第67話 やりたいようにするのですから
〜???〜
守の墓参りにつき、少し席を外すといい自然にその場を去ったグラントは、アナトを守の監督につけ、その場を後にし、裏で作戦開始はいまかと待機しているラーズ及びラーズの父であるフリードと協力者の???の元へと一時的に戻るのであった
グラントが戻ると未来のためにと興奮冷めないハワード家の二人を落ち着かせようと協力者全員で作戦の再確認を行う
「少しの間ではあるが、戻ったぞ」
「グラント様!!それでいまやつは…」
「今は戦死者どもの墓の前で語っておる」
「戦友に最後の挨拶ってところですかな。ま、本人は私たちがその存在を抹消しようと必死で動いていることなど知っている筈もないでしょうが」
「私の計画を一度は壊した男。あの時よりこの苦痛にずっと悩まされ、本日はずっと側でその面を見ないといけないとは…怒りが込み上がってくるわ。だが、この苦痛も怒りももう少しの辛抱」
「グラント様は反異世界人の筆頭。苦痛、お怒りはごもっともです。私ですら共感できるのですから」
「ふむ。これからの場で自身に起こることも知らずに、墓参りなどじつに呑気なものだ」
「我々の計画を知られていては困ります…。むしろ呑気でいてもらうくらいでいてもらわないと」
「それもそうだな。奴に計画を悟られては全てが気泡と化すのだからな」
「過去二度もハワード家に楯突いたのだ。直接退治できなくとも三大貴族に楯突いたこと後悔させてくれる」
「その意気やよし。聖守が消えれば、我々の悲願は達成されたも同然。ハワード家の二人は、聖水の準備を。???はあの召喚陣にあいつが行ってからが本番だ。この後の行動に目を光らせておくのだぞ」
「ふふふ…言われなくても分かっています」
「では、そろそろ戻ろう。フリード殿にラーズ、それに???、くれぐれも頼んだぞ」
「「お任せください(ええ)」」
四人は段取りの再確認をしたところで、守に怪しまれるわけにはいかないとグラントは足早に守達がいる墓に戻っていく
「…オリビア家との件で大魔法剣士が関与して以来、オリビア家に序列は抜かされるはおろか貴族としても落ちぶれた我がハワード家に漸く復活の兆しが見えたのだ。ラーズよ、くれぐれも慎重になるのだぞ?」
「もちろんです父上。聖守がとんでもない奴ということはこの目でしかとみているのです。しかし、英才教育を受けたハワード家次期当主のこの私が、二度も失敗るようなことはありえません」
「ならよいのだ。それにしてもだ。まさか逆召喚魔法に聖水が必要になるとはな。今日ほど水を司る家でよかったと思ったことはない」
「ええ。情報提供はおろか協力までしてくれる???殿には本当に感謝しかありません」
「あなた達からの感謝は結構ですよ?私は、ただあのとき相見えなかった英雄様と遊ぶ機会が欲しいだけなのですから。そのためにあなた達を利用しているだけにすぎません」
「あのとき…?もしかしてあなたは…」
「それ以上はダメですよ。この関係にお互いの内情の詮索はなしですよ?お互いに欲望を満たすために利用し、利用される関係。これだけで充分ではないですか?」
「…おっしゃる通りです。あなたの存在がなどはどうあれ、奴に復讐するため、お家再興のために知恵をくれているのです。その後のことはどうでもいい…」
「うふふ…それでいいのです。私も私のやりたいようにするのですから…」
「それでは、父上の元に戻ります」
「ええ…。もうすぐ、もうすぐまた会えますよ。英雄様…ふふふ」
〜守〜
長らく黙祷していた守は、そろそろだろうと顔をあげると側で見ていたアナトが静かに守に声をかける
「…守、そろそろいいかしら?」
「ああ。この機会が次にいつ訪れるかわかったもんじゃないからつい長く黙祷しちゃったよ。スケジュールは大丈夫かな?」
「いくらでもいいのよ?あの時からずっと来たがっていた場所にようやくこれたのですから。ただ、これからはちゃんとお姉さんがいつでもこられるように頑張るから、もうちょっと我慢してちょうだいね」
「それってどういうい…」
優しげな笑顔で見つめながらいうアナトに意図を尋ねようとしたところで、グラントが戻ってきて悪態ついた言で守に言い放つ
「ふん。もう墓参りはいいのか?」
「ああ。どこに行っていたかは知らんが、話したいことも話せたし充分だ」
「今日一日は、ヴェルヘルム様の権限ということでこの場に立つことを許しているのだ。心置きなくいてもいいのだぞ?」
「珍しく優しい提案じゃないか。甘えたい話ではあるけれど、この後もあるからな。それに生きていればまた来る機会も作れるはずだ」
「私がそれを良しとするかどうかだがな。まぁいいだろう、召喚されたときの魔法陣を見にいくのだろ?私も直接は見たことがないのでな。とても興味深いのだよ」
「(この感じやはり何かあるな。このエセ司祭が興味を持つなんてよっぽどだ)もちろん。そっちからその話題を出すということはすぐに許可を出してくれるのだろ?」
「そうでなければ話題を出すまい」
三人が今から向かおうとしている守を召喚した際に使用された魔法陣は教会から少し離れた大聖堂の中に描かれている
守が召喚されたことにより、魔法陣にその後の効力はないと一般に公表されているが、実際とのところは、守が召喚されたその後のことは何ひとつ判明していない
このことは最重要国家機密のため、封鎖している正式な理由は王族の一部や聖騎士団、グラント以外にそのことは知られていない
このため終戦後に英雄を召喚した場所であるために観光地として、一般に公開したいという重鎮の意見が相次いだのだが、悪戯に召喚陣に近づかれ、世界に影響を及ぼすような何かがあるといけないと管理が徹底されており、出入りする際は王宮側と教会側それぞれの代表の許可証が必須となる
当然ながら過去に誰かが出入りしたケースはなく、今回守の願いということでヴェルヘルム、グラントの両名が許可を出し、これから出入りしようというのは過去に異例のない事態ということになる
「お待ちしておりました、聖守様、アナト=アルカ様、そして、グラント様。偉人の皆様方にご無礼をいたしますが、規律のため、許可証のご提示をお願い致します」
「これがヴェルヘルムさんの許可証です」
「これが私の許可証だ」
「…確認いたしました。こちらはお預かり致します。その他に問題はなさそうですね。それでは、ご入場して頂くのですが、中で何かあるといけませんのでくれぐれも魔法の使用などアクティブなことはされませんようにお願い致します」
「ふん。誰に向かって言っているのか…」
「こういった現状な出入りというのも旅を思い出すわね」
「そうだな〜旅時代は、人族との友好度が低い種族が束ねる場所の出入りが厳しかったもんなぁ〜。久しぶりの感覚だ」
「思い出話は結構だが、早く行くぞ。私も暇ではないのでな」
大聖堂の中深くへと進んでいき、近づくにつれ、奥には床に何重にもわたって大きく描かれた魔法陣が緑色に発光しているのが目に入る
魔法陣の周辺も当時の状態のままにされており、それらすべての光景に守は自然と懐かしさを吐露する
「…懐かしいな本当に。すべてはここから始まったんだよな…。アディリシアに召喚され、アナト姉、ロベルタさんに育てられ、ジャンヌ、アキレウス達と共に戦う。長かったようであっという間だったし、つらかったけど時には楽しくもあり、日本にいたら絶対できなかった凝縮した経験だったなぁ」
「…本当は守に始まりなんて与えるべきではなかった筈なのにね。今では守が召喚されてよかったとさえ思っているわ」
「いや、本当にそれはいいんだよ。アナト姉の召喚魔法に対する思い、召喚された俺に対する思いは誰よりも知っているつもりだから」
「…ありがとう。守」
「…この平和が永遠に続くこと、おれたちがこれからもしっかりと見守っていこう」
「そうね」
警戒状態を完全に解いてはいないものも、数年越しに訪れた始まりの場所に今までの出来事が走馬灯のように流れてきた守は、ただただアナトと語らうのであった
大聖堂(魔法陣)到着までをお送り致しました。次回からおおごとが起こるかも…?




