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決意

被っていた毛布から顔を出した瞬間に車体に衝撃が走る。

「なっ!」

『ガッシャーン』

窓ガラスが割れ、右手をつかまれると、一切の抵抗を許されずに車外に引き摺り出される。

「お...狼男」

私を持ち上げてなお見上げるほどの体躯を誇り、顔は狼の顔、全身が体毛に覆われている二足歩行の生物。彼の漫画で見た狼男の特徴であった。

「あの....初めましてっっ”$%%’#$)’’」

こちらを観察しているそぶりを見せていたため話しかけてみたが、突如左手を噛まれる。歯が食い込み、体が悲鳴を上げる。意識が遠退きかけのと同時に再びの嘔吐感に襲われる。

「キャっ」

私が吐き出したものは狼男の顔面にかかった。直後狼男は悶絶し、私を車の方に投げつける。全身が衝撃で痛いが、私はりんごに手を伸ばす。

「グルあ!」

憤怒の表情を浮かべた狼男は私に向かって大口を開けると捕食の態勢に入る。私はその口に向けて握ったりんごを突き出し、飲み込まれるのと同時に感覚の薄れる中りんごを握りつぶす。

「グル”%$%&’アアあア%&$%’%&##’(&%」

効いた!一か八かであったがりんごの汁は狼男に効いたようであった。狼男はメチャクチャに暴れ回り、時折口から何かを吐き出し続けている。


「遠くへ...遠くへ...[][]くん...私..死ぬのかな...[][]く...ん..」

左手は噛まれて血だらけ、右手は強く握られたせいで折れているのか激痛が走る。加えて先ほどの嘔吐によって体力を消耗していた。意識が遠退き、自然と彼の名前を呼んでいる。全ての荷物を置いてきたし、無我夢中で逃げてきたためここがどこかもわからない。私は日が傾き薄暗くなりつつある森を歩き続ける。数分なのか、数時間歩いたのかわからない中、私は意識を手放す。



「はっ」

目覚めた瞬間視界に入ったのは木製の天井であった。体を起こすと、私はベットに寝かされていた。

「ここは...死後の世界?」

かけられた布団やベットのシーツ、着ているパジャマからもお日様の香りがしていた。部屋はオレンジと黄色の家具で統一されており、窓からは畑が見える。差し込む光の角度的に夕方だろうか。

『キイ』

外の景色を眺めていると部屋のドアが開く。そこにいたのは全身黒色の人であった。一瞬身構えたが、形は明らかな人型であり、わかりにくいが服を着ている。特に麦わら帽子が特徴的であり、手には湯気が立ち昇るスープをのせたお盆を持っている。

麦わら帽子は私の横に腰を下ろすと匙でスープを掬い、私に食べるように促す。色は黒一色であり、りんごの記憶が蘇るが私は意を決しって口に入れる。

「あ、美味しい...」

『ポタ、ポタ、、」

「違う、違うんです...」

スープが美味しかっただけではない、久しぶりに人の温かみに似た状況に触れる事ができた事が私の押さえ込んでいた感情を欠壊させた。

「ありがとう...ありがとう....」

今気づいたが私の両手には黒い包帯が巻かれ動かせない状態になっていた。麦わら帽子は喋ることはできないようだが、そっと私を抱きしめ涙を拭いてくれる。

暖かい...

私をベットに再び寝かせると麦わら帽子は部屋を後にする。私は布団を被ると、すぐに夢の世界に落ちていく。



「......あなたは幸せですね」

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