第十三話 『感想』
ショーのあと。
不思議なくらい、
頭が静かだった。
疲れてはいる。
人混みも、
まだ少し苦手だった。
でも。
嫌な疲れ方じゃない。
昔、
ショー帰りによく感じていた、
あの感覚に近かった。
“楽しかったな”
ただ、
それだけが残る感じ。
◇
数日後。
いつものカウンセリングルーム。
白い壁。
観葉植物。
柔らかい照明。
ちーちゃんは、
いつものようにメモを用意しながら笑った。
「最近どう?」
その聞き方も、
昔より自然になっていた。
“患者”としてではなく。
ちゃんと、
こちらを見てくれている感じ。
「……まあ、それなり」
「それなり、ね」
ちーちゃんは、
少し笑う。
「ショー来てたでしょ」
「っ」
思わず止まる。
ちーちゃんは、
肩を揺らしながら笑った。
「気づかないと思った?」
「帽子被ってたし……」
「いや、
めちゃくちゃ見覚えある空気だったから」
空気ってなんだよ。
そう言い返そうとして。
少しだけ、
昔みたいな気分になる。
ちーちゃんは、
優しく続けた。
「来てくれてありがと」
「……まあ」
「どうだった?」
その質問に。
少しだけ、
言葉を探す。
楽しかった。
すごかった。
昔より綺麗だった。
でも。
一番引っかかっているのは、
最後の、
あの一瞬の表情だった。
“寂しそう”
に見えた顔。
でも。
それを聞くのは、
なんだか違う気がした。
「……最後のあれって」
そこまで言って止まる。
ちーちゃんが、
少しだけ首を傾げた。
「ん?」
「いや……なんでもない」
目を逸らす。
「すごく良かった」
静かな部屋。
数秒。
ちーちゃんは、
こちらを見ていた。
そして。
少しだけ。
本当に少しだけ、
安心したみたいに笑った。
「そっか」
その笑い方が。
ショーの進行役じゃなく。
昔、
よく見ていた笑い方に近くて。
胸の奥が、
少しだけ温かくなった。
◇
ちーちゃんは、
ペンを軽く回しながら続ける。
「でも、
前みたいに前列来なかったね」
「無理」
即答だった。
ちーちゃん、
少し吹き出す。
「そんな即答する?」
「いやだって……」
言葉に詰まる。
昔みたいに、
元気よく反応できる気がしない。
ステージへ上がるなんて、
もっと無理だ。
すると。
ちーちゃんは、
静かに頷いた。
「うん」
「今はそれでいいと思う」
否定しない。
“頑張って来て”
とも言わない。
ただ。
「でも」
少し笑う。
「またそのうち、
自然に戻ってくる気もする」
「なんだそれ」
「だって君、
ショー好きだもん」
その言い方が、
あまりにも自然で。
少しだけ、
笑ってしまった。
ちーちゃんは、
その反応を見て、
満足そうに頷く。
「うん」
「今の、
前よりちょっと柔らかい顔してた」
昔みたいに、
全部を見抜く感じではない。
でも。
ちゃんと、
見てくれている。
その安心感が。
今は、
すごく心地よかった。




