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声を聞かせて  作者: CACAONOVEL12
記憶
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価値のない存在


膝なんか全く気にならない。

ただ・・・。

穂乃夏と楽しそうに話す晃の声が、何度も響く。

もう、嫌だ。

全てが嫌になる。


“今はまだ、辛抱の時だ。

 耐えろ、耐えて耐えて、耐え抜くんだ”


瀬尾さん・・・。

私はあなたのように強くないです。

「もう・・・耐えらんないよっ・・・」

瀬尾さんは何も間違っていない。

けど。

私の心は、砕けました。

その破片は塵となって、この曇天の空に広がる。

やがて、海に帰るでしょう。

肉体は・・・。

カシャン

私はフェンスに足をかける。

世間的に、こういう行為を何と呼ぶかも知っている。

フェンス越しに下に見えるのは、病院の駐車場。

生憎、誰もいない。

私の人生は、静かに終わる。

誰にも見られることなく、幕を閉じる。

それはそれで、ありなのかもしれない。

私は左足もかける。

また、右足をかける。

そして、左足。

あっという間に上半身はフェンスを越えた。

「すぅー・・・」

深呼吸をすれば、風になった気分を味わえる。

こんなに高いところにいるのに、全然怖くない。

道路、ビル、アパート、商店街・・・

道行く人々。

全てが小さく見える。

私が死んで、悲しむ人はこの中にどれくらいいるんだろう?

そもそも・・・いるのかな?

フェンスの向こう側に行こうとした時だった。

ダンッ「芽衣!!」

大好きな声が聞こえた。

これは・・・幻聴??

まだ未練があったの??

「何・・・してんだよぉ・・・」

振り返れば、肩を激しく上下させる晃がいた。

走ってきたんだ・・・私の為に?

「・・・」

何してる??

見ればわかることじゃない??

私はただ、晃を見つめる。

「芽衣、何黙ってんだよ!!

 早くそこから降りろ!!」

芽衣って呼ばないでよ。

「なぁ、芽衣!!」

お願いだから・・・。

「芽衣っ!!」

「もうやめてよっ!!」

思わず怒鳴ってしまった。

晃は驚いて目を見開く。

「記憶・・・戻ってるんでしょ?」

固まったまま、少しも動かない。

「芽衣って・・・呼ばないで・・・」

これ以上、期待させないで。

「芽衣・・・」

私の言っていることが理解できない晃。

「お願いだからぁ!!

 呼ばないでよ・・・」

黙ったまま、こっちに足を進めるする晃。

「来ないで!!」

聞こえていないのか、足を止めない。

「来たら、フェンスを越える!!」

私はあらん限りの大声で怒鳴る。

そこで、やっと止まる。

「なぁ・・・俺のこと、どうしても許せないか??」

許せない?

私が晃を?

「お前には、本当に悪いことをした。

 謝って許されることでもないことも、十分知っているつもりだ」

まっすぐに私を見つめる。

「何を・・・謝るの・・・・?」

私は理解できない。

「お前が知っている通り、俺は既に記憶を取り戻している」

やっぱり・・・。

私には気づけなかったこと。

「山本が来た日・・・お前が帰った後、敦也を呼んで全て思い出した」

村上君を・・・・?

そんな話、聞いてない。

「お前の声、山本とのこと、坂田のこと、屋上でのこと・・・全部」

「・・・」

「でも俺が記憶を失っている間のことも、全部覚えてる。

 それで・・・どう接していいかわかんなくて・・・。

 記憶喪失のフリしてた」

フリ・・・。

そういえば、そのくらいの頃から晃は急に優しくなった。

「本当に悪かった。

 ごめん」

頭を深々と下げる晃。

「・・・」

私は何も言えない。

それなら、晃は記憶を取り戻した状態で・・・。

頭を上げる晃。

「あのな、」

恐れていたことが、現実となった。

嫌・・・聞きたくない・・・。

私は向こう側へ行くことしか考えられなかった。

「め、」

「芽衣ちゃん!!」

私の腰を止めたのは・・・






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