてるだけじゃねぇのか!?」

案の定、挑発に乗せられている龍夜だった。

「あの馬鹿…まんまと挑発に乗せられてんじゃねぇか」

「龍夜君…」

その様子を見ていた俺と水希は呆れるようにため息をつく。

「あらあら、私は本当のことを言っただけに過ぎませんわ」

噛みつく龍夜に対して見下すようなセリフを吐き捨てる亜理紗だったが、この後に続けて話し始めた内容が誰もが予想しなかったものだった。

「ですが…彼の言った一言にも一理あります。規則に縛られたお嬢様を演じる…今の私には滑稽とも言えるほど全くその通りですわ。今回の生徒会選挙に参戦し、一時は優勢だった票数も時間が経つほどに下がっていく、それは私の掲げた公約が生徒のみんなが求めている学園生活に反していたものだった、自分がこれまで正しいと思っていた規律は皆さんにとってはただの重しでしかなかった…そのように思われてしまった以上、私には皆さんの上に立つ資格が無いと私自身判断してしまいましたわ。それに規律に縛られるよりも限られたこの学園生活という時間の中で、楽しい学園生活の思い出を作れるような政策を掲げ実行できるような人材の方がこの学園には必要であり、その方がなんだかワクワクしないと思いませんか?」

自らの内に秘めていたものを吐き出した亜理紗は一呼吸置き、最後に全校生徒の前で宣言する。

「私はこの生徒会選挙において生徒会長への立候補を辞退致しますわ」

亜理紗が宣言したこの一言に俺や龍夜水希だけでなく会場全体がまさかの展開に驚きとざわつきを見せた。

「火炉瀬龍夜、あなたもこっちに来なさい!」

会場がざわつく中、亜理紗が龍夜の方に視線を向けて言い放つ。

「な、なんだよ風条院、これもお前の企みか何かか…?」

言われるがままに壇上に登壇した龍夜だが、亜理紗を警戒している様子だった。

「バカね…私がこんな状況にまでして今更冗談を言うわけないでしょ」

そういうと亜理紗が龍夜の左腕を掴んで、高らかに挙げながら宣言する。

「私は火炉瀬さんを今期の生徒会長として認めることにしますわ。私が彼の推薦人としてこの場において宣言させて頂きますわ。皆さんも彼の生徒会長としての行く末を改めて応援して差し上げましょう!」

いきなりの出来事に会場の生徒たちも状況を整理しきれていない様子で唖然としている表情を見せている中、会場の隅で見守っていた一人の先生が拍手をする。

その方に視線を向けると、拍手をしていたのは鉄也だった。

鉄也の拍手に乗じて他の先生たちも拍手を始めると、やがて生徒たちも龍夜と亜理紗たちに対して盛大な拍手を行った。

「ほら、ここまで私が盛り上げて差し上げたのですから、最後くらいあんたがビシっと決めなさい」

拍手の音で会場が盛り上がりを見せる中、龍夜に聞こえるよう亜理紗が横で囁く。

「ったく、何か色々としてやったりな感じで乗せられちまった感じがするけどよ…風条院、お前がそこまで言うなら、お前の思い確かに受け取ったぜ!この俺、火炉瀬龍夜が新たな生徒会長になった以上、最高に楽しくワクワクした学園生活の思い出を皆にプレゼントすることを今ここで約束させてもらうぜ!お前たちもこの俺についてくることにヒヨっている奴なんていねぇよな?生徒のみんな、俺たち新しい生徒会をこれからもよろしく頼むぜ!!」

まるで何処ぞの不良漫画のリーダーのようなセリフを言い放った龍夜だったが、その意気込みに感化した生徒たちは更に盛大な拍手で龍夜と亜理紗たちを歓迎する様子を見せていた。

「何か凄いことになっちゃいましたが、龍夜君と亜理紗さんもお互いに納得した結果に落ち着いて良かったたですね」

「はは…ったく、そうだな。何はともあれ龍夜と亜理紗らしい結末で終えられた感じだな」

こうして予想もつかない結果ではあったが、生徒会選挙の結果は、亜理紗が辞退することによって龍夜が次期生徒会長の座として君臨することとなった。


その後、生徒会選挙も事無く終わり、生徒一同が解散する中、壇上から降りてくる亜理紗と目が合う。

「亜理紗、俺たちのためにわざと辞退したんだったら本当にこれで良かったのか?」

目が合った拍子に声をかける。

「勘違いしないで。ただ、金城との一件でアンタたちに借りを作ったままなのが気に入らなかっただけ…これで借りは全部チャラよ」

いつも通りの態度で返す亜理紗だったが、満更でもない様子だった。

「それよりもアンタの方がこれから大変なんじゃないかしら?龍夜(あのバカ)が当選したことで必然的にアンタが副会長になるんだから」

「あ、そういえばそうだった…」

亜理紗の言葉でそういえば龍夜がそんなことを言っていたことを思いだす。

「ちなみに副会長の席は2席あるのをご存じで?」

亜理紗が意味深な表情で問いかけてくる。

「おい、それってまさか…」

嫌な予感がしつつ亜理紗に問い返す。

「お察しの通りよ。私がもう1席の副会長の座につくことになるわ。まぁ生徒会長にもしもなれなかった場合の保険として申請していただけですけどね。でもこれでアンタを好きに使ってやることができるわね。安心なさい、水希さんは丁重に扱って差し上げますわ」

まさかとは思ったが、亜理紗が副会長の座につくことになるとは…てか結局、俺のことを下僕として扱う恨みは消えていないじゃないか。

「あ~何か演説が終わったら喉が渇きましたわ。勇飛、ちょっと購買で紅茶を買ってきなさい。副会長の命令よ」

「いや、俺も副会長だし、同じ立場じゃねぇのか?なんでお前にパシられる理由があるんだよ」

「ふ~ん、女の子の顔を殴っておいてそんな態度を取るんですこと…あ、梶田先生!聞いてもらえますか、そこの勇飛君が…」

ちょうど横切った鉄也の姿を見た亜理紗が声をかける。

「ん、どうした風条院、勇飛がお前に何かしでかしたのか?」

「いや、何でもねぇよ鉄也。あ、紅茶な、すぐに買ってくるから待ってろ」

鉄也に呼びかける亜理紗を慌てて制して何事もないように誤魔化す。

鉄也を盾に出されては暫くは何も逆らえないだろ…

情けないことにこの後数日、俺は亜理紗の下僕として扱き使われることになったのだった。

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