第72話 いつから質問者が生徒だけと錯覚していた
守を強制的に逆召喚しようとするグラント達の騒動終結後から少し経過した学園のある日
アキレウスが事前に話していた体育祭以来のイベントとなる質問会が行われようとするのであった
「結局あの後からグラント元司祭の行方もわかってないし、何より例の少女も姿を現さない。そんな中でどういう気持ちでこれに参加したらいいものか」
「ま、ちょっとした息抜きとでも思ってくれよ。だいたいの話、お前は今の世で学園生活を送りたいんだろ?それならば、これから行う学園のイベントは真っ当な学生生活そのものじゃないか」
「そうなんだけどなぁ〜…。学園生活を長閑に過ごしたいって筈だったのに、気づけば体育祭くらいしか学生らしいことをした記憶がない」
「どうせこの後も騒乱に巻き込まれる筈(笑)ですから、今の数刻でも学生らしく考えていた方がいいのですよ」
「今日は刺々しいな、ニース。ほんと、やめろよ…その前フリ…」
「刺々しくもなりますよ。狭い部屋で育む主人と使用人の禁断の愛の計画もいつの間にか破綻し、その主人が知らぬ間に帰らぬ人とされそうだったのですから!!」
「前者はともかく、帰らぬ人って…ある意味ではあっているのか」
「前者もスルーしたらダメだよ!!」
「げっ…ジャンヌ」
「"げっ…ジャンヌ"じゃないよ!!大聖堂の話は激おこなんだよ!!また、私と守の仲を引き裂こうとしていたんだから…」
「いや、前はともかく、今の俺とお前は元戦友以外の何物でもないのだから、引き裂くも何も…」
「ガーン…」
「まぁまぁともかくだ。これからは学園のイベントを大いに楽しんでくれ」
「ああ、そうだ。質問会だっけか?最近のゴタゴタでいまいち理解してなかったから改めて聞いてもいいか?」
「以前に説明した筈なんだけどな〜。ま、しょうがないかぁ…」
本日行われる質問会は、体育祭のような外でアクティブな行動をするイベントとは違い、大講堂で行われる
対象者となる学園関係者に聞きたいことを念じれば浮かび上がる特殊な紙に質問を反映し、学園に設置されていた目安箱に入れる
質問自体は匿名で書かれているため、回答者がひたすら答えていくという淡々としたものになる
ただし、大人数の前に立たなければならないこのイベントでは、公の場に立つことに不慣れとする者もいることを考慮し、一部の例外者を除き、学園側で答えられそうだと判断した質問にしか答えないことになるケースもある
質問は事前募集しているため、学園側が厳選した物のみ発表されるため、回答者は、国の重鎮の監督の元、嘘偽りを言うことを許されない
しかし、あまりにも濁さなければ答えられないような場合にはその限りではない
「といった感じだ。ざっくり説明したが、頭に入ったか?」
「そういえばそんなんだったなぁ〜。ずいぶん前に適当なことを入れたから忘れてたわ。ま、事前に募集しているってだけあって進行はさくさくしそうだな」
「ま、時間次第ではあるが、当日の飛び入りもOKにしてあるからな」
「ほ〜ん…うん?なんだ飛び入りって?」
「ま、大講堂に行ってみればわかるって話だ」
「…一気に嫌な予感がしてきた」
本日行われることについてあらかたの説明を受けた守とその一行は、代表挨拶以来となる大講堂へと入っていく
そして、その場には学園の生徒以外での見慣れた者たちもいれば、見慣れない街の人たちなどたくさんの者が来賓席にいるのであった
この光景を目にし、つい先ほどのやり取りを思い出した守は開いた口が塞がらないアホヅラでアキレウスを見つめる
「ふふふ…守よ。いつから質問者が生徒だけと錯覚していた」
「なん…だと。えぇ〜…回答者が学園関係者だけなんだろ?些か不公平ではないか?」
「ま、どうせ飛び入りなんて目立った生徒にしか質問をしてこないだろうから何も問題はない」
「…なんだか私物化したお遊戯をイベントと銘打っているだけに感じてきたぞ」
代表挨拶の時と同じく、各クラスでの並びで分けられ、全員が揃ったところで、アキレスが登壇し、開会の挨拶を行う
「え〜今回の質問会も体育祭のようにお試しイベントで第二弾というわけだ。一人三つということでかなり質問が集まったわけだが、ま、しょうがないと思うが、かなり対象者に偏りがあったわけだが…。多分そういった者達は後半にした方が盛り上がると思って最後の方にしている。まぁ、あまり前置きをくどくどとしてもしょうがないからな、これだけいっておく。今から行うことはとにかくイベントであることに変わりはないからな。皆が楽しめればいいと思っている。以上!!」
「挨拶雑だな…」
「お兄様らしいといえばらしいのですが…」
「あれでも王子ですからね…」
アキレウスと入れ替わるように、体育祭の時に実況を頑張っていた例の女性が壇上の端へとスタンバイをし、喋り始める
「え〜皆様お久しぶりです。本日の司会進行をしていきますカアル=カスターです。まさか再びこのような役が回ってくると思いませんでしたが、本日はよろしくお願い致します」
「あの人かぁ〜…というかこれにあの解説まがいの人いるか?」
「ま、まぁ仕事を与えないとですね…。せっかくの名ありキャラなんですから」
「何を言っているんだ…」
「…隣には監督としてアナト様がいらっしゃっています」
「お姉さんをこんな役割に使うなんて、アキレウス後で覚えて…じゃなかったわ。はぁ〜い♪学園のイベントということで協力を要請されたので、ここから楽しませてもらうわ♪だけどあんまり出番がないことを祈るわ〜」
「よ、よろしくお願い致します。それでは、さっそく参りましょうか。最初は、モブ子Aさんに…」
呼ばれた生徒は登壇し、その人へ向けられた質問に答えていく
その間に嘘を言おうとした者は、アナトに指摘されたりし、何かしらの大火傷を負う者もいれば、これを機に幸せになる者もいるのだった
「…それでは、モブさん。ありがとうございました」
「こ、今回は一言も喋らせてくれなかったのだな…」
「あれはあん時のモブか…。なんとも可愛そうな…」
「さて、ここまでを振り返ってどうでしょうか?」
「アキレウスが挨拶で言った通り、相当偏りがあったようね。ここまで一人一問って感じだったもの。だけど、ここからが本番といったところかしら?」
「おそらくそうなるでしょう。それでは、そんな本番のトップバッターはニース=ルルーナさん、壇上へお願い致します」
「え!!わ、私ですか!?」
「へぇ〜やっぱりニースにも色々聞きたいことってのがあるんだな。隠れファンとかがいたりして」
「もぉ〜からかわないでくださいよ〜。よくわかりませんが、行ってきます」
ニースは自身が指名されるなど予想もしていなかったために、少しワクワクしながら壇上へとあがっていくのであった
「え〜皆様ご存知の通り、あの大魔法剣士聖守様お付きのメイドでもあるニース=ルルーナさんですが、やはりこれが気になるという方が多かったようです」
「何でしょう〜すごいワクワクします」
「"大魔法剣士のメイドを務めようと思ったきっかけは?"これが質問としては非常に多かったようです」
「なるほど〜…確かにそうですよね。私はここから離れたとある村出身なのですが、その村は嘗て魔族に襲われていました。聖騎士団の皆さんにはその時に助けて頂いたのですが、その際に守さんに尽くしたいと思うようになり、アディリシア様の元でメイドの修行を積み、守さんが学園生活を送るということで御付きに志願しました。簡単な話ですが、長く語るわけにもいきませんので、このくらいでお願いします」
「守付きになるまでに相当の苦労を重ねて今があるのよね。簡単に全部をここで言えというも過酷だし、次に行きましょう」
「では、次から少し危ういのですが…」
次からの質問で、このイベントでの怖いところ、本番の意味をこの後の回答者達は身に染みていくのであった
前回のあとがきで過去編か質問会か先にどちらをやるかの旨を書かせていただきましたが、先に質問会とその後の話を載せていくことに致しました。おそらくこれらの後に過去編をやっていきます。さて、冒頭の方でニースが(笑)の表現をしていたと思いますが、騒乱があるのか、ないのか…




