偽り
「芽衣っ・・・」
そこに横たわっていたのは、芽衣の体だった。
俺は、芽衣のすぐそばに来た時に、ようやく気づいた。
芽衣の体が、傷を負っていることに。
唇の端には、殴られたような血の痕。
制服が捲れたお腹には、鮮やかな鬱血痕。
リンチ
集団暴力
そんな単語が俺の頭を横切った。
「うふふ♪」
楽しそうな声が聞こえた。
振り返ると、この前の脅迫女が立っていた。
「坂田っ・・・」
翔が呟いた。
そういえば、そんな名前だったような・・・?
「柳瀬君、あたしアナタと同じクラスだよ?
知らなかったでしょ?」
「えっ・・・」
「うふふ♪
泉川さんの事は、その罰・・・ってとこかな??
忘れるなんてひどいよぉ」
唇を尖らせ、拗ねたように言う坂田。
その行動1つ1つが、俺を怒らせていく。
「坂田お前、」
「部外者は黙ってて」
それまでの可愛らしい声ではなくなっていた。
「柳瀬君、もう1度アナタにチャンスをあげる」
甘ったるく、誘惑するような声。
「あたしと付き合わない?」
「はぁ?
お前何言って、」
「また泉川さんを傷つけたいの?」
俺は、はっとする。
横たわっている芽衣は、気絶している。
「次は・・・性犯罪させよっかな??」
その声で、俺は衝動的に坂田に殴りかかろうとしてしまった。
「いいの??」
大きい声を出す坂田。
「ここであたしが悲鳴を上げれば・・・。
気絶した女子高生。
体格のいい男子高生。
そして・・・怯えるか弱い女の子」
俺にゆっくりと近づきながら、続ける。
「それでもいいの?」
「晃、コイツに騙されるなっ!!」
黙り込んでいた翔が叫んだ。
「ソイツは、」
「言ったはずよ。
部外者は黙ってて」
翔を脅すように睨み付ける坂田。
「それとも何?
2人まとめて少年院送りにされたいの?」
「なわけねぇだろっ!!」
「そんなに泉川さんを傷つけたい?」
「てめ、」
「翔、黙れ」
俺が翔を静める。
「晃、おま、」
「坂田、そのチャンス、まだ有効か?」
坂田は嬉しそうに微笑む。
「そうね。
アナタの愛の言葉を聴ければ」
俺は、ボコボコに殴り殺してやりたいくらい、坂田にムカついてる。
でも。
俺は大切なものを守りたい。
大切な翔を。
大好きな、芽衣を。
俺は坂田に歩み寄る。
「・・・好きだ・・・」
「あたしも」
翔は、この瞬間を見て、膝をついた。




