第39話 どうしたらそんなに強くなれるのー?
知らぬ間に第二の刺客を攻略している守とアディリシアは、そんなことを知ることもなく、守の力で活気を取り戻したオリビア家の最重要地である森へ訪れる
二人が森へ訪れると以前守が取り戻した神秘さの中に子供や大人と様々な人々の笑顔が溢れており、また人以外にも多種族が嬉しそうに過ごしている様子が伺える
エリカはこの光景に対し、誇らしげに以前以上の活気が出ていると話し、守は満足げにその光景を目にするも、ふとした物を見つけ、冷や汗ながらにエリカに尋ねる
「あのー…あれはいったい何なんでしょうか?」
「あら?さすが守様ですわ。すぐにお気づきなりましたか。あちらは我がお家の守り神の銅像ですわ」
「いや…銅像はいいんですけど、そのモデルがどこをどう見ても俺にしか見えないんですけど…」
守が言うように銅像は守の姿に酷似しており、銅像の守は顔を出しながらもローブを羽織っており、左手には魔法書のようなものを持っており、右手には愛剣のデウスを持ち天に掲げている、エリカにその姿を見せたことがないはずなのに戦争時代を意識させるような見た目となっている
「テスタオロスの英雄であり救世主の守様を銅像で残しておくことに何の間違いがありましょうか」
「(肖像権…。いや、この世界にはそんなもの関係ないか…)いやいや…その理屈でいうならジャンヌやアナト姉、アキレウスもいないとおかしくないか?」
「それはその…オリビア家にとっては守様には多大な感謝しかありませんので…。この件に関しては、私だけではなくお家全体からの希望なのですわ」
「それならばそのオリビア家出身のランス隊長こそこうなるべきだろ?戦争での功労はアキレウスがちゃんと讃えてくれていただろ」
「兄の像もオリビア家本家の方にございますわ。兄のお墓のそばに建ててありますので、本当はそちらを先に案内する予定だったのですが…」
「なるほどな予定が狂ったからだと。のちに拝見できると。それにしてもよくデウスとか戦争中の俺の姿を模せたな。そもそも守の銅像があればメイが発狂して自領土にも作るとかいいそうだが…」
「実は申請から製造にお時間がかかりまして…守様の像が建ったのはつい先日のことなのですわ。王宮に報告をした時以外は秘密裏に行っておりましたので、ファントム家の者でも現物を見ないことには情報として握ってはいなかったのでしょう。戦争中のお姿を模せたのは、アナト様にお願いしたら二つ返事でOKを頂けましたわ」
「やっぱりな!!どうせアナト姉かアキレウスのどちらかが絡んでいると思ったわ。…それよりもさっきから銅像と俺を見比べてみんなどうしていいかわからずオロオロし出してるし、お忍びで来ているわけではないが、また顔が広まってしまった…」
「それは守様のお声が大きいからだと思いますわ…」
「うっ…。ま、まぁ百歩譲って銅像まではいいとして、あの像の名前はあかんやろ」
守が指摘すると、そこには"神の守護者:大魔法剣士"と書かれている
「神の守護者はいくらなんでも盛りすぎ…」
「先にも申しました通り、オリビア家にしたら守様は救世主、いわば神様みたいな存在なのですわ。この森の神秘さを取り戻してくれたという意味もかかっているのです」
「もう建てた以上は俺がどうこう言っても撤去するつもりはないんだろ?」
「もちろんですわ。王宮側が今頃街の方でもこの森に守様の銅像が建ったと広めているはずですし、オリビア家は守様を立てる事に全力を出すと決まったところですので」
「はぁ〜…あんまり有名税みたいなものはつけたくないからな。ほどほどにしてくれよ。あとは今後俺関連で何かするのなら必ず話を通してくれ、頼むから」
「わかりましたわ。今回はちょっと急いでしまったようですので、次回からは守様の許可をいただいてから行いますわ」
守とエリカのやり取りを側から聞いていた様々な種族は二人のやり取りがひと段落ついた頃合いを見測り、守とエリカを取り囲むように集まってくる
その中で一人の子供が守の前にやってきて、守に問いかける
「お兄ちゃん、英雄様なんでしょう?どうしたらそんなに強くなれるのー?」
「こ、こら…口の聞き方に気をつけなさい!!」
「だってー!!」
子供の守への問いかけに青ざめた親が子供に怒り出すも、笑顔で守は応対する
「問題ないですよ。今となってはかもしれませんが、これでもただの学生で通していますので。どうしたら強くなれるか、ね。答えは人それぞれに違うだろうから、俺の意見としてだけど強くなるためには仲間をつくることだと思う。もちろん頼ってばかりではなく、お互いが苦手なところを助けあえる信頼できる仲間をいっぱい作ることだ。この世界にきて、右も左もわからなかった俺でも振り返れば、たくさんの仲間をつくることができた。この世界のことを憂い、平和な世を築き上げるための努力を惜しまなかった王女。俺の所属していた聖騎士団では、俺とほぼ同じくらいの年齢なのにパーティの頭を勤め、我流ながらもその強さで敵を圧倒した勇者、裏方に徹しながらもいつもみんなのサポートを欠かさなかった回復役、必ず先陣をきり、俺らの負担を減らそうと頑張る王子。他にも、持ち前の持久力と魔力で敵を翻弄しながらも皆の回復の間をつないでくれる吸血王女、自身のことにはおっちょこちょいながらも剣に命を捧げ、剣の心を教えてくれた騎士団長、生活面では何もできない俺を本気で心配し、支えてくれる待女。そして…」
エリカの方にふと目をやりながら先人を思い出す守は優しそうに続ける
「日頃から部下の一人一人にも気をつかい、それでも戦闘が始まれば皆を纏め、戦争を勝利という終結に導いたオリビア家のランス隊長。俺を含め全員が全員持ち味はあれどなんでもできる万能ではない。お互いがお互いに支え合ってこそ、強さというものは生まれる。その結果が今なんだよ。少なくても俺はそう思っている。これでよかったかい?」
「うん!!ありがとう。僕もいっぱい信頼できる仲間をつくるね!!」
「ああ。頑張れよ、小さな未来の英雄さん」
子供は満足げに親の元へ戻って行き、親は深々と守に頭を下げ、去っていく
その様子に守がとっつきにくい堅物ではないと判断した周りは、守と交流を取ろうと距離をつめてくるのだった
中には握手を求めるものもいれば、地球(異世界)のことを知りたいなんていう者もいた
応えられるものには一つ一つ応えていく守だが、そんな中で誰かがふとした拍子に守に尋ねる
「大魔法剣士様の本命は結局誰なんですかー?」
守本人にとっては本日聞かれたことの中でもっとも触れられたくないであろう問いかけがきたことで一瞬時が止まる
「体育祭の時はごまかした感が強かったので、ここらで吐かせるのもいいかもしれませんわね」
「せっかくいい感じの空気で終われるはずだったのに、俺関連で一番食いついてくるのはやっぱりそこなのかー!!悪いが、黙秘だっ!!」
「逃がしませんわー!!みなさんも、行きますわよ!!ふふっ」
珍しくクールに決めれたと思っていた守は問い詰められる圧から逃げ出し、真相を知りたいエリカ他は逃げる守を後ろから追いかけていくのだった
「あれ?今回出番すらなしですか!!」
「…お嬢様、時には空気を読むということも大事ですよ」
「キッー!!まだ二人刺客はいるんですからねっ!!」
エリカ編パート3になります。ギャグパートとかを含めようとしたら目標文字数いっぱいいっぱいになってしまったために真面目よりな回になってしまいました。守が語っている仲間の話はあくまで戦争集結までの現状の名あり人物たちだけですので、エリカやメイたちは含まれておりません。
この森の話が次回もう少し続きます。そこにメイたちがお邪魔組が間に合うのかどうか。




