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第76話 上下で見るのではなく、横で接したい

「同族だけの場ではなく、色んな種族の前でこういう場に立つのは、人族との共闘表明以来じゃな。少し緊張するのだが…お手柔らかに頼むのじゃ」


「ジルさんは吸血族の長というだけでなく、聖騎士団と共に戦争を経験しているということでも多数の質問が来ています。さっそく関連している質問なのですが、"吸血族が人族と共闘するきっかけを教えてください"」


「うむ。発端は、守たちへの恩返しじゃな。皆も周知のことじゃと思うが、もともと我が一族は誰とも連むつもりはなかったのじゃが、この判断が間違っておったのじゃ。魔族の侵攻に一族は押され、窮地に現れたのが、聖騎士団の四人なのじゃが、この四人が来てくれなかったら、今この場に我はいなかったじゃろう」


「魔王直属の四天王のうちの一人であるガメールが侵攻に来てたのが辛かったわよね。アレは守とジルちゃんの連携だからこそ撃破できたと思うわ」


「うむ。初めての共闘は今じゃから本心で言えるのじゃが、ゾクゾクしたものじゃ」


「最初はツンケンしてたもんなぁ…。なんだかんだで阿吽の呼吸ってやつができていたと思うが」


「…現実から目を背けようとしないでください、守さん」


守との初共闘時を思い浮かべながら静かに頷くジルは、ただそれだけを語るかのように無言を貫く

このあとに続くものはないと判断したカアルは苦々しく次へと進行する


「…そ、それでは、次ですが、"吸血族の長はどのように継承されるのか?"」


「ここでいうところのアストン家が継ぐといった血族が束ねるものは吸血族にはなく、力主義で長を決めておる。我の時でいうのであれば、先代が亡くなった時に一番力を持っておったのが我で、そのまま継承したということじゃな。他にも候補はおったのじゃがな」


「そのやり方で皆が従うものなのでしょうか?」


「もちろん反発する者もでるのじゃが、力を示せば、納得する者もおる。そうでない者は排他されるのじゃ」


「な、なるほど…先ほどの質問に類似になりますが、"吸血族が人間と友好を築こうと決意したきっかけは?"」


「それは勿論まも…じゃなくて、やはり聖騎士団に里の危機を救ってもらったのがきっかけじゃな。昔は人間は我らの劣等種などと呼ばれておったが、それすらも偏見だったと皆反省しておる。寧ろ今では、上下で見るのではなく、横で接したいとこちらが望んでいるのじゃから」


「種族の壁を越えた瞬間に立ち会えたことに私たち聖騎士団も喜んだものだわ」


「こうして毎日を楽しくさせてもらっておるし、じゃな」


「とても素晴らしい回答ですね。"血を吸わなくても大丈夫なんですか?"」


「そうイメージを持たれるのは仕方がないと思うのじゃが、そもそも血だけが我らの栄養源ではない。吸血族の子供ですら我慢できるレベルじゃから、何も問題はないぞ」


「昔守の血を吸っているわよね?」


「うむ…。やはり好いておるものの血を吸うのは興奮が…おっと…これはどうしてもそうしなければならなかったからでな。本人公認じゃからこれはノーカンにして欲しいのじゃ」


「危害がないということはよくわかりました。さて、ここからが先ほどの皆様と同様になりますが…」


カアルの言い淀んだ言い方にジルは来たかと笑顔になるも、またかと呆れる守


「お察しいただけたようですので、さっそく参りましょう。"大魔法剣士様との初対面の印象は?"」


「これはジャンヌにも言えることじゃが、初対面の時はこんな若い連中に何ができるのだと思ったものじゃ。蓋を開ければ、二人とも我よりも強くて恥ずかしくなったのう。逆にアキレウスが一番弱いとも思わなかったが…」


「なんで俺ディスられてるんだろうな…」


「見た目で判断するなのいい教訓ってところかしら。ま、これはジルちゃんだけでなくどこの種族の長もそう思っていたに違いないけれど」


「そのフォローは救いなのじゃ。そんな中でもお主が一番…」


「何かしら♪」


「何でもないのじゃ」


「…方向性がガラリと変わりますが、"体育祭では、虐げられることに快感を得ていたようですが、そういう性分なのですか?"」


「あくまで守だけじゃから勘違いしないで欲しいのじゃ。あれはそう、戦争時代に守が魔物を屠っていくその目を見た時に、こう我の体にビビッと何かが走ったのがきっかけじゃのう」


「ほんと、ジャンヌとは違ったいい相棒(パートナー)だと思っていた俺の純真を返して欲しいわ」


「戦闘中にそんなことを考えられるジルさんの余裕こそが一番すごいような気もしますが…」


「滅されたいわけではないのじゃが、守にイジメられたらどうなるのかと想像すると涎が…っといかんいかん」


「あれが曲がりなりにも長を務めているわけだからなぁ…」


「目覚めさせたのは他ならぬ守さんですけどね」


「この流れで聞くのが非常に怖いのですが、"大魔法剣士とどういったプレイをしたいですか"」


「うむ…。やはり目隠しで手足を拘束されて…」


「言わせねーよ!!それ以上は無しだ!!」


質問からすぐに回答をするジルに耐えきれなくなった守は大声で叫びジルを制止する


「おぉ…あの目はマジなのじゃ。どこぞのストーキング貴族みたく落とされたら構わんので、すまぬがこれはここまでじゃな」


「私も聞くのが怖かったですので、このまま次へ行きましょう。"ジル様は無理だとわかっていますので、妹のカリン様をください何でもしますから"」


「うん?今何でもって…。我からは妹の恋路にどうこう言えるものではないのじゃが、あれは凶暴じゃからやめたほうが良いぞ?」


「お姉様!!」


来賓席に来ていると思わしき、カリンが大声でジルに向かい叫ぶとまさか来ていると予期していないジルがあたふたとしだす


「ま、まさか本人降臨しておったとは…。え〜と…あれじゃ。カリンも心に決めた人がいるようじゃから勘弁してやってくれ」


「カリンちゃんも災難な…」


「あれがジルさんの妹さんですか。たしかジルさん不在の代理を務めていらっしゃるのですよね?」


「ああ。さっきの話でいうならカリンちゃんも相当の実力持ちだよ。あの顔からの戦闘時のギャップは当時驚いたもんだよ」


「お兄様がかつてナンパに失敗したお方ですよね?」


「そうだな…。アキレウスだけ一方的に嫌われてるから、アキレウスを見るとわかるが、あの顔だよ」


アキレウスはカリンに微笑みながら手を振るもカリンはガン無視であった


「どこかで膝から崩れ落ちるような様子が見えたようですが、というかですね。このくだりなんどもやっているような気がします。では、お次で最後の質問になります。"吸血族と人間では寿命にだいぶ違いがありますが、仮に大魔法剣士様が亡くなってもそれでも好きでいるのですか?"」


「悩む必要すらないのじゃ。無論守以外にこの身を捧げることはありえぬ。仮に守が先に亡くなったとしても、守が、その仲間が築いた平和(いま)を我たちが守っていく。これは吸血族が聖騎士団(にんげん)に返していくべき恩であり、我自身が守と共に歩きたいという揺るぎない意志なのじゃ」


「あらためてですが、聖騎士団の皆さんが齎したものを、種族という壁を越えたものを皆が知れる、今回の企画のいい結果が聞けたかと思います。ジル=バートさん、ありがとうございました」


「うむ」


「…なんだろう。いいことを言ったに違いないだろうにあのドヤ顔を見るに、ただただ重い愛の告白を受けたようにしか感じなかったぞ俺は」


「救ってきたものに対しての責任ですね。私も生涯守さん以外にお仕えする気はありませんので」


「お、おう…」


「さて、お次は、この国の顔と言っても過言では、ないアストン皇国の姫様である…って、えっ!?」


「うん?どうしたんだ?」


「コホン…失礼いたしました。台本通りでは、アディリシア=アストン様にお願いする予定でしたが、差し込みが入りました。国の英雄でもありアストン皇国の王子でもある、アキレウス=アストン様、御登壇お願い致します」

「なん…だと!?」


この話を一切聞いていなかったであろうアキレウスは展開についていけないようで馬鹿面を晒しながら停止する


「まさか…アディリシアお前…」


「いつも守様を困らせているお兄様に仕返しをと思いまして、アナト様にお願いして刷り込んでおきました」


「そうか…。ま、ざまぁねぇなアイツも」


「アキレウス、早く来ないと私の方で全て答えちゃうわよ」


「す、すぐに行きます!!」


梃子でも動かない姿勢のアキレウスにアナトがニヤニヤしながら登壇を急かす

それだけは阻止しなければとアキレウスは目にも止まらぬ速さで登壇するのであった

冒頭に名前だけ出た魔王の四天王のうちの一人ガメール。吸血族の過去編でちゃんと描きます。

ジルパートまで終わり、しれっと現場にカリンがいることまで判明していますが、カリンが関わってくるのはこの後の展開になります。

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