第36話 守様分を補充したい、舐めまわしたい、食べちゃいたい
「大事な連絡をするぞー。次のイベントが決まった」
「はぁ?」
アキレウスのさらっとした一言につい先日行われた体育祭での出来事が頭をよぎる守は冷や汗を流しながら素のリアクションをしてしまう
「つい最近体育祭をやったばかりだろ。何をするって言うんだ」
「いや〜思いの外体育祭が国中で好評だったんでな。学園関係者から異世界絡みのイベントごとをもっとやって欲しいと要望があってな」
「いや、学園なんだから勉学に励ませろよ…」
「そりゃ間違いないんだが、戦争に行かなくてよくなった今、魔法の勉学を強要させる必要がなくなっただろ?」
「攻撃魔法だけが全てじゃないんだから…基礎を充実させるだけでも時間をかけていいんじゃないだろうか」
「まぁまぁ、守さん。せっかく平和な世の中になったのですから…(このイベントでMVPみたいなものがあれば私も…)」
「そうですわね。生徒間の交流にも有意義ですわ(何か少しでも守様に近く機会を…)」
「王宮にまでご意見がきています(またいい思いができるのでしょうか?)」
「私も守様といい思いがしたいので、異世界関連のイベントは積極的に行いましょう!!(チャンスチャンスチャンス…来い、マイターン!!)」
「口に出して言っちゃいましたよ!?」
「はぁ〜…それで?何をやるっていうんだ?」
「体育祭のようなアクティブなものじゃないから安心しろ。今回は事前に集めた質問に該当者が答える、質問会を行う」
「…思っていたのとなんか違ったな。だがまぁ、詳しく聞こうじゃないか」
アキレウスはクラスの生徒全員に少し太めの紙を一人三枚ずつ取るように指示し、全員に行き渡ったのを確認したところで説明に入る
「今回行う質問会は、今後学生が学園に対する意見などを匿名で投書し、それに対し議論するためのテスト形式で行うものだ。以前守から話を聞いていた目安箱というのを各学年の廊下と教員室の前の計四ヶ所に設置した。今配った用紙は特別製のもので、紙を持ち念じたものが文字として反映されるものになっている。例えば…メイ、紙に守に対して思っていることを向けてみろ」
「なんで腐れ王子に指示されなくちゃ…まぁいいでしょう」
アキレウスに言われ、紙に向かいメイが守に対して今思っていることを念じるとすぐに文字が浮かび上がってくる
『守様分を補充したい、舐めまわしたい、食べちゃいたい』
「うわっ…」
「時と場所を考えましょうよ…」
「その返しもどうなのでしょうか?」
「改めてこのお家の下というのは頭が痛いですわ…」
「これはひどい…」
「守様や皆はともかくやらせた腐れ王子が引くのはおかしいです!!」
「いやいや、これはドン引きだろ…。まぁ紙の用法に関してはこんな感じだ。今回はイベントということで学園にいる人間に対しての質疑を紙に念じ、目安箱にいれてくれ。教員側で厳選したものを当日大講堂にて対象者には赤裸々に告白してもらう。匿名だからな、勇者だろうが、王女だろうが、大魔法剣士だろうが関係なく質問を入れてくれ」
「ようは公開処刑イベントということか。いじめに発展しないか心配だ」
「そんなに心配すんなって。あまりにもえぐい内容は対象者を考慮して選定される筈だからな」
「要するに有名人に限ってエグいのがくる可能性が大きいわけだな。一つ疑問なんだが、対象者が偽りのことを答えたらどうするんだ?」
「例のごとく父上など国の代表者が訪れる前で一般生徒たちは嘘偽りのことをいい通せるだけの肝が座っているかだな。守たちは耐性があるから嘘偽りいいたい放題だろうが」
「ひどい言い方をされたもんだ。確かに内容によっては誤魔化すかもしれんが…」
「まぁ〜そうだろうと思って、対策にはアナトが受け持つらしいからな。嘘は通らないと思って覚悟しておけよ」
「やっぱりか…あの人は暇人なのか」
「お兄様、学園にいる人間とは教員も当てはまるのですか?」
「教員だけじゃなくて、学園にいる人間であれば全てに当てはまるようだ」
「ということは、自分にも飛び火するわけだな?ざまーみろ」
「ハハハ…俺も冷や汗が止まらんわけだよ。とにかく、開催は次々回の休み開けとなる。それまでに一人三枚の用紙を必ず消化しておくように」
連絡事項を述べたアキレウスは死んだ魚の目をしたまま、教室を去っていく
「今回はあいつ主体のイベントではないということが最後のあの目でよくわかったな…」
「お兄様にくる質問なんてものはほとんど女性関連に限られていますしね」
「一緒に旅していた守さんやジャンヌさん、判定員にアナトさんまでいらっしゃるともう赤裸々にされちゃいますね」
「国の…学生たちに公開されてしまうというのは大変恐ろしいですわね」
「自分の行動に誇りを持っていれば何も恥ずかしがることはありません。私は守様に関して何を聞かれても誇りを持って答えますよ」
「そのせいで恥ずかしい思いをするのは俺なんだけどな…。今この学園には有名人と呼べる人間が多数存在するしな、みんな油断してると自分に災難が降りかかるかもしれんぞ」
「そうですわね。覚悟だけはしておきますわ」
"自分にも変なものがくるかもしれない"このことでメイ以外は体育祭の時のように歓迎的な雰囲気ではなくなるのであった
「…少しお時間よろしいですか?」
誰もが余裕のない異様な空気の中でエリカが守に問いかける
「次の休みの件についてか?」
「その通りですわ。以前まだ守様の正体をを存じていなかった時にですが…我が領地を軽く案内したことを覚えておいででしょうか?」
「ああ、覚えてるぞ。貴族の紹介付きで貴族領になんてなかなか入る機会がなかったからな。新鮮な経験だった」
「あの時はその…色々あり、ちゃんと紹介できていませんでしたので…今回はそのリベンジをしたいと思っていますわ」
「かなり丁寧だったと思うが…いや、満足していないって顔してるのはわかったからお好きにどうぞ」
「ありがとうございますわ。何か守様の方でも我が領で行きたいスポットとかありますでしょうか?」
「そうだな…あの森は一度目を通しておきたいな。あの一件以来ちゃんと保っているのか?」
「それはもちろんですわ。守様のおかげで以前以上の活気で溢れていますわ」
「それならば問題ないな。それとランス隊長に一度挨拶できればと思うが…」
「是非案内させてください。兄もきっと喜ぶと思いますわ」
守が戦死者の墓参りに行きたいということをヴェルヘルムに願ったことで自身の兄のことも含まれていると知ったエリカはつい最近、兄ランスの墓は自身の領地にあることを守に告げていた
アストン皇国から参戦していた兵士は全員が同じ場所に埋葬されているものだと思っていた守はこの機会に是非ランスの墓参りに行きたいと思っていたのである
「当日は守様の寮の方へお迎えに行かせていただきますわ」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「そ れ とそこの守様の取り巻きたちは当然歓迎致しませんので」
「ですよねー…」
「くぅ〜格下の貴族風情がいきってるのは腹が立ちます」
「言ってしまえば、アストン皇国の領地ですから、私はいいのでしょうか?」
「ア、アディリシア様も、その…今回ばかりはご遠慮していただければと…思いまして…」
「冗談です。先日守様に満足させて頂きましたので、大丈夫ですよ」
「(満足してなかったらどうしてたんだろうな…)」
いつものように屈託のない笑顔で返すアディリシアに他の誰もがその後を追求することができないのであった
エリカパートの前に書きたかった学園編はかけましたので、次回よりエリカパートに入ります。質問会はジルパート後に書きますので、少々お待ち下さい。




