第79話 一番の強敵なのかもしれません
「"この後のアストン皇国,テスタオロスをどうしていこうと思いますか?"アキレウス王子の際にも来た質問ですね。やはり王女様の意見も伺いたいようですね」
「私はお兄様と違い、戦場に立ち、自らの手で作り出したものではありませんので、お兄様のサポートができればと思っております。ですが、サポートする立場で甘えるのではなく、私自身でも動いていきたいと考えています。まずは、守様とジル様のような深い仲を参考に他の種族の方々との積極的な交流はもちろんですが、ファントム家、オリビア家、ガルト家、そして、次に勤める司祭様との関係を強化し、どの方々も苦なく過ごせる環境を作っていきたいです」
「フフフ…姫さんもよくわかっているのじゃ。守と我が深い関係じゃと」
「いや〜あれはただのものの例えだと思うけど…」
「つい先日学園にラミア族の方が入学されたというお話も聞いております。戦争の共闘がきっかけで他種族との壁がなくなってきてはいますが、今後完全になくなる世界を期待しましょう。そして、次の司祭という気になるワードが出てきましたが、正式な発表があるはずですのでその時を楽しみにしています」
「アナト姉が司祭を勤めれば問題なかったのにな」
「色々考えがあってのことだと思いますよ。なんだかんだいっても守さんのことを考えていらっしゃる方なので」
「それはわかっているけどな…」
アディリシアの解答中終始笑顔で聞いているだけのアナトの表情を見つめ守はボソッと呟くのであった
「それでは、ラストスパートの前に飛び入り枠へと移ろうかと思います。本日来場されている方々で何かあれば挙手してください」
カアルがアナウンスするとさすが国の代表と言わんばかりに挙手が殺到する
その中で最初に指名されたのは、先ほど話題が出たジルの妹であるカリンであった
「吸血族の里代表代理のカリンです。先ほど他種族との交流にも力をいれるというお話がありましたが、私個人としての思いを投げます。姉はどう思っているのか計りかねますが、私と致しましては恩人でもあり、姉の良き人でもある守さんを傷つけた人族というのをまだ完全に信じきれてはいません。つい先日元凶との対決があったと聞いていますが、そういったことについて国の代表的な話ではなく、あなた自身での解答を聞いてもいいですか?」
「カリンちゃんはあの件をずっと気にしてくれてるからな…」
「解答をする前にまずはお兄様がご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。いずれお伺いして改めてご挨拶をと思っておりましたが、実現できていなくて申し訳ございません。質問の件ですが、私の本音で語らせて貰いますと、事の発端の件から先日の件まではずっと憤りを感じておりました。事件を起こした張本人に対する怒りというのもありますが、何よりもお慕いしている方のために何もできていない自分自身に対する憤りが強かったです。ずっと側で見てきて、何かしなければと思っていたのにも関わらず、辛い筈の守様から"俺自身でなんとかするから"という言葉に昔を重ねて甘えていたのだと思います。ですが、お兄様も述べていたのですが、倒すべき敵に対し体を張った方がたが安心して任せられる世を私たち代表が作っていくことが責任であると思っています。守様を含め、誰からも任せられる王女でありたいと私自身思っています」
「後日改めてお話できればと思います。もちろんジルお姉様、守さんも交えればいいのですが」
「ありがとうございます。その際はよろしくお願いいたします」
個人の解答を求めたカリンを常にまっすぐに見つめ答えたアディリシアにカリンはとりあえずはと納得するのであった
その後もいくつかの質問が続くのだが、そのうちの多くが他種族の交流話に関するものであった
いずれ方代表地に赴き改めて話をするということで、各種族の代表も納得することとなる
「さて、国のトップ会談を公開しているような雰囲気でしたが、ラストに向け残り二問行きたいと思います。"一番の恋敵はだれですか?"」
「ライバル…ですか?そうですね…一番のというはないと思います。恋人経験があるジャンヌ様、付き人という立場から常に側に控えるニース、守様の加護下をどうどうと公表できるエリカ様、遠慮のない関係で相性のいいジル様、守様の全てを追求するメイ様それぞれがそれぞれで羨ましい要素をお持ちです」
「クリアしようと思えば、達成できる姫様に言われましても…」
「メイの要素を兼ね備えるのだけは勘弁願いたいところではあるのだが」
「ですが、今思いついたのですが、守様との付き合いが私と同じくらい長くて、旅も共にし、姉という立場上気兼ねないアナト様がある意味では一番の強敵なのかもしれません」
「あらあら〜♪そんなつもりはないのだけれどね〜♪」
「身内は強しってところですね。それでは、最後の質問になります。"大魔法剣士様と同じような指輪を嵌めていますが…"こちらはアディリシア様ファンからの質問数が最多と言っても過言ではなかったです」
「永遠に側にいることを証明するための呪いの魔法具です。体育祭のMVP権利を使用した際に守様と契約を結びました。本音で言えば、左薬指に嵌めたかったのですが、守様の意思を無視して押し切るわけにはいきませんので」
「いやぁ〜あれもなかなかだったろ思うけどな〜…なぁ、ニースさんや?」
「なんでしょうか?」
「男子生徒たちからの重圧がひどいのだが、何より国外の重鎮に一斉に広まっている現状をなんとかしてくれませんかね?」
「私に何かできるわけないじゃないですかー!!これは役得の結果だと諦めてください」
「デスヨネー」
「遅かれ早かれバレるものなんですから、逃げ回るよりも一気にことが終わって良しと思いましょう」
「デスヨネー」
「この後守さんの番が回ってくること間違いなしなのですから、腹をくくりましょう」
「…デスヨネー」
「ちなみにお父様も公認です♪」
「ふふふ…知らない子達も多いでしょうからお姉さんから補足をするのだけれど、この呪いの魔法具は、永遠の契りと言って、二つで一つの効力をもつ魔法具なのよ。その効力についての詳しくは、守が可哀想だから割愛するけど、これだけは言っておくわね。一生外れることがない魔法具の指輪よ」
「守様と口づけをした方もいれば、良い言葉をいただいた方もいらっしゃいますが、私には目に見える形で一生を約束しているものがありますので、それだけで幸せです」
「は、はい…最後は一種の牽制のような気もしますが…そして、もう片方の当人は目が完全に死んでしまっていますが、きっとこの後について憂いているのでしょう。アディリシア様への質問は以上になります。ありがとうございました」
幸せですと答えた瞬間から最大限の笑顔を崩さないアディリシアはそのまま降段していくのであった
「さて、この質問会も終盤に差し掛かってきましたが、あとおふた方予定しております。おそらくみなさん想定しているかとお思いですが、まずは、聖騎士団の顔といえばこの方、勇者・ジャンヌ様、ご登壇お願いいたします」
「あはは〜とうとう私の番か〜あそこに登壇するのは二回目だけど、前回とは別の意味で緊張しちゃうね」
「告白以上に何を緊張するのじゃ。どうせ守関連の話題がくるのじゃから、さっさと話してすっきりするのじゃ」
「ちょっとばかし今日のジルは優しいんだね。あの件もくるのかなぁ〜。はぁ〜…悩んでいても仕方ないか。いってきます」
戦争時代の話、守との甘い思い出以上にあの事件についての質問の有無に緊張を隠せないジャンヌは、覚悟を決めて登壇するのであった
前回に引き続き、アディリシアパートの後編でした。あとがきでの補足になりますが、この作品内での国やら里やらの違いは、戦争による被害の結果ととらえていただければと思います。基本的には、吸血族のいる本拠も国ですが、戦争の被害から回復できていないため里というような表し方をしているとでも思ってください。




