君の背中
気まぐれだった。
息が詰まる毎日から、少しだけ逃れたいと思っていた。
やっぱ、俺とお前は似てんだな・・・芽衣。
人の気配に気づいたのか、芽衣は振り返らずに涙を拭った。
「この本まぢかんど、」
本など持ってないくせに、言い訳し始めた芽衣。
後ろを振り向くと、俺がいる。
「・・・!」
驚く、というより怯えたような芽衣の表情から自分が嫌われていると言う事を、改めて思い知らされた。
「・・・」
俺も、なんと言って良いのか、わからずにいた。
沈黙だけが、流れる。
「ぁきら・・・・」
沈黙を破ったのは芽衣だった。
「坂田さんと付き合ってるの?」
そんなこと、芽衣だけには聞かれたくなかった。
「お前に関係あんの?」
俺は、開き直っていた。
どうせ嫌われるなら、とことん嫌われてやる。
「お前、俺のこと嫌いなんだろ?」
「!そんなこと、あるわけない!」
俺は、芽衣との距離を縮めながら聞いた。
ガシャン。
芽衣に辿り着くなり、小さな体を鉄格子に押し付けた。
「正直に言えば?」
俺は、口を開きかけた芽衣に、無理矢理自分の唇を重ねた。
「・・んっ、やぁ・・・」
拒否する芽衣に、俺は確信した。
俺はまだ、芽衣が好きだ。
好きだから、嫌がる事もすぐ止めた。
そして、気づいた。
芽衣が涙を流している事に。
「さ、サイテーだよっ!
彼女以外の女の子に・・・元カノにキスするなんて!」
サイテー・・・か。
今の俺には、ぴったりの言葉だ。
なら・・・。
俺に愛を囁きつつ、突然別れを告げたお前はどうなんだ?
「人に言えた立場?」
急に聞こえた声。
振り向くと、坂田が立っていた。
「アナタ、散々晃を苦しめたくせに。
自分のこと棚に上げといて・・・何言ってんの?」
俺に縋りながら、坂田は言う。
「その言葉、アンタにそっくりそのまま返してやるわよ!!」




