無口な美姫の真実
「ざけんじゃないわよっ!!」
もっかい怒鳴った藍川。
その後ろには、お供の泉川。
「アンタら、何の根拠があってこんなデタラメでっち上げてるわけっ?!」
かなーり怒ってる。
「大体、私は敦也オンリーなのっ!
他の男は皆クズよ、クズ!!」
わーぉ・・・。
「結局クズ扱いぢゃん」
敦也の発言に、ヤバッという表情の藍川。
「でも・・・嬉しいわ、サンキュ」
そう言いながら、藍川に歩み寄る敦也。
「ちょーっと待った!!」
いい雰囲気を壊した、凄いKYがいた。
山本だ。
「アンタはそうかもしれない。
けど、泉川はどうかしら?」
意地悪な笑顔を浮かべる山本。
全員の視線が、泉川に集中する。
「芽衣・・・」
泉川は、パクパクと口を動かす。
けど、発声はしていないようだ。
「クスクスクス・・・」
「何アレ」
「だっさ~」
「酸欠の金魚みたいっ」
「きゃは、ウケる~」
「かわいそ~」
何なんだコイツら。
「アンタ達っ」
藍川の怒りが絶頂に達したようだ。
「泉川って~喋れないんでしょ?」
またしても山本。
喋れない・・・?
「担任に聞いたら~あっさり教えてくれたしっ!」
「夕那、心配してるフリしたもんね~」
「あれはウマかった」
「えっと~確か、家族が交通事故で死んじゃったんだっけ?
んで、泉川だけが生き残った。
ぷぅ~ドラマみたいっ!!」
俺の中で、何かが熱く、大暴れしている。
「てゆーかぁ・・・アンタ1人の為だけに、他の全員死亡とか、かわいそ~」
「悲劇のヒロインぶってるとことか、まぢサイコー!!」
「ちょーウケるしぃ!!」
きゃはははっ、と甲高い声が響く。
音楽室なんかにこなきゃ良かった。
「・・・かんの・・・」
「はぁ?」
「アンタ達に・・・芽衣の何が分かるのっ?!」
机を思いっきり蹴飛ばす藍川。
その音にびびる女共。
「芽衣がどれだけ苦しんだ事かっ・・・。
私は隣で見てただけだけど、自殺まで追い込まれたのよっ?!」
藍川の怒鳴り声に、静まり返る音楽室。
藍川は、涙を流しながら、拭きもせずに続ける。
「芽衣の痛みを、軽々しく口に出すなっ!!」
「なっ・・・アタシが心配してやってるってのにっ!!」
「心配っ?アンタみたいな外道に心配なんかされたくない!!
寧ろ、吐き気がするっ!」
「はぁー?
アンタ、アタシを敵に回したいの?」
「いい度胸してるじゃない!」
「夕那には、暴力団の知り合いもいるんだよ?」
「どうなるか・・・分かってるよね?」
俺の中の何かが、遂に爆発した。
「え?やな、」
ドカッ!
俺は、山本の背後の壁を殴っていた。
「や・・・なせ・・・?」
山本は、涙を流している。
怖いんだろう。
かなり震えている。
「あ、晃!!」
「柳瀬、やめなっ!!」
藍川と敦也の声も遠く感じる。
俺・・・今どんな顔してんだろ?
そんな怒りに満ちた俺の心を、一瞬にして和らげたものがあった。
「泉川・・・」
俺の壁に付いた方の手を、必死に掴む泉川の手だった。




