狂気
「そんなことが・・・」
事の経緯を説明すると、敦也がつぶやいた。
藍川は、ただ黙って、俺を睨んでいる。
パタパタパタ・・・
「篠田さん、落ち着いてください!!」
「芽衣っ、芽衣っ!!」
狂ったように叫び、こちらに向かってくる異常なほど美しい女。
その女を必死に落ち着かそうとしている看護師。
「あ・・・」
藍川がその姿を見て、声を漏らす。
「あ、アンタァ・・・芽衣に・・・芽衣に・・・」
怒り・・・だろう。
震えながら、藍川の肩を揺さぶる。
「何をしたのぉぉぉぉ!!!」
この前会った時には、綺麗にまとめられていた髪は、酷くぼさぼさで。
涙と鼻水で化粧はぐちゃぐちゃ。
「この子は何も悪くないんです!
わたしが悪いのです!!」
瀬尾さんが、必死に芽衣の叔母を静めようとする。
「芽衣を、芽衣を・・・」
瀬尾さんを無視し、怒りの矛先を俺に向けてくる。
「任せたじゃないぃぃぃぃ!!!」
藍川から離れ、俺に殴りかかってくる。
血走った目は、まるで兎のようだ。
「篠田さん、落ち着いて!!」
「あの、落ち着いてください!!」
敦也と看護師が2人がかりで抑える。
「何でこんなことになんのよっ!!
何であの子が、こんな目に遭わなきゃなんないのよぉぉぉ!!!」
そんな時。
ウィーン
遂に、緊急治療室が開いた。
「芽衣・・・芽衣・・・」
俺を視野から外し、力が抜けたように座り込む叔母さんこと篠田さん。
「泉川芽衣さんの保護者の方は?」
中から出てきた医者が問いかける。
「私ぃ・・・私ですぅ・・・」
足が駄目になったのか、腕だけでアザラシのように床を這う篠田さん。
すぐさま、看護師が肩を貸す。
「アンタも来なさい」
篠田さんが、落ち着いた声で俺に言う。
俺は、否応なく緊急治療室に連れ込まれた。




