過去長編1-Ⅴ 恋する女の子の度胸は凄まじいものなのよ?
ドラゴニュートの軍勢との戦いに勝利を収めた聖騎士団は人質となっていた女子供を保護し、数日かけて村へ帰る
村人たちは聖騎士団が無事に戻ってきたこと、連れ去られた者たちが戻ってきた光景に涙ながらにこれを出迎えた
その後、村の修復作業を手伝うために少しの間村へ滞在するも、ドラゴニュートの軍勢及び指揮していたレックスを倒したことを報告すべく、また村に必要のない戦利品を届けるために聖騎士団は村を出立することとなる
「皆々様。この度は本当に…本当にありがとうございました」
「気にしなくていいんだよ!!平和な世の中を作るために私たちは立ち上がったのだから」
「始めは心配しておりましたが、あなた方四人でしたらそう遠くない未来に平和な世の中ができるのではないかと我々も信じられます」
「ま、この王子様に任せなって」
「よりによって一番弱い奴が言ったわね…」
「ちょっ、アナトさん?今回一番活躍したの俺だと思うんですけど!?」
「…いつかまた是非この村へ訪ねてくだされ。皆快く迎えさせてむらいます」
「うん!!元気でね」
守とアキレウスは荷車を引き、四人はアストン皇国へ向けて出立する
だが、守たちは村にいる間あれだけ守にべったりだったニースが見送りに一切姿を見せなかったことに疑問を感じるのだった
「守〜、見送りにニースがいなくて残念だったなぁ〜。せっかくの現地妻要因だったのに」
「何が現地妻だよ。復旧作業も完了してない中での見送りだったんだ。姿がなくてもしょうがないだろ?」
「ま、俺は別にいいんだけどよ。一番安心してるのはジャンヌだったりして」
「アキレウス、変なこと言わないっ!!確かにちょっとむっとなっちゃったけど、それももう終わったことだよ」
「守もまだまだのようね。恋する女の子の度胸は凄まじいものなのよ?ね、そこに隠れているんでしょ?ニースちゃん」
ニヤニヤしているアナトが荷車の方へ問いかけると、麻袋の中から少女が飛び出すのだった
「えへへ〜バレてましたか」
「「ニースっ!?」」
「お〜こいつはすげぇな。ついてきたのか?」
「守さんにこないだの回答を頂けませんでしたからね。隠れてついてきちゃいました」
「え?でも村に家族とかはいないの?」
「両親は私が幼い頃の魔族の侵攻の際に亡くなっておりません。何も問題はないです。…ですので守さんっ!!」
「はぁ〜…確かに有耶無耶にしちゃってた部分もあるが、ここまでついてきちゃったもんはしょうがないな。真面目に答えるが、どうしていいのかわからないというのが答えだ」
「どういうことでしょうか?」
「前に俺が異世界人という話をしたと思うが、俺のこの世界での扱いが少し特殊でな。公に姿を出さないのも俺の姿が世間にバレてはいけない制約がかかっていてだな…」
「ここからは私が説明するわね。守のこの世界での立場というのは、よく言えばアディリシア王女の友人ということになっているの。というのも、召喚された守を見た司祭のお偉いさんたちは子供に任せられるかと言い放ったのだけど、逆召喚の方法が見つかってないためにこの世界に守を留めなきゃいけなくなったの。守が外に出て異世界人ということが周知になるとただでさえ魔族の侵攻で混乱しているこの世界にさらに混乱を招くことになってしまうの」
「混乱ですか?疑問なんですが、守さんの凄さを実際にこの目で見た者としては、異世界人で強さも秘めているので世間からは英雄視されるのではないのでしょうか?」
「守を見限ったお偉いさんたちは、自分たちの都合で召喚した異世界人が帰ることもできずに戦わされているという印象を世間から抱かれるのが問題なの。信仰がすべての司祭にとって民心に疑惑を持たれるのはマイナス点なの」
「そもそも異世界人を召喚したこと自体、ほんの一部の人間しか知らないことなんだ。と言っても王宮周辺では噂が出ていたようだがな」
「噂と言っても信憑性が薄かったから、守に会うまで私も半信半疑だったんだよね〜」
「そういうわけでそもそも俺が王宮の外にいること自体がお偉いさんたちにもオフレコなわけなんだよ。そんな奴に給仕がついたらおかしな話だろ?」
「なるほど…。守さんの存在が繊細なのは理解できました。ですが、私も自分の抱いた気持ちを背くことはできません。聖騎士団の皆さんは王宮を目指しているのですよね?王様に直接伺ってみます!」
「思い切ったことをするな〜。おもしろいから俺が父上に取り次ごう」
「これはなかなか手強い相手になりそうね、ジャンヌ?」
「むぅ〜」
強情なニースを入れた五人は村を出て、数日でアストン皇国へ引き返す
皇国へつくとすぐに戦果を報告すべく、休憩を挟むこともなく、宮殿へ足を運ぶ
王座にはヴェルヘルムと守が戻ってくることを知り嬉しそうにしているアディリシア、ロベルタがおり、周りは厳重に警備されている
「…周辺の管理は徹底させておる。守くん、楽にしてくれてかまわない」
「お手数おかけします、ヴェルヘルムさん」
「何のこれしき。守くんには迷惑をかけておるのじゃ、そんな中でさらに肩身狭い思いをさせてしまって申し訳ない…」
「気にしないでください。いつか俺が素顔で歩いていてもヴェルヘルムさんに迷惑をかけない世界を必ず作ってみせますから」
「かたじけない…。今回の遠征も無事であれと思っておったのじゃが、本当に無事でよかった。アディリシアは守くんが旅立ってからろくに眠ってもおらなかったのじゃ」
「お父様、その話はしないでといったのに…」
「心配かけたな。だけど、この通り傷一つついてないから大丈夫だ」
「はい、守様のお姿を拝見して安心致しました」
聖騎士団の無事の挨拶を終え、魔族の侵攻による被害を受けた村の話、ドラゴニュートの軍隊及び親玉レックス討伐の報告にうつる
レックスとのタイマンにアキレウスが勝利を収めたことにヴェルヘルムとアディリシアは驚きを隠せないようであったが、その件よりもニースの件の方が面白いとふんだアキレウスはすぐさま、ニースの紹介にうつる
「父上、紹介したい人物がいるのですが、よろしいですか?」
「紹介じゃと?さっきから見知らぬ女子がおると気にはなっておったのじゃが…」
「我々が救出した村出身の者で、守にその身を捧げたいとその身一つでここまでついてきたニースという者です」
「ご紹介賜りました、ニース=ルルーナです。この度はヴェルヘルム様にお願いしたことがあり、参りました。アキレウス王子が申された通り、守さんに仕える許可を頂きたいと願います」
「うーむ…承諾してやりたいのは山々なのじゃが…」
「守さんの存在が複雑なのは聞いております。しかし、私がどれだけできるかはわかりませんが戦で疲れ切った守さんをこの身の全てで癒して差し上げたいのです」
「心意気は買うがのう…。やはり許可を出すにはリスクが高い部分がある。特に戦闘能力があるように見えないところが許可できない大部分じゃ」
「確かに剣が扱えるわけでもなければ、魔法も扱えません。ですが…」
「どうじゃろうか、守くんのそばには置いてはおけぬがこの王室に仕えて見る気はないか?」
「…大変魅力的な話だとは思いますが、私は守さんに尽くしたいと考えております。それを曲げるつもりはありません」
「いや、それで良いのじゃ。王室で守くんのために働くといい。聖騎士団の活動条件の一つには、遠征の度に報告の義務をつけておる。つまりここにおれば守くんが帰ってくる度に必ず会うことはできる」
「失礼ながら、それだけでは利点とは思えないのですが…」
「では、もう一つ。魔王討伐が成功し、平和な世の中になれば、当然功労者の守くんには権力がつく。その際に守くん付き筆頭の地位を皇国側から公認するというはどうじゃろうか」
「未来のために今を諦めるわけですね。…わかりました。その条件で、王室に仕えます」
「では、ニース=ルルーナよ、本日よりよろしく頼む」
自身の主人にしたい思っている男が戦争に打ち勝ち、いつの日にかその主人付きになる
ニースはその未来を想像しながら、ヴェルヘルムから提案された王室付きの役職を受け入れるのだった
数年後、守が学園に入る話を聞いたニースはこの時の話をヴェルヘルムに持ちかけ、見事守付きの地位を勝ち取るのだった
「ーーーとまぁ、長く話したが、俺たちとニースの出会いはこんな感じだったのさ」
「あの時守さんに助けられて今があることは本当によかったと思っています」
「それにしても、守様とジャンヌ様が恋仲になる前に出会って、よくもまぁ恋仲になるのが容認できましたわね。話を聞いているとライバル路線のように聞こえましたが」
「やはり共に旅ができなかったのが、敗因だったのかもしれませんね。王室時代の私は守さん付きになるために必死で王室に仕えていましたので…」
「ふふ〜ん。常に一緒にいた私が大勝利を収めたわけだよね」
「でも、今はあの時の感情はないけどな」
「がーん…」
「くぅ〜私ももっと早くに守様に出会っていれば〜」
「いや、お前への対応は早かろうが、遅かろうが変わらないからな?」
「そんな〜つれないです〜。でもそんな守様も大好きです〜」
「うわっ!!バカ、飛びついてくるな」
メイが守に飛びつき、周りがワチャワチャしている中でアディリシアはニースに語りかける
「当初の願い通り、守様にお仕えできる今を手に入れることができて本当によかったですね」
「はいっ!姫様にも大変お世話になりました」
「よくよく考えると同じ部屋で生活できる羨ましい環境…やはり王族命令で取り消した方がよかったでしょうか」
「ちょっ!!姫様の冗談はわかりにくいので勘弁してください」
平和な世の中を作るために戦場で戦っていた者たちだけではなく、未来のために賭けた少女も望んだ今を勝ち取ることに成功するのだった
五話にわたりお送りしてきました、ニースとの出会い編でした。前回のあとがきで触れた通り次回より本編の方を進めていき、そこからヒロインの過去長編をまたはさんでいく予定です。現在の予定としては次回の過去編はジルですが、他の話を先にいれるかもしれません。




