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第十三話 『感想』



ショーのあと。


不思議なくらい、

頭が静かだった。


疲れてはいる。


人混みも、

まだ少し苦手だった。


でも。


嫌な疲れ方じゃない。


昔、

ショー帰りによく感じていた、

あの感覚に近かった。


“楽しかったな”


ただ、

それだけが残る感じ。



数日後。


いつものカウンセリングルーム。


白い壁。


観葉植物。


柔らかい照明。


ちーちゃんは、

いつものようにメモを用意しながら笑った。


「最近どう?」


その聞き方も、

昔より自然になっていた。


“患者”としてではなく。


ちゃんと、

こちらを見てくれている感じ。


「……まあ、それなり」


「それなり、ね」


ちーちゃんは、

少し笑う。


「ショー来てたでしょ」


「っ」


思わず止まる。


ちーちゃんは、

肩を揺らしながら笑った。


「気づかないと思った?」


「帽子被ってたし……」


「いや、

めちゃくちゃ見覚えある空気だったから」


空気ってなんだよ。


そう言い返そうとして。


少しだけ、

昔みたいな気分になる。


ちーちゃんは、

優しく続けた。


「来てくれてありがと」


「……まあ」


「どうだった?」


その質問に。


少しだけ、

言葉を探す。


楽しかった。


すごかった。


昔より綺麗だった。


でも。


一番引っかかっているのは、

最後の、

あの一瞬の表情だった。


“寂しそう”

に見えた顔。


でも。


それを聞くのは、

なんだか違う気がした。


「……最後のあれって」


そこまで言って止まる。


ちーちゃんが、

少しだけ首を傾げた。


「ん?」


「いや……なんでもない」


目を逸らす。


「すごく良かった」


静かな部屋。


数秒。


ちーちゃんは、

こちらを見ていた。


そして。


少しだけ。


本当に少しだけ、

安心したみたいに笑った。


「そっか」


その笑い方が。


ショーの進行役じゃなく。


昔、

よく見ていた笑い方に近くて。


胸の奥が、

少しだけ温かくなった。



ちーちゃんは、

ペンを軽く回しながら続ける。


「でも、

前みたいに前列来なかったね」


「無理」


即答だった。


ちーちゃん、

少し吹き出す。


「そんな即答する?」


「いやだって……」


言葉に詰まる。


昔みたいに、

元気よく反応できる気がしない。


ステージへ上がるなんて、

もっと無理だ。


すると。


ちーちゃんは、

静かに頷いた。


「うん」


「今はそれでいいと思う」


否定しない。


“頑張って来て”

とも言わない。


ただ。


「でも」


少し笑う。


「またそのうち、

自然に戻ってくる気もする」


「なんだそれ」


「だって君、

ショー好きだもん」


その言い方が、

あまりにも自然で。


少しだけ、

笑ってしまった。


ちーちゃんは、

その反応を見て、

満足そうに頷く。


「うん」


「今の、

前よりちょっと柔らかい顔してた」


昔みたいに、

全部を見抜く感じではない。


でも。


ちゃんと、

見てくれている。


その安心感が。


今は、

すごく心地よかった。


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