第80話 ずっと守を追っていたのかもしれないね
あらゆる方向から質問がくるだろうと予想しているジャンヌは、覚悟を決めていたとはいえ、緊張しながら壇につく
しかし、ただ真っ直ぐに守を見つめて、安心したのか顔つきはいつもの穏やかな表情へと戻るのだった
「ごめんね〜、ちょっと緊張して顔が強張っていたみたい。でも、一応は(・)もう大丈夫だよ」
「何かと名前が出ている聖守様と違い、色々と秘密が多いジャンヌ様には多方面に渡り質問が来ています。頂いた質問の中では、私も気になっている項目が多々あります。では、さっそくですが、"独自で剣技を磨いてきたというのは本当でしょうか?"」
「旅に出る前までって意味ならその通りだよ〜。私の周りには、剣を扱える人がいなかったからね。でもでも旅の最中は、守やアキレウスと手合わせすることが多かったから、宮廷剣術も少しはできるって感じかな」
「ジャンヌの剣術って軌道が読めないのよね。剣士なら世界最強と言われているけど、これはその通りだと思うわ。アキレウスも守も剣だけならジャンヌに手も足も出ないものね」
「ちなみにですが、今後弟子をとったりはしないのでしょうか?」
「う〜ん…予定はないかな。私って頭がよくないから、守みたいに何事も上手にできないだろうし、何よりも剣を持つ理由がないからね。それに、師事で時間を取ると守と一緒にいる時間がなくなっちゃうから」
「もったいないくらいですが、ジャンヌ様にも普通の少女としての大事な時間がありますからね。これは皆さんが納得していることでしょう」
「ま、その手の話には、学生生活を希望している俺が何か言える話じゃないしな。ジャンヌの好きにすればいいところだな」
「いや…ジャンヌさんの好きなようにするというのは、守さんがもろもろ絡んでいるのでは…」
「うっ…」
ニースに突っ込まれるまでもなく、自分でもわかっていただけに、言葉にされ、頭を抱える守
「"戦争時代の相方もやはり大魔法剣士様でしたか?"」
「うん、勿論!!って言いたいところだけど、状況によってはアキレウスと背中合わせになることもあったし、そこはまちまちだったよ。守は現地で出会った共闘者と相方になるってパターンもあったしね」
「でも、戦闘後は必ず守の元に行っていたわよね〜♪思えば、恋仲になる前もそうだったわね」
「そうだったかもねっ!!元々守以外とは面識があまりなかったというのもあるけど、今思い返せば、ずっと守を追っていたのかもしれないね」
「だ、そうですよ守さん?」
「…ノーコメントで」
「追える環境下にあっただけでも羨ましいものですね」
「勘弁してくださいな、アディリシアさん」
「ちなみに追加質問ってわけではないのですが、守様は現地での共闘があるとおっしゃいましたが、ジャンヌ様はそういったことはなかったのでしょうか?」
「私の場合だと、ラミア族のメドゥーサさんとか吸血族のヴラドさんとかと共闘したことがあるよ。みんな各地の代表者なだけあって相当強かったなぁ」
「名が挙がったお二方だけでも誰もが知っている御仁ですね…。手合わせとかもされたりしたのでしょうか?」
「そういうところもあったね。だけど、別意味でバトルしたジルを除いたら、お互いに本気で手合わせしたのは、サラマンドラーくらいかな?」
「あ〜…かの有名な四大精霊災強の、ですね…。これは深掘りが怖いので、次に行きたいと思います」
サラマンドラーの話題にカスターは色々察したのか、深掘りしようとせずに次の質問へと進めようとする
かの精霊の話題は、噂程度には世間に出ているものも実際を知らない者たちには要領をえない
「話程度にしか知らないのですが、そんなにすごい精霊なのでしょうか?」
「話の通じない戦闘狂ってところだな。常に強者との戦いを求め、決して誰かと連もうとはしない。けど、なんだかんだで協力はしてくれたんだけどな」
「なんだかウンディーネさんやノームさん、シルフィーネさんとはまた違った大変さがあるのですね…」
「精霊ってのは長生きだからな。長年生きていれば、個性の持ちようもそれぞれだろうさ」
「はぁ〜そういうものですか…」
3/4の精霊を見てきたニースは心の中で、3人とはまた違っためんどくさい人なんだろうなということで納得するのであった
「ちなみに守さんが共闘してきた方々の中で一番相性が良かったのは誰ですか?」
「う〜ん、やっぱりジルかな?吸血族を救助した時の初共闘は燃えるものがあったなぁ〜」
「この場にジルさんがいたら、さぞ喜んでいたでしょうね」
「では、お次ですが、"ずっと気になっていたのですが、ジャンヌ様はどこ出身なのでしょうか?"これは確かに気になりますね…」
「確かに今までオープンにしてこなかったもんね〜。でも、答えるとよくわからないが正解なんだよね…」
「アストン皇国出身ってわけでもないのよね?」
「うん。私は拾われ子なんだけど、育った場所で言うのなら、アストン皇国から遠く離れた場所にある民家だよ〜。その民家には、年老いたおじいちゃんがいたのだけど、私が旅に出る少し前に亡くなっちゃったんだよね」
「確かに今まで聞いたことなかった境遇は私と似ているのですね」
「ニースも親のことをほとんど知らないんだっけか?」
「そうですね…。記憶には殆ど…。ですが、私の場合は、あの村の人々がよくして下さったので、寂しさとかは一切なかったですね」
「あの村の人たちならそうだろうな」
守とニースはニースの出身村の人たちを懐かしみ和む
しかし、次の質問に目を写し、困惑するカスターにその場の空気が変わるのであった
「お次ですが…大変聞きにくいというか、これを通して良かったのか…なのですが…"こういう機会なのでダメ元で聞いてみますが、戦乙女の名が禁句なのは何故でしょうか"」
しどろもどろになりながらカスターが質問を読み上げた後、今までの顔つきから一転して怖い表情へと変わるジャンヌ
覚悟はしていたとはいえ、早いタイミングでそれがきたことに沈黙してしまうジャンヌにアナトがフォローを入れる
「…この質問は深入りしてはいけない。させたくない内容なのだけど、ジャンヌ?」
「いや、これが来るのはわかっていたことだからね…。いい加減あの件で守が悪者の汚名を背負ってくれたままでいるのも良くないし、ただ…」
質問に対して解答をする前に、ジャンヌは真剣な重付きで守の方を見つめる
「ま、この件に関しては、国民や知らない国外の人たちは、気になってしょうがないよな…」
「いいんですか?」
「いつまでも隠しておける内容じゃないだろ?おそらくこの国の歴史に残るような大ごとをさ」
ジャンヌの言いたいことを理解した守は、ニースに心配されながらも、ジャンヌに向かいただただ無言で首を縦にふるのだった
「守から許可が降りたから、色々長くなっちゃうんだけど、まずは、質問の解答をするね。"戦乙女"という呼び名をつけた、つけようとしたのはグラント司祭なんだよ。何故戦乙女という称号をつけようとしたかなんだけど、聖騎士団を率いて魔王を倒した私を国の勝利の女神という形で祀ることで、今後外敵が現れても力で屈服させられるぞということを知らしめようとしたんだよ。それを許さないとした守が、あの事件を起こして、戦乙女と呼ばせないようにしたんだけど、ここまで言った以上は、あの事件についても気になるだろうからお話するね」
"あの事件についても気になるだろうからお話するね"
ジャンヌがそう言うとその事件について知る人間全員がジャンヌと守を心配の眼差しで見つめるのであった
5月の件や仕事で少し期間が空いてしまいすいませんでした。この更新からまた、最低でも週一で更新していければと思います。
質問会も残り二人のうちの一人であるジャンヌパートに入りました。
本編では、度々出ているあの事件について次回は触れていきます。




