第32話 愛が重すぎる…
先日のジャンヌとジルとのデートを終えた守は、自身のホームに呼ぶために準備に入るジルとエリカの前にアディリシアの願いを聞き受けることとなる
アディリシアの願いは、王女という立場をなくして一日中守と過ごしたいというものだが、ヴェルヘルムは立場を変えることはできないものも名目上はただの女の子として守と一日過ごすことでこれを容認する
この世界に守を召喚し、その少年に一目惚れをしてから数年、宮内以外で初めて二人っきりで過ごせることに嬉々とした表情のアディリシアは、門番が震えているその横で待ち合わせ時間よりも数時間も前から守が来るのを待つのだった
「(な、なんで今日に限って門番の役回りなんだ私は…。アディリシア様も嬉しいのはわかりますが、こんなに早くから待たれなくても…。その御身に何かあれば私の首は即チョンパですよ…)」
「今日も門番のお仕事、ご苦労様です」
「ひゃっ!?は、はいっ!!ア、アディリシア様は宮殿にいる時とはまた別の華やかな格好でいらっしゃいますね」
「守様の貴重な一日を私のために使うのです。衣装くらいはちゃんとしないとと思い、メイド達を集めて数時間悩みました」
「(ガ、ガチすぎじゃないですか〜…)そ、それにしても守様はまだいらっしゃらないようですね…」
「実は待ち合わせの時間はまだ数時間先なのです。ですが、私が我慢できずに先に来てしまいました。こうしてお慕いしている方が来るまでのドキドキ感もまた新鮮なものです」
「(あ、愛が重すぎる…。ま、守様〜早く来てください〜!!)さぞ、楽しみだったのですねぇ…」
その後も守が来るのを待つ数時間、アディリシアと門番のやりとりは続き、守が来た頃には別の意味で疲労しきる門番であった
「…ひょっとしてずっと待っていたのか?」
「守様と過ごせる今日が楽しみすぎて我慢できませんでした」
「それだったらもっと早くに行動すべきだったな…」
「いいえ、この待ち合わせというものも体験してみたかったのです。お慕いしているお方を待つ女の子の気持ちも理解できてとても満足しています」
「そ、そうか…。ところでさ、その服はどうしたんだ?」
「メイドたちを呼び寄せて守様の好みに合いそうな服装を考えてみました。その…どうでしょうか?」
「すごく似合っていると思うぞ。考えてみれば、ドレスや制服以外の姿を見たことなかったし、なんていうか新鮮っていう感想が一番なんだが…か、かわいいと思うぞ」
「ふふふ…頑張ってみた甲斐がありました。ありがとうございます」
「それで今日はどういう風にしたいんだ?」
「せっかくの機会ですので、普通の女の子としてデートというものを体験してみたいと思います」
「俺にデートを期待されると困るが…とりあえず街にでも行くか」
「はいっ!それでは、失礼致します」
「ちょっ!?」
「殿方の腕を組むのがデートの作法だとメイド達が言っておりましたので…その…ダメでしょうか?」
「いいや、ダメではないが…その…何というか…ハハハ」
デートというものに対しての知識が皆無のアディリシアは事前にメイド達に聞いていた腕組みという行為を躊躇いなく行う中で、ジャンヌたちと違い同身長で膨らみのある胸がいい感じに当たることに童貞の守には刺激が強く、内心では尋常ではない焦りが押し寄せる
焦り半分嬉しい半分の中で二人は街へ行くと特に何をするわけでもなく、目についたカフェに入ることとする
「いらっしゃいませ…って、アディリシア様っ!?それに守様もっ!?」
「本日は王女としてではなく、ただの一般人として来ていますのでそのように騒がれますと…」
「国の王女とか大魔法剣士とかなしで。礼儀作法とかは気にしないで普段通りに接客してくれればいいよ」
守はそうは言うもカフェのスタッフはこの国の王女様と世界を救った英雄の突然の来店に緊張感が走る
誰もが接客をしたくないこの状況でお冷を持っていくことになったスッタフのお盆を持つ手は震えており、注文を聞く声まで震えるのだった
「ご…ご注文の方は…どうされますか?」
「ま、ああは言ったけど、緊張するなって方が無理な話か。アディリシア、メニューの見方は分かるか?」
「こういった場所に来るのは初めてですので…よくわかりません。ですが、このカップルジュースというものに惹かれるものが…」
「カップルジュースだってっ!?」
「どうかされましたか?」
「(日本にいた時でもこんな頭の悪そうなジュースを見たことないのに、まさかこんなところで聞くことになろうとは…)そのジュースは絶対やめた方がいい。絶対にだ!!」
「…店員さん、これはどういう物なのでしょうか?」
「こちらはですね…カップル限定のメニューになりまして…一つの飲み物に対し、二つのストローが入っておりまして、それをカップルが飲むといったものになります」
「ではそちらをお願い致します」
「そ、そんなバカな…」
「私と一緒に飲むのはお嫌でしたか…?」
「そんな上目遣いで聞いてくるのは反則だと思うのですが…はぁ〜今日の主役はアディリシアなわけだし、従いますよ」
先日行われた体育祭でアディリシアの守への思いは国中が周知なため、カップルを疑われることもなくオーダーが通される
実際に来たものはアストン皇国特産の甘いものがこれでもかとトッピングされており、守が想像していた以上のものがきたことで色んな意味で絶望することとなる
「あ、あの〜聞きたいんだが…普段からこのサイズで?」
「本日は王女様と英雄様の特大コンビということでオーナーがサービスしろと…」
「(店中の視線を浴びる中でこのサイズときた。一番最悪なパターンきちゃったよ…)」
「それでは…守様、飲みましょう」
「そうだなー」
守と同じものを飲むことに喜びを感じているアディリシアとは違い、皆の注目を浴びながら恥ずかしさが全開の守はこの時間が早く過ぎ去ることを願いながら無心でストローに口をつける
「その…頼んでおいて何ですが…少し恥ずかしいですね」
「名前に釣られたようだけど、俺の世界じゃこんなジュース実際に頼むやつなんていないからな」
「そうですよね…ハハハ」
アディリシアにも恥ずかしい感情が芽生え始め、お互いに顔を真っ赤にしながらも飲み進めていき、グラスのジュースをなんとか飲み干すのだった
その後カフェを後にした二人は顔の紅葉が冷めぬまま次の場所へ向かおうとする
「最初から飛ばしすぎだと思うが…次は落ち着いたところがいいな」
「そうですね…そうだっ!!ウィンドウショッピングというものですか?それがやってみたいです」
「おお、それなら問題なさそうだな。せっかくだから今着ているような服を見て回ろう」
ドレスや制服以外の服を持ち合わせていないアディリシアの服を見るために、女性ものの服を売っている店を転々とすることにする
入る店の先々でカフェのスタッフのような対応を受けながらも、本来経験することのない出来事にアディリシアは満足する
この日数々の服を試着したアディリシアは、守に披露している合間に守の反応を伺い、後日反応がよかった服を全て取り寄せるのだった
最後に入店した服屋を後にした際にアディリシアが別の店へ入りたいと守に誘いかける
「実は服を扱っているお店ではないのですが、行きたいお店がありまして…」
「遠慮なんてしなくていい。どこかわからんが行こうぜ」
「ではあの骨董品店へお願い致します」
「骨董品店?また珍しいチョイスだな…まぁいいか」
アディリシアが指した店は普段煌びやかなアディリシアとは正反対の地味な見た目のアンティークな雰囲気が漂うお店だった
以前にニースと共に訪れたことがあり、どうしても守から頂きたいものがあるといい二人は店へと入っていくのだった
アディリシアのMVPの利用編パート1になります。今回二人以外の主要な人物が出ていないのは、自分の番の準備に入っている者や王女の邪魔はできないという最低限で持ち合わせている配慮によるものです。ですので今回のパート含め、主要人物はこの編においてはあまり登場させないつもりでいます。
守が女性物の服屋に対し初見感がないことやニースとアディリシアが骨董品店に訪れたことはそれぞれ6話の内容があったからになります。




