第77話 想像くらい好きにさせてあげましょう
自身が企画した舞台で高らかに笑い続ける筈が、自身も立たされることを想定していなかったアキレウスは、戦争時代ですらあまり見せたことのないやつれた様子で登壇するのであった
「クッソ…まさかこの俺にまで回答者側がくるなんて…さては、妹の仕業だな?」
「何をぶつぶつ言ってるのかしら?やましいことがなければ、何も問題ないんじゃない、アキレウス?」
「ひ、ひぃぃぃ…。こう言う時のお前は本当に恐ろしい…」
「あ、あの〜すみませんが、進めても良いのでしょうか…?」
「いいのよ。こいつの戯言とか無視しちゃっていいから」
「…一応俺の方が立場上のはずなんだけどな…」
「では…コホン。説明も最早不要かと思いますが、この国の王子という肩書きをお持ちながら、聖騎士団の一員として前線で戦い、今を作ってくださった英雄一団のお一人ですが、現在この学園の教師も務めています。早速なのですが、"なぜこの学園の教師に?"」
「それは勿論守に何かあった時に真っ先でいじるために決まっているだろ!!」
即答で言い放つアキレウスに怒りが混み上がりそうな守
しかし、それが嘘であると即座に見抜くアナトは、ニヤニヤしながらアキレウスに言う
「嘘ばっかりね。忘れたのかしら?この場では嘘偽りはなしのはずよ」
「あ〜なんだ…。本人がこの場にいるからあんまり真面目にはしたくなかったんだが…。ま、長年共に旅をしてきた戦友への恩返しってとこだな」
「普段はおちゃらけているように見るかもしれないけれど、案外こういう部分には真面目なのよね、アキレウスは」
「くっ…だから、こういうのは見てるだけがいい派なんだがな。ええい、ままよ。テスタオロスで守について一から知っていると断言できるのは、父上、アディリシア、アナトと俺だけだろう。その中でもあいつにとって男の友と呼べる人物が俺しかいないんだ。俺くらい親身にあいつの助けになったってバチは当たらんだろ」
「あいつ…ま、それが感じられないほど今の俺は子供じゃないがな。陰ながらのフォローにはいつも感謝している」
「なんでお互いに素直じゃないのでしょうね…」
「きっと男の子というものはそういうものなんでしょう。お兄様はともかく、守様のそういう部分も愛おしく感じます」
「お二人の友情話の次にこれを聞くのはどうかと思うのですが、"守様が女性を受け入れないのは、実はアキレウス様と既に繋がっているからという話を耳にしたのですが、本当ですか?"」
「気持ち悪っ!!何がどうしてこんな話が出てくるのかわからんが、俺も守も普通に女性が好きだからな?勘違いすんなよ?」
「私も某所で、アキレウス攻め、守受けというお話を聞いたことがありますが、流石にそれはないですよね」
「その某所がどこだか知らんが王子の権限で潰してやりたいと心から思ったわ…」
「こればかりはアキレウスに同意する」
「事実無根なんて誰でも分かっているのですから、想像くらい好きにさせてあげましょう」
「…お前さては」
「ナンノコトデショウカ」
「腐ってやがる!!」
「む、昔の話ですよ!!」
吹けてない口笛に明後日の方向を見るニースに守はジト目で見続ける
「…次に参りましょう。"兄として、王子として妹がよその人と仲良くしているのに思うところはないですか?"」
「よその人っていうのは守のことだよな?それはそうとまずは、王子としてどうこうというものはないな。これは生まれたらたまたま王子、王女であったにすぎないからな。兄としてなら多少思うところはある、というよりあっただな。妹が守に惚れたと初めて聞いた時は警戒したものだ。しかし、今となっては、守以外の誰かと深い仲になりたいと言われる方が思うところがあるってもんだ」
「お兄様に心配をかけることはありませんね。私は守様以外の男性に興味はありませんので、他の誰かとなんてそんな機会は訪れません」
「…姫様、そういうことはもっと小さい声でいいましょうよ…。周りの皆様泣いてますよ」
「…男子生徒の視線で胃が痛い」
「多分守はあそこで胃が痛い思いをしてるんだろうな、ハハハ」
「あとで殺す」
壇上で大笑いしているアキレウスをただひたすら守は睨みつけるのであった
「下世話な質問になりますが、"旅先ではナンパ師としてもお馴染みな王子ですが、今まで口説いてきた女性で一番の推しは?"」
「本当にこういうイメージなんだな…」
「あら?何も間違ってないと思うけど」
「クッ…どの種族の子も俺が声をかけた子はみんな推しに決まっているだろ」
「そうは言っても一回も成功しなかったあたりアキレウスよね」
「くそっ…王子って立場がなければ…」
この時誰もが心の中でその不誠実な性格ゆえだろとつっこんだのだった
「…前問に絡めてですが、"今まで口説いてきた女性の中でトラウマになった人は?"」
「本人が今日いるようだから、あんまり答えにくい部分ではあるが、大問題になったという意味では、カリンちゃんかな。事実俺単体でいえば、吸血族のみなから嫌われているようだしな、ハハ…」
「ここが守とアキレウスの差よね。方やトップに好かれ、方やトップ2に嫌われ」
「…功績で考えれば俺にも惚れてくれる子がいてもいいと思うんだけどな…」
「(吸血族での中でも唯一カーミラさんからはガチで惚れられているぞと教えてやりたいが、隣にアディリシアがいるから言えねぇー…)」
「しょぼくれてしまったので、方向性を変えていきましょう。"王子の身としてなぜ聖騎士団の皆様と共に戦おうと思ったのですか?"」
「この世界のために何かしようという思いは元々あったんだよ。だが、残念なことに俺には幼い頃から身につけてきた宮廷剣術以外の才ってもんが皆無でな。いつか共に戦える同士ってのを探していたんだ。そんな時にだ、アディリシアが守を召喚し、守から俺らと同じ志を持つジャンヌの存在を聞き、こいつらと共に立ち上がろうと思ったってわけだ」
「どっかのバカの戦闘狂な性格のおかげで随分苦労したわよね。ただ、特攻隊長としてこのバカはこのバカなりに本当に頑張っていたわ」
「ある意味でなんでもできたアナトに言われると褒められているように感じん…」
「褒めてないからね♪そうねぇ〜褒めるとしたらいい防御役だったってくらいかしら」
「辛ぇ…」
「そ、それでは、最後の質問になりますが、"これからの世をどうしていきたいですか?"」
「最後にふさわしい感じの内容がきたな。この場を借りていうつもりではなかったが、いい機会だから言わせてもらう。自分を持ち上げるわけではないが、俺たち聖騎士団は力を持ってこの戦争なき時代を築いたわけだ。俺たちのサポートをして、死んでいった者たちのためというのも当然あるわけだが、何かを生み出した者は生み出したものに対して責任を追う必要がある。今さっきアナトが言ったことも案外その通りな部分があるんだが、当時聖騎士団内で一番仕事ができていなかったのは、他でもない俺だ。だが、俺には王子という仲間たちにはないステータスがあるからな。守、ジャンヌ、アナトにはこれからを安心して俺に任せられる、この今を守るために最大限尽力していければと考えている。そうはいうがこれは俺一人でできる話ではないからな。これから先戦争で悲しむ人間を出さないためには皆んなの力が必要になるだろう。未熟な王子ではあるが、その際は力を貸して欲しいと思う」
「珍しく真面目に締めたわね♪」
「こういう空気が嫌いだからおちゃらけてるんだけどな。ま、嘘偽りはなしだもんな」
「王子らしくカッコよく締めていただきました。ありがとうございました」
なんとも言い難いもどかしい気持ちを抱きながらアキレウスは降段するのであった
過去編除けば、まともだったのアキレウスは初めてかもしれません。このあと別の意味で真面目な場面があるかもしれませんが、こういうのも悪くないかもしれません。




