第38話 なんでこうなるのだー!!
ジャンヌとメイが去ってからオリビア家の領地へ向け、歩き進んでいる二人は、メイたちが用意した邪魔者がいつどこで出てくるのか周りを慎重に警戒することで若干の気疲れを感じるのだった
「潰してやる!!なんて意気込んだはいいものもよく考えてみれば、この先何回刺客に会うのやら…。何気にMVP関連では今日が一番楽しみだったのにな」
「一番ですってっ!?そ、そそそれはどういう意味でしょうかっ!?」
「いや、MVP面子の中では一番過激じゃないというのがわかっていたからな。それなら俺も安心して付き合っていけるなと」
「あぁ…そういう意味でしたか(ですが、アディリシア様やジャンヌ様よりも好印象なのは間違いないということですわ)ですが、一番には変わりありませんわ(ボソッ」
「うん?何か言ったか?」
「い、いえ、何も…」
「ところで最初はどこに向かうんだ?」
「まずはですね…(おそらくファントム家はあの森を最後にすると踏んでいるでしょう。ならば…)あの森に行きましょう!!」
「お、いいねぇ。最後に持ってくると思ったが、俺も気になっていたし、この神秘さを保っているのなら、気疲れした体を癒すのには持って来いだな」
「では行きましょう。こちらから行くと近道ですわ」
エリカのとっさの機転により、守とエリカはエリカが当初考えていた予定を変更し、例の森へ向かうこととする
守が直接森へ訪れるのは、以前ハワード家に苦しめられていたのエリカを守が助けた時以来になるため、守としては再び訪れることをとても楽しみにしていたのである
エリカは近道と言いつつも真逆の方へ進むこととなり、移動の間に守は気になっていたシルフィードのことについてエリカに深く尋ねることとする
「シルフォードのことで気になっていたことがあったんだ。魔族との戦いの最中、当時の力に限界を感じた俺は上位の精霊と契約するために旅をしたことがある。当然、エリカと契約しているシルフィードも探していた対象に含まれるわけだが、確か四歳の時には契約していたんだろ?」
「ええ。もともとシルフィードという妖精は繊細な存在でして、澄んだ所にしか姿を現しません。以前お話した通り、私が四つの時にはまだあの森も神秘的でして、気まぐれではあるものもそんなに間隔を開けずにシルフィードが訪れると当時オリビア家でも話題になっていました」
「噂になっていた?言い方が悪くなるが、それならオリビア家のお偉いさんが自領土を守る力をつけるために躍起になってでも探し出すんじゃないか?」
「もちろんお父様たちも何とか契約に持ち込めないかと必死になっていましたわ。しかし、フィーちゃんは人間からの近寄りたいオーラとでもいうのでしょうか?欲とかそういったものに敏感なようでして、オリビア家が総出で探してはそれを察知して入れ違いになるようにしていたそうですわ」
「なるほどな。ウンディーネはともかくノームを探す時に似たような経験をしているから、なんとなくわかる」
「当然四歳の頃の私にはそんな欲もなく、もともとあの森で遊ぶことが好きでしたので、よくお家を抜け出しては兄に見つけて頂くまで遊んでいたものです。それである時なのですが、いつも通りお家を抜け出して遊んでいるとフィーちゃんに出会ったのです」
「偶発的に精霊としかも上位の精霊と出会えるとは、そんな話聞いたことすらないな」
「精霊の存在自体は知っていたのですが、精霊とは小人のようなものだと思っていましたので、精霊云々のではなく友達になれないか声をかけたのです。そうしましたらフィーちゃんが『人間が友達になりたいなんて珍しいこともあるもんだ』と嬉しそうに応えてくれたのですわ。それから数回オリビア家の捜索を避け続けていたフィーちゃんと過ごしたある日に、フィーちゃんの方から契約の話を持ちかけてくれました」
「精霊の方から契約の話を持ちかけてくるなんて珍しいものだな。ウンディーネも向こうからだったが、あれは状況が状況だったからな…」
「契約ということがよくわからなかったので、当時の私は『ずっとフィーちゃんと仲良くできるのでしたら』と応えたのがそのまま契約成立となったようですわ」
「不純なものが一切なく、純粋な気持ちで勝ち取った契約だな。もしエリカと契約してなくて、俺が見つけることができたとしても契約はできなかっただろうな」
「守様と私では状況が違いますのでどうなっていたかはわかりませんわ。お話を戻しますが、契約をしたところまでは良かったのですが、その後すぐに契約のことがお家中に広がり、四歳ながらにしてオリビア家の跡取りに私が浮上しました」
「お家からすればお家総出で探してまで手に入れたい強大な力を手に入れたようなもんだからな。だけど…」
「その通りですわ。魔族殲滅に力を注いでいるオリビア家の次期当主となりますと年齢を重ねれば、戦争に駆り出されることになりますわ。私はお家のためならば仕方がないと悟りもしましたが、兄が私を庇い、次期当主として扱われるために努力を重ねていました」
「ランス隊長らしいな。シルフィードと契約したエリカを次期当主から下げるために重ねた努力量は尋常じゃなかっただろうな。それは共に戦場に立っていた俺らがよく知っている。ランス隊長はこの世界の平和を勝ち取るために必要不可欠な人だった」
「戦争最大の功労者と言っても過言ではない大魔法剣士様にそう言われれば、兄もさぞ喜ぶでしょうね」
「それは言い過ぎだ。みんなの頑張りがあったからこそ勝ち取った勝利だ」
「異世界のために己を高めたお方に言い過ぎはありませんわ。それにしても話に花が咲いて、あっという間につきそうですわ」
「まだ聞きたいことはあるが、とりあえずは森だな!!」
シルフィードのこと、ランスのことで話が広がる二人は、移動にかかる時間など短く感じるほどに目的の森まで近づくのであった
一方守とエリカが森へ向かっている頃、二人が通ることのなかった別のルートでは次なる刺客であるロベルタが何をすることもなく二人を待っており、そこに首謀者二人は合流を果たすのだった
「おっ二人ともきたか。まだ守もオリビア家の娘も来ていないぞ」
「おかしいですね…とっくに通っているはずなのですが…。ひょっとして、目を離した隙に進路を変えましたね!!キッー!!このメイの不覚です。読みを間違いましたかっ!!これではオリビア家の泥棒猫が守様とイチャつく時間が増えてしまいます」
「…どうやら予想していた進路とは違ったようですね」
「すぐに立て直さないといけませんね。騎士団長さん、ご苦労様でした」
「え?私の出番は終わりなのかっ!!休暇をとってまでお前に協力したのに…」
「ここを守様たちが通らなかったので仕方がありません」
「なん…だと!?夫の浮気も正せないどころか会うこともできない空気嫁で終わるとは…」
「夫というのは聞きづてなりませんが、それにしても、やりますね守様。まさか第二関門のロベルタ騎士団長を会うこともなく突破いたしますとは…。まさかっ!!騎士団長のこの熱すぎるオーラを感じ取ったということでしょうか!?」
「…それだけは絶対ないと思いますが」
「わかっていますよ、アイシェ。ですが、ロベルタ騎士団長も所詮四天王の二人めにすぎません。次ですよ次」
「え?本当に出番終了なのかっ!!ちょっ…」
「…失礼いたします」
妨害役を演じることすらできなかったロベルタをメイとアイシェは残して先へ進んでいく
残されたロベルタは一人虚しく宮殿へ戻っていくも、此度のことがヴェルヘルムに露見し、アディリシアの説教としばらくの休暇を無効にされる厳罰に処されるのであった
「なんでこうなるのだー!!」
オリビア家やシルフィードの話を少し掘り下げた回になりました。この先数話でももう少し深堀するつもりです。そして、待ち構えていた第二の刺客は久々の登場ロベルタでした。おそらく予想通りだったと思いますが、今節メインと絡むこともなく出番終了です。そう遠くない未来でロベルタをメインにする回を挟むつもりではいますので、ロベルタ好きな方がいましたら、もう少しお待ち下さい。
〜10/18追記〜
アナトとロベルタを間違えていましたね。自身の作品なのにお恥ずかしい限りです。大変申し訳ございませんでした。




