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第47話 初めては私が貰うのデスから

守とジルが吸血族の里(ヴァンパイアバンド)に入る少し前に時間は遡る

場面は二人とは別のルートで吸血族の里を目指す、二人の女性に変わる

一人は自身の美を晒すことに躊躇いがない、お姉さん風な女性で、もう一人は極力世間と関わりたくない引きこもりがちな女性である

二人の共通点は、異世界から来た英雄と契約している最上級の精霊であり、とある目的のために吸血族の里を目指しているのであった


「ふわぁ〜…なんだか、久々の登場ね」


「…と、登場?何のことですか…(ボソッ」


「何でもないわよ。それよりも、あんたが鈍いから時間がかかっているのよ?」


「…す、すみません(ボソッ」


「まさか私たちの求めていたものが、吸血族の里にあるかもしれないだなんてね。守の側にいるために何としてでも手に入れるのよ?」


「…わ、わかりましたから…。そ、そんなに強く引っ張らないでください!!(ボソッ」


以前の顔合わせの際に守の周りに女性が増えていることに焦りを見せるウンディーネがノームを急かしているのも無理もない

ジャンヌとの件を知っており、どこかで安堵していた二人にとっては、守の召喚に応じる形でしか、側にいられないために常に側にいられる女性が増えたことに心身穏やかではないのである


「聞けば、あのチビはですわ女の家の地脈(森)が対価らしいじゃない。その気になれば契約主と常に居られるなんて…なんて羨まけしからん」


「…しょ、しょうがないですよ。守さんと私たちの契約当時は英雄でも権力者でもなかったのですから…(ボソッ」


「そんなことは分かっているのよ!!くぅ〜この私ともあろう者が後のことを考えずに契約しちゃったものだから、こうして守と過ごせたかもしれない貴重な時間も無駄にしちゃっている現状に腹が立つわ」


本来召喚魔法で召喚対象を召喚する方法は二種類ある

一つは、召喚魔法と属性魔法を使用し、仮想物を召喚する方法である

召喚魔法と属性魔法を扱える魔力量と技術が必要となる

メイの使用する影人(シャドーマン)がこれに該当し、召喚魔法と闇魔法を同時に扱っている

メリットとしては、召喚したい対象と契約することなく、自身の魔力量のみで召喚したい対象を召喚できる

デメリットとしては、全て魔法で作られた存在のため、耐久度がなく、攻略されやすい

守が魔法解除(マジックキャンセル)で存在を消していたのがその最たるものであるが、基本的に魔法技術が下のものに攻略されることは殆どない

もう一つの方法が、召喚した対象と契約を交わし、呼びたいときに召喚する方法である

召喚したい対象との契約の成立、召喚し維持できるだけの魔力量があれば誰でも扱える

メリットとしては、仮想物ではなく、存在している対象を召喚しているため、その対象が強ければ強い程他者が太刀打ちできなくなる

一度契約を結べば、特別なケースを除き、契約者が死んだりしない限りは契約解除されない

デメリットとしては、召喚魔法で召喚した対象を維持する為に必要な魔力量の膨大さである

そして、もう一つ、今回ウンディーネとノームが旅をしている理由となったデメリットに当たる部分になるのだが、最上級の存在と契約を交わす際には契約とは別に対価が必要となる

この対価の条件としては、魔力を注げる物もしくは魔力の変わりとして扱える霊脈が維持できる物であれば何でも良いのだが、どちらの場合でも膨大な量を必要とするため、耐えうるものでなければならない

つまり、対価を必要とした契約の場合で契約者の側に常にいたいとなると対価となった物に対して、膨大な魔力または霊脈を維持する為の"何か"が必要となる

ウンディーネ、ノームは契約当時の守では、対価として差し出される為の霊脈は存在していなかった為、それぞれが別の魔法具(マジックアイテム)を介して契約している

一方、シルフィードは契約時の対価が守が救った例の森であるが、今となっては活気に溢れる森の霊脈は膨大であるため、シルフィードが望めば、常にエリカの側にいることができる


「…わ、私は守さんが幸せならそれでよかったのですが…(ボソッ」


「普段引きこもっているのは勝手にどうぞだけれども、その部分まで引きこもっていると後悔するわよ?いい、私たちの力は強大なの。変に後悔をして暴走して守に討伐されるなんて未来は嫌よ?」


「…い、意外と考えているのですね…(ボソッ」


「意外は余計よ」


「…ご、ごめんなさい(ボソッ」


鎖国とまではいかないが、まだまだ招いていない者が来ることを歓迎していない吸血族でのちに二人が来ることで一波乱あるのだが、それはまた後の話

そして、場面は守達に戻り、カリン、ホロとの対面をした場所でジルが例の話をする


「色々話はあるのじゃが、ラミア族が動いたのじゃ。しかも、族長娘のエキドナが守に弟子入りを申し出た…」


「ラミア族も人間と歩む道を選びましたか…。守さんに近づいたということはやはり小蛇王眼(アレ)を制御する為にでしょうか?」


「その通りじゃ。我らも人間と歩む道を取ることを決めたのじゃから、いつまでもくだらぬプライドなど捨てて早急に開国すべきじゃな…」


「そうなると…やはり」


「うむ…守よ、やはり我と結婚するのじゃ!」


「何がやはりだよ!!お願いだから、頭を使うことを辞めないでくれ。他にも道はあるだろ?」


「あら?ジルお姉様で不足でしたら、私も娶っていただいても良いのですよ?」


「「「カリン(ちゃん)(お姉様)!?」」」


「(この子もよくよく考えれば、アディリシアみたいな読めないタイプだったな…)ですからね…結婚とかでなくって危なっ!!」


カリンの口から守に対して好意的な発言があるとすぐにホロが守へ攻撃に移る


「チッ…避けやがったデスか。伊達に英雄じゃないデス。お姉様の操を奪いたければ、私を倒すことデスね!!何て言ったって初めては私が貰うのデスから」


「す、すいません守さん!!ホロ!!」


「いや、これくらいは大したことないけど…。やっぱりカリンちゃんそっち系なんじゃ…」


「違います!!ホロ、あなたが出ると話が進みませんから、守さんを歓迎する為の準備班の手伝いに行きなさい」


「しかしデス…」


「ホロ?」


「わ、わかったのデス…」


カリンに睨まれたホロは意気消沈し、その場を後にする


「真面目な話ですが、ジルお姉様か私が英雄様に嫁ぐのが一番早い話なのは間違いなのです」


「でも、それなら俺でなくてもアキレウスでもいいんだろ?」


「ありえない話じゃな」


「論外ですね。あんなに不誠実な方の元に行くくらいでしたら、この里が滅ぶ方がよいでしょう。守さん、いくら冗談でも笑えないですよ?」


「(アキレウス、お前は泣いていいよ…)ハハハ…」


アキレウスはその昔、カリンにナンパしたことがあり、撃沈している

基本的には聖騎士団の面々は吸血族から好意的であるのだが、一族のトップと言っても過言ではないカリンから嫌われているアキレウスは、あまり歓迎されないわけである


「だいたいなのじゃ。吸血族と人間の仲を取り次ぐために英雄は必要かもしれぬが、結果英雄でなくとも昔からお主自身を好いておると言うてるじゃろ?」


「お、おう…(不覚にも少し…)」


「(いいですか、ジルお姉様。せっかくホームに連れていらしたのですから、なんとしても結果を…)」


「(うむ。わかっておるのじゃ。嫁でなくてもせめて愛人の枠を守の口から言わせて見せるのじゃ…)」


「(その息です。サポートは任せてください)」


「(うむ。頼むのじゃ)」


「いや、あの…本人の前で作戦会議をですね…。まぁいいんだけどさ…」


「さ、守。歓迎の準備が終わるまで、街をぶらぶらするのじゃ!!」


「(うん…?気のせいか…?)わ、わかったからそんなに急かさないでくれ!!」


吸血姉妹による守籠絡作戦の開始を告げるかのようにジルは勢いよく、守を連れ出し、その場を後にするのであった


「ほ、本当にこの指示通りにやればいいんデスね?」


「え〜そうよ。英雄様が邪魔なのでしょ?うまくやって頂戴ね」


「正直、かなり胡散臭いデスが、利害が一致しているのは確かデス…。そろそろ行きますデス」


ホロを見送った不穏な(おんな)は、ホロの姿が見えなくなったのを確認し、小声で一言を漏らす


「ふふふ…英雄様?平和ボケしたいのはいいですけど、私は認めませんよ?せいぜい楽しませてくださいね♪」


守達の知らぬ水面下では、一波乱が起こりそうな不穏な動きがあるのであった

前半パートでお分かりの通り、今章では、守の契約精霊二名が絡んでいきます。そして最後まででお分かりの通り、何個か波乱があります。エリカ編と同じかもしくはそれ以上になるという以前の後書きはこういう意味になります。

そして、最後に出てきている不穏な影は今までで言うメイ枠とでも思っていただければよいと思います。一言でいえば、お邪魔虫ですね。

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