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声を聞かせて  作者: CACAONOVEL12
記憶
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バスケ

ガコン。

村上君が選んだイチゴオレが、4つ出てくる。

「はい」

そのうちの1つを、私にくれる村上君。

「あ、ありがと」

自販機を見ると、晃がくれたカフェオレのこととか、いろいろ思い出せる。

ちょっぴり切なくなるけど。

「あの、村上君」

「なーに?」

私は深呼吸をして、調子を整える。

「晃って、バスケしてたの??」

村上君の目が、驚いたように見開かれる。

「してたのって・・・泉川は聞いてないの?」

「うん」

やっぱり、親しい人しか知らないんだ。

村上君は、ちょっと黙り込んでから言った。

「少し、昔話でもしよっか」

寂しそうに笑いながら。


「アイツ、上手いよ」

「バスケ?」

「そ」

自販機の隣にあったベンチに座る私達。

「俺と最初に会った日から、バスケットボール持ち歩いてた。

 日向さんに聞いたら、叔父さんの勧めで始めたらしい」

叔父さん。

柳瀬達也さん。

「小学校に入学して、小1のくせしてクラブに入ったんだよ。

 もちろん、俺も」

村上君さえ巻き込むなんて・・・。

やっぱりすごい人間力。

「アイツさ、小4の時にスタメン入りしてさ、マジすごかった!!

 アイツの練習態度見てた先輩方は、いびったりしなかったし」

私なら、絶対妬む。

妬ませないくらいの練習って、どんな練習??

「あっという間に差がついて、俺は小5でやっとスタメン」

「小5って、すごいと思う!!」

「アイツと比べたら、全然だよ」

「でも・・・」

「俺さ、アイツに嫉妬してたんだ」

「え?」

ははっと力なく笑う村上君は、いつもと違う表情をしていた。

「でも、そんな自分が大っ嫌いでさ・・・。

 1度、晃に八つ当たりしちまったんだ」

「村上君が?!」

いつもにこやかにしている村上君が?!

「うん。

 そしたらアイツ、クラブ辞めるって言った。

 勿論、コーチとか先輩とかが慌てて止めて。

 アイツ、“敦也が辞めるから!!”とか言ってさ」

晃・・・。

「わんわん泣きながら、“友達失うなら、バスケしないほうがマシ!!”

 って言って・・・。

 後で俺が先輩に焼き入れられたんだよ」

「えっ?!」

焼きって・・・。

「焼きっていっても、言葉の暴力な。

 ガキでもスポーツマンですから!!」

胸に拳をあて、いつもの笑顔を見せてくれた。

「俺別に辞める気なかったから、びっくりしてすぐに晃に謝ったんだ。

 そしたらアイツ・・・なんて言ったと思う?」

「うーん・・・気にするなよ、とか?」

「不正解。

 急に怒り出して、“お前がバスケを辞める時は、俺のバスケの寿命だ”

 とか言い出して、落ち着かせるの超大変だった」

「・・・」

晃が。

あの晃が。

「中学でも1年でスタメン入り。

 俺もベンチにはいたよ!!

 2年で3年を抜いてエース昇格」

すごい・・・。

まさに天才!!

「ま、先輩方・・・特に3年が相当ご立腹で・・・。

 その部、結構部員多くてさ。

 でも晃は、先輩にも屈しなかった」

「・・・」

「その頃はかなり強くて、全国ベスト4入りしたんだ!!」

嬉しそうに笑う村上君は、本当に楽しそうだった。

「高校もやる気だったけど・・・叔父さんがあんなことになって」

心臓を貫かれたような気がした。

「アイツがバスケ辞めて、俺も辞めた。

 そういう約束でアイツに辞めさせなかったし」

村上君がバスケを辞めるとき、晃も辞める。

それは、晃が辞めたときも同様。

「もったいねぇ!!

 雅ヶ丘って、バスケ激弱じゃん?

 だからここに入ったんだと思う」

私は耐えられなくなって、涙を零してしまった。

「いいい、泉川?!

 ごめん!俺別に責めてるつもりじゃ、」

「ごめんなさい」

謝って済むことじゃない。

晃の天賦の才を、不断の努力を、私が全て台無しにした。

美しい色彩の晃という絵画に、私の黒が一滴垂れただけで、全てが崩れた。

「ごめんなさい」

「あ、あ、ホントごめん!!

 だからその、ね?泣かないでよ~!!」

私は村上君に、ひたすら謝り続けた。






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