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声を聞かせて  作者: CACAONOVEL12
記憶
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69/76

期待させないで!!

人殺し。

そうだった。

私、自分のしたことを忘れていた。

私は晃から大切なものを奪った張本人。

そんな人間に、告白なんてするわけない。

そもそも私のような人間が、晃と釣り合うはずがない。

そう思うと嬉し涙は消えて、どんどん乾いていく。

私、本当に大バカ。

本来なら近づくことさえも許されないのに・・・。


私はただ・・・。


そこまで考えて、もう一度自分に問質す。


アイサレタカッタ??


自分の愚かさを改めて思い知らされる。

私なんかが愛されるわけない。

現に、叔母さんは私を嫌っている。

晃も、嫌がっているに違いない。

私が・・・私が人殺しだから。

私は力の抜けた手足で、重い腰を立たせる。

“・・・いいよ”

本当に?

本当に私にはあなたを愛する資格があるの?

あなたは付き合っていた頃のように、私を愛してくれるの?

真相を突き止めなければ。

私は覚悟すら決めてもいないのに、その答えを自ら求める。

早く、晃のところに・・・。



「きゃはは!!」

ドアノブを握った瞬間、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

穂乃夏だ。

私は思わず手を離す。

何を笑っているの・・・?

「柳瀬君、本当はそう思ってたんだね」

本当・・・思ってた・・・?

誰の話・・・?

「ん。

 さっさと消えりゃあ、楽なのに」

心臓が痛い。

まるで、誰かに握りつぶされているような感覚に陥った。

「勘違いとか、まじでうざい」

「きゃはは!!

 そこまで言っちゃ、可哀相じゃん!!」

私は耐えられなくなって、無意識のうちに走り出していた。

行き先は・・・。

「ちょっと、廊下は走らないでください!!」

看護婦さんに怒られても、この足は止まらない。


この足が止まった時。

私は何をするんだろう。


ひたすら走り、非常階段を駆け上る。

最上階のドアを開くと。

曇天の空に、灰色のコンクリート。

その先の、2mは越えているフェンス。

足が、やっと止まった。

「はぁはぁ」

私の荒い息遣いだけが聞こえる。

涙は乾ききっていて、先程まで泣いていたとは思えないほど。

私は立ったまま、しばらく呼吸を整えた。

そして、考える。


もう、生きていくことは叶わない。

誰も私の生存を願ってなんかない。


“親が死んでまで守った命・・・。

 アンタはそれを粗末にするの?”


わかってます。

でも、私にはあなたに心配してもらう資格なんてないんです。

日向さん。


“頑張んなさいよ!!”


晃と付き合い始めたという報告をしたときに、言ってくれたよね。

でも、もう頑張る必要なんかない、私は憎まれるべき存在だから。

琴音。


“め、芽衣ちゃん、正気?”


正気です。

だから、もう気にしないでください。

悟さん。


“泉川の両親が亡くなったのは、晃のせいじゃねぇだろっ!!

 な、そうだよな、泉川?”


その通り。

犯人は私です。

村上君。


“芽衣”


初めて名前を呼んでくれた時。

体中に、あなたの温かさが広がったよ。

あなたからいろんなものをもらったよ。


嬉しくなるから・・・期待してしまうから。

もう、呼ばないでください。


それなのに。


“芽衣”

“芽衣!!”

“芽衣・・・”


瞬きするたびに、晃のいろんな表情が鮮明に蘇る。


「もうやめてよっ!!」

私は頭を掻き毟り、ひざまずく。

急に座ったため、膝を打った。

痛みすら感じない。






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