第70話 危うく自害するところでした
大聖堂の一件を終え、今回の件の報告をするために捕えた主体者三名のうちの二名であるハワード家とともに王宮へと向かう一行
フリードとラーズは、護送中に暴れられるといけないと事前に武器になりそうな物の押収とかけられるといかなる魔法も使用できなくなる聖光石で作られた手錠をかけられる
「(数十年に一度しか生成されないという聖光石でできている物理破壊も適わないと噂の魔法封じの錠か。兼ねてより噂では聞いていたけど実物を見るのは初めてだ。まぁ…うん…これだけ聞くと、某海●石みたいだな…)」
「うん?ああ。聖光石を見る機会なんてなかったもんな。これが量産できていれば、魔族との戦争なんぞに守を巻き込む必要なんざなかったのにな」
「この世界に来て数年経ったが、未だに新発見が多いもんだ。まだまだワクワクするものがあるとわかるだけでも今回の逆召喚魔法が不発に終わってよかったってもんだ」
「…未完成の逆召喚魔法ということでしたが、守様のお身体に大事とかはありませんか?」
「心配ないよ。あの場では実は、種明かししてなかったことがあるんだが、俺の防御魔法の方にアナト姉の魔法介入があったんだよ。おそらく魔法同士の干渉で二次被害を引き起こす可能性を瞬時に見抜き、そうさせないための保険なんだろうけど」
「ご名答〜さすが守ね♪修行時代に散々経験しているから分かると思うのだけれど、不完全な魔法ほど怖いものはないということね」
「周囲に被害が及ばないように大聖堂の周りにも防御壁を張っていただろ?その判断力がさすがとしか言いようがない」
「そのおかげであれだけの被害で済んでいるんだもんなぁ〜…なぁ、一緒にパーティ組んでいた俺が言うのはなんだが、アナトって本当に回復役なんだよな?」
「回復役以前に俺の魔法の師匠だ。そう思っとけば納得いくだろ」
「納得もくそも…。ロッドで敵を撲殺する前線もできれば、基本的な魔法使いとしての役割もできる。そのくせに本職は回復役。…なんだか自信なくすぜ」
「…人を化物みたいに失礼しちゃうわ」
「化物の師匠なんだから化物だろ」
「デリカシーのない言い方ね。だからモテないのよアキレウス」
「ぐっ…それにしてもだ。最後にラーズがちょろっと頭を使ったようだが、よくもあそこまで読んでいたな」
「露骨に話を変えたな…。元の世界でこういった場面を書籍やメディア媒体で見る機会が多かったからなぁ〜。ま、悪事を働こうとしている小物はだいたいああいった行動をとるもんさ」
「本当、咄嗟にそこに類似させるその思考には脱帽だぜ…。そして、落ちぶれても元三大貴族、それでも守から見たら小物以外の何物でもなかったわけだな…」
宮殿に近づくにつれ、待機兵の数が増えていき、アディリシアとアキレウスの帰還を歓迎するかのように、また、最悪な場合に迅速にうごけるように配置している
兵たちが囲む道を抜け、ヴェルヘルムが待つ王間へ進んでいく
「父上、ただいま戻りました。守の方に異常はありません。ご覧の通りハワード家の二名は捕えています」
「アディリシアにアキレウス、ご苦労じゃった。グラント司祭の方はどうした?」
「ちょっとしたいざこざの隙に逃げられました。が、護送の兵を割き、捜索させています」
「申し訳ありません」
「いや、そこのバカ息子が無駄な抵抗をして罪を増やしただけなんだから、気にすることはない。むしろアディリシアに怪我でもあれば、ヴェルヘルムさんが激昂しただろう」
「うむ、守くんのいう通りじゃな。さて、フリード=ハワード並びにラーズ=ハワードよ。ハワード家所縁の者より流れてきたアストン皇国乗っ取り計画及び此度の聖守抹消計画の件、そして、我が娘に危害を加えようとしていたようじゃが、これらについて申し開きがあるのなら聞こうではないか」
護送中一切口を開くことがなかったハワード家の二人は、少しでも取り入るチャンスをと勢いよく立ち上がり喋り始める
「…恐れながらにヴェルヘルム様に進言させていただきます。後者の聖守抹消計画について、ハワード家の干渉は間違いないものですが、アストン皇国を乗っ取るなど恐れ多き計画は存じ上げません」
「父上のおっしゃる通りです。グラント様に協力し、異世界人を消せたあかつきには、ハワード家のお家再興を約束するということで私たちは此度立ち上がったにすぎません」
「それだけで既に重罪なのじゃが…。何も証拠もなしに問いただしているわけではない、アキレウス」
「ここにフリードとグラントのやり取りを記録したものを押さえている。このやり取りを読むにお家の再興だけといった内容ではないようだが?」
アキレウスが提示した証拠には今回の聖守抹消における計画及び聖守により失脚したハワード家の権利回復の話が記述されている
やりとりは何度も行われており、ハワード家の復興後、グラントが国を乗っ取り、その際にハワード家がグラント支配の重鎮として扱われることが約束されている
「くっ…リーカーがいたというのか…」
「ち、父上!!私は後半の話はしりません。いったいどういうことですか!!」
「ラーズ、貴様!!この私一人に責任を押し付ける気か!!権利を握ったらアディリシア姫を俺の嫁に迎えると言っていたではな…いか…」
「これぞ同士討ちだな。ここまで愚かな同士討ちは戦争時代ですら見なかったけど…」
「これが元三大貴族だったと考えると情けない話なのじゃ…。この国恥を晒すのがこの面子の前だけでよかったと心から思うのじゃ」
「それよりも、あの〜お二方?我が妹が尋常じゃない殺気を放っているのですが〜?」
「「(触れないようにしていたのに…)」」
「ふふふ…ふふ…守様を抹消しようと思っただけでは飽き足らず、ラーズ様のお嫁に私を?ご冗談はその存在だけにして欲しいです…ふふふ」
「まぁまぁそんな未来を防いだわけだから、落ち着いてくれアディリシア」
「守様がそうおっしゃられるのでしたら…ですが、危うく自害するところでした」
「笑顔でなんてことを…コホン。それにしてもアキレウスもよく集められたな、これだけのやり取りを」
「今朝一で守をここに呼んだだろ?その時の話での反省というかなんというかだな…」
「ふふふ…お兄様は守様のことを気にされて、あの後すぐに代表不在のハワード家本家と守様たちが去った後の教会を調べさせたのですよ」
「思い立ったが吉日ってか。それにしても優秀な者もいたもんだ」
「うん?MVP関連で妨害がないから察しがつくかたと思わなかったが、メイの協力ありきだ。今回は吉となったが、あいつのストーキング術の怖さを改めて知らされたわ。今後も付き合っていかなきゃならんお前に同情する」
「…同情するならなんとかしてくれ、いや本当に…。それにしてもよくあいつがお前の頼みを協力したな」
「そりゃあお前、愛の力だろ。一切の公言を禁止する代わりに今回の件を教えたら、最初こそ怒っていたが、喜んで協力してくれたぞ。まぁ対価も支払ったが」
「その対価に不穏なものしか感じないが…まぁいいだろう」
「くっ…ファントム家の娘か…。序列一位までも我々の邪魔をするのか…」
「終わり…のようですね…」
言い訳を諦めた二人はその場に崩れ落ちる
これ以上これらの件についての抵抗はないだろうと判断したアキレウスは、もう一つの大ごとについて吐かせようとするのであった
「さて…悪事が明るみになったところで、もう一つ吐いてもらうぞ?」
アキレウスの吐かせようとしていること、おそらく察しはつくと思いますが、次回判明するのか否か。
あと1,2話で次に行きますが、ひょっとしたら次章の前に過去編を挟むかもしれません。




