吉凶
「瀬尾さーん!!さっきの続き!!」
「はいはい」
晃が戻ってきた。
瀬尾さんは、みかんを食べながら晃の話に耳を傾けていた。
「それじゃ、また!!」
「また聞かせてくれよ」
瀬尾さんが晃の病室を去った。
「ふー・・・」
晃は満足そうにため息をつく。
「あのね、晃、」
「クリスマス、何か欲しい物とかある?」
・・・。
え・・・・??
「・・・」
「や、ないんなら・・・勝手に買うけど??」
照れくさそうに枕を頭に乗せる晃は、すごく可愛い。
「いいの??」
「・・・いいよ」
私は、嬉しすぎて涙が出てきた。
「ちょっと、トイレ・・・」
「お、おう」
晃は振り返らずに言った。
「はぁ・・・」
悲しいことの後には、必ず福が来る。
誰かの教訓は、本当に正しかった!!
“彼は君に興味を持っていて、特別な感情を抱いている”
その感情って・・・。
“だが、明確にするのも、今ではない”
瀬尾さん、待ちきれないよ。
あんなこと言われたら、誰だって期待しちゃうよ。
手洗い場の鏡の前で、私は自分を見つめる。
「メイク・・・しよっかな??」
「何浮かれてんの?」
冷たい声が聞こえた。
鏡をちゃんと見ると、出入り口のドアにもたれかかった穂乃夏がいた。
「い、いつのまに・・・?」
「いたわよ、あんたが来る前から」
晃がいる時とは全く違う、氷のように冷たい声。
「へ~いいことあったんだ」
にやにやしながら、ゆっくり私のほうに歩み寄ってくる穂乃夏。
“南ってさぁ、めっちゃ怖いんだよ!!”
村上君の言葉が蘇る。
私はゴクリ、と唾を飲む。
「そんな風に見える?」
「調子乗るのも、あんたの自由だけどさぁ・・・」
一層距離を詰めてきた穂乃夏。
あまりの近さに、私は思わず後ろの洗面台に手をついてしまった。
穂乃夏はキスでもするのか、と思うような距離で止まった。
「柳瀬君ね、もう思い出してるよ」
「えっ・・・?」
思い出してる・・・・?
「なんだぁ、知らなかったんだ?
看病してるくせに??」
穂乃夏の言葉が、嫌なくらい頭の中に響いてくる。
「それなのに告白しないって・・・。
これって、フラれる兆候じゃない??」
「っ・・・そんなの、わかりっこないじゃない」
私は強気に返す。
「あらら~??
現実逃避??」
私は耐えられなくなって、穂乃夏を押した。
穂乃夏はそれでも余裕の笑みを浮かべている。
「真相を知るのも、時間の問題ね」
「・・・」
何も言い返せない。
「あ、それから」
穂乃夏はドアを開きながら、
「“看病してくれるのは嬉しいけど、人殺しがそばにいるのは怖い”
って言ってたよ」
残念でした、とでもいうように、穂乃夏は閉まりかけのドアの隙間から、私を嘲笑った。
バタン
私はその場で座り込んでしまった。




