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第46話 闇が深く感じるぜ

守がエキドナへ協力することが決まった次の休講日、ジルの案内の元、二人で吸血族の里へと向かうために前日の夜遅くからアストン皇国外れにジルと待ち合わせることとなる


「ふわぁ〜…。流石にこの時間は眠たいぜ…。日本にいた頃の夜更かしを思い出す」


吸血族はよくある吸血鬼の設定のように、基本的には日差しに弱く、夜の行動を主体とする一族である

しかし、朝に行動できないわけではなく、今存在している吸血族は朝から行動する者も多くいるが、それでも全員が活動できているのはやはり夜の時間ということになる

吸血王女のジルは吸血鬼の中でも上位種に存在するため、一日の中での行動の制約はなく、寝ることもしなくても構わないのだが、本人は"守と同じ時を過ごすためなのじゃ"と人間(守)に適応しようとしている


「ま、待っておったのじゃ、守よ。ほ、本日は大変いい天気で…」


「なんでお前がテンパっているんだ?故郷に帰るだけなのに」


「よくよく考えたら、守と二人っきりでどこかに行くのは初めてなのじゃ…。わ、我だってこんなに緊張するとは…」


「こないだとんでもないドM発言していた王女のセリフじゃないな…」


「こ、こういうこそばゆい気持ちは長くはキツイのでな。そろそろ向かうのじゃ」


「そうだな。それにしても、吸血族の里か〜。ちょ〜久々に行くわ。みんな元気にしているか?」


「お陰様でじゃな。守と婚約するのはいつかと急かしてくる者もいるぞ」


「うげぇ…。吸血族は押しがとにかく強いからな…。思い出すと行く前からお腹いっぱいだ…」


「ラミア族の者を弟子にとったことは流石に皆に話さないといけないから覚悟するのじゃな」


「やっぱ帰り」


「レッツゴー!!なのじゃ」


普段は隠してあり、長らく使っていなかった翼を広げたジルは守の首裾を掴み里へ向かい飛び立つ


「こっちでは(それ)出してなかったから、随分空も久々なんじゃないか?」


「こないだ里帰りした時以来じゃな。こうやって人を掴んで飛ぶのはあの戦争以来じゃが。本来の姿というのはやはり、周りを気にしなくて良いので楽じゃ」


「戦争での功労があっても、吸血族を人間が完全に受け入れきれてないからな…。そう遠くない未来で完全に手と手を取り合えるだろうさ」


「じゃから我と結婚すればそれも早まるじゃろうに…」


「…それにしても相変わらず、これは魔法を使わなくていいから楽だ」


「ごまかしたのぅ…」


アストン皇国の南に位置する吸血族の里は、人間が歩いて行くには数日かかる

一般の人間が訪れようとする場合は、身体強化魔法で行くスピードを高めることで数時間で行くことが可能となる

なお、スピードを売りとする吸血族はアストン皇国と吸血族の里の往復に数時間で行き来することができる

久々の光景を堪能しながらもあっという間に目的地へとたどり着く


「いや〜いつ見ても吸血鬼がいるっていう見た目してるよな〜。こうジメジメしているっていうのか?」


「最近では人間を受け入れられるように改造をしておるのじゃがな。やはり我らはこういった雰囲気の方が性に合っているのじゃ」


「…ところでこの看板のヴァンパイアバンドっていうのは…?」


「流石にいつまでも里じゃと時代遅れということでな。ここの名前をつけることにしたのじゃよ。ほれ、以前に守が話していたヴァンパイアの女王がメインの作品がうんたらって言っておった…」


「おいおい、他作品の名前を使っていいのか…?いや、これ以上は触れないでおこう」


「爪痕を残したじゃろ?」


「…何もうまくないからな(入る前からスレスレじゃねぇか…)」


入り口のジメジメした雰囲気とは打って変わって、街中へ入るとハロウィンをイメージさせるような暗いながらも点々と明かりが灯り、吸血鬼たちで賑わっている

ジル曰く、このハロウィンちっくな雰囲気も守が以前に訪れたトワイライトタウンで感じたハロウィンのイメージを元に改造が進められているとのこと


「あ、ジル様だー!!それに英雄のお兄ちゃんも!!」


一人の吸血鬼の幼子がジルと守に反応し、声を上げるとVIP待遇かのように町中の吸血鬼たちが道をあける


「…なんだか、前に来た時よりもフレンドリー感がなくないか?」


「守も今やテスタオロスの英雄なのじゃから、多少はのぅ。聖騎士団の中でも守は特に子供人気はすごいのじゃぞ?」


「それはどういう意…」


「皆の者、戻ったのじゃ。我も守も特別待遇を好まぬ。普段通りに欲しいのじゃ」


子供に人気がある意味を問おうとする守だが、皆に呼びかけるジルの声に掻き消されるのであった

二人はその足で先に城へ向かうこととし、街を後にする

城には吸血族代表のジルの代わりを勤めている妹のカリンがおり、まずはカリンと久々の対面を果たすこととする


「カリン、ただいま戻ったのじゃ」


「カリンちゃんお久しぶりだね。相変わらず姉とは似ず、儚げだね」


「あれは猫を…「お姉様」何もないのじゃ…」


「(ジルのあのタジタジ具合、あれ〜どことなくアナト姉と同じ臭いを感じるぜ。昔はそんなこともなかったと思うが…)」


「こほん…本日はよくいらしてくださいました。私も守さんと会うのを楽しみにしていらのですよ?」


「最終決戦を終えた以来だもんね〜。いずれはこっちにも来ようとしていたんだけどなかなか…」


「いえ…ジルお姉様から事情は聞いております。人間の…この世界を救うべくして奮闘なされている方に…ましてやこの世界の人間でない守さんに…そんな愚かしい人間は殺してやりたいものです」


「せっかく吸血族も人間と歩み寄ろうとしているんだから、殺しちゃだめだ。あの件については全て俺で完結させるべきだしな」


「どこまでもお優しいのですね…。ジルお姉様が羨ましいです」


守の身に起こったジャンヌとの仲を引き裂かれた件の話に怒りが隠しきれず、牙がむき出しになるカリンを宥めていると、ツインテールの少女がどこからか瞬間移動したかのように現れ、カリンに抱きつく


「ほぉぉ〜ねぇ〜様!!」


「ど、どこから現れたのですか!!私は今、ジルお姉様と守さんとお話ししているのです。ハウスです」


「ハッハッハッ、わかりましたお姉様!!ジル様、おかえりなさいませ。それとそこの大魔法剣士様もよくいらしたな。貴方様は功績があるから、多少のことは目をつぶりますが、お姉様にまで手を出したら…捥ぐ!!」


「ツインテ、瞬間移動、お姉様、ってどこのレベル4だよっ!!」


「レベル4?なんなのじゃ、それは?」


「いや、気にしないでくれ…。この世界のこういう種は実物を知っているだけに闇が深く感じるぜ…」


「おかしな守なのじゃ…」


「守さんは初めてお会いしますよね?ほら、自己紹介を」


「お姉様が言うから仕方なくやりやがりますデスよ。私は、狼女(ウェアウルフ)のホロ=レキというデス。お姉様の愛に生き、お姉様の全てを受け入れる女デス。覚えておくがいいデス」


「…また濃いキャラクターだな…。どこかのストーカーに通ずるものを感じるぜ…。え〜と、狼女ということは、獣人族の里出身の子か?見覚えはないが…」


「知らぬのも無理はないデス。狼一族は魔族との戦いで行方不明とされていたのデスから」


「あ〜確かに、狼一族自体を見た覚えがないな。入れ違いになったって訳でもないよな?」


「魔族との戦いに敗れ、戦う気力をなくした狼一族は身を隠すために放浪していたのデス。その途中でバラバラになり、私はお姉様に拾っていただいたのデス。他のみんなも生きていることは確認できていますが、私はこのまま生涯をお姉様に尽くすと誓っているのデス」


「そ、そうか…まあよろしく頼むな」


「ふん。お姉様に手を出さないうちは仲良くしてやるのデス」


「ちなみにカリンに百合っ気は…」


「ありません!!」


のちにこのカリン命の狼女のホロはメイと出会い意気投合し、好きな人を四六時中眺め隊というストーカー同盟を組むのだが、またそれは別のお話し


「後半なんだか空気だったのじゃ…我の話なのに…」

ジル編パート1に入りました。パロディー色が少し強めの回になりました。そして、名ありの新キャラ2名登場です。一人目はジルの妹、カリン。今回では掘り下げていないのですが、色々キャラ設定あります。本人が否定している通り、百合っ気はありません。二人目は狼女のホロです。現状ではメイの程度が低い感じですが、後に…。守が本編でとあるキャラのようなツッコミを入れていましたが、特に関係ありません。守が吸血鬼の子供に人気な理由はこの編でちゃんと描きます。

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