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決意2

「夢じゃなかった...」

次に目を覚ました時にはすっかり朝を迎えていた。泥のように寝たことにより体の調子がすこぶるいいのを感じる。隣には綺麗に折り畳まれた服が置かれていたので着替える。

「おはようございます..あ、いい匂い!」

着替えて部屋のドアを開けると甘い匂いが漂ってくる。麦わら帽子がこちらを向き、軽い会釈を返してくる。

「失礼します」

麦わら帽子は私に料理が並ぶテーブルに座るよう促してくる。私はなんの迷いもなく席に着く。

「いただきます!」

最後にスープが置かれると私は手を合わせ食べ始める。料理内容はトースト、ベーコン、スクランブルエッグ、ミニサラダ、カボチャのスープとジャムが数種類用意されていた。全て色が真っ黒ではあるが、形からはそう見える。麦わら帽子はトーストにジャムをつけると、見た目とは裏腹に子供のように豪快に頬張る。顔の表情は真っ黒なため判断できないが、なんとなく笑顔であるように感じた。


「ごちそうさまでした、とっても美味しくて夢中で食べてしまいました!」

私の素直な感想に対して、麦わら帽子も嬉しいのか洗い物をしている最中、ずっと体を揺らしていた。

「あの、私に手伝えることはありませんか?」

帰る方法やどうやったら真っ黒な食材を調理できるのかなど聞きたいことは山のようにあるが、今は食事や腕の治療に対するお礼がしたかった。麦わら帽子は最初遠慮する素振りを見せたが、私の譲らぬ姿勢を見て『ついてきて』というジェスチャーをする。


外に出ると見渡す限りの大草原であり、遠くの方に牛や鶏が放牧されているのが見える。昨日までいた森と違い、生えている草花はどれも青々としていた。

「うわ〜、素敵!」

その後家の横に回るとあったのが窓から見えていた畑であった。窓から見えていたのはほんの一部であり、その全容は多種多様な野菜や果実が大量にできている大規模な畑であった。

「ここから〜ここまでですね」

麦わら帽子はトマトとナスができている場所を指し示し収穫指示をしてくれる。私は手渡されたカゴに一つ一つ丁寧に収穫して入れていく。


お昼頃になると麦わら帽子が私の肩を叩く。振り向くと大きなバケットを抱えており、大草原の方を指し示す。私は急いで手を洗うと麦わら帽子についていく。

「う、生ハムとチーズのサンドイッチ....ゴクリ」

バケットに入っていたのは生ハムとチーズのサンドイッチの他に、畑で見かけた野菜類や照り焼きチキン、フルーツまであるけどどれにしようか...

「え!魚?」

驚いたことに具材には魚まであった。見つけた川には魚はいなかったため思わず声に出てしまった。その言葉に対して麦わら帽子は畑とは反対側の方を指し示す。立ち上がって見ると川が流れており動物たちが水を飲んでいた。

「あの...変なことを言ってるかもしれませんが私はこの世界の住人ではない可能性があるんです。あ!私は元は地球の東京というところに住んでいたんですが、目を覚ましたら知らない場所にいたんです。私の世界にはその....あなたのような見た目の方はいらっしゃらないので...多分異世界転移だと思うんですけど。いや、まず異世界転移が何かって話ですよね。すみませんわた......」

知性があり、私の疑問にもすぐに答えてくれるため、私はそのままの流れでこの世界から元の世界に帰る方法を聞くことにしたのだが、途中から異世界転移という言葉自体がそもそも伝わらないことに気づき、徐々に声量が小さくなってしまっていた。しかし麦わら帽子は突如として立ち上がると歩き出す。慌てて立ち上がりついて行くと、家を通り過ぎ裏手に回る。裏手は切り立った崖になっており風が吹く、かなり強い風だが麦わら帽子はびくともせず頭にのり続けている。麦わら帽子は一際突き出した崖の先端に着くとある一点を指差す。


その先にあったのは駅であった。途中で森に隠されているがレールも敷かれている。

「あれで元の世界に帰れる?」

麦わら帽子が頷いた。正直なぜそんなことを知っているのか聞きたかったが、麦わら帽子の顔が寂しそうにしていると感じた私は喉まできていた疑問を飲み込む。


夜、テーブルに並んだ料理は豪華であった。シチュー、フランスパン、シーザーサラダ、ペペロンチーノに加えてなんとピザまで並んだ。私はお腹が満杯になるまで堪能する。相変わらず色は黒いが食後に出されたりんごまで美味しかった。

「おやすみなさい」

食器洗いを2人で終わらせると、私は明日朝はやくに出るため眠りにつく。


『ドン、ドン、ドン!」

「私呪われてるのかな?」

室内の電気を消し、布団を被った時ドアを強く叩く音に目を覚まさせられる。毎回寝るタイミングで妨害されるのは不運を通り越して、もはや何かの呪いにかかっているのではないかとさえ感じる。

「あれ?待てよ、変だな」

来局なら麦わら帽子が対応するはずだが一向にドアを叩く音が鳴り止まない。嫌な予感がして部屋のドアを開けると、麦わら帽子が必死にドアを押さえていた。瞬時に状況を理解した私は何も置かれていないテーブルを持ち上げるとドアの重しにしようとすが、その前に麦わら帽子が吹き飛ばされドアが開く。

「夜分に失礼。お加減はいかが?」

現れたのは羽と角が生えた女性であった。格好はボディラインを強調するような服でありサキュバスを連想させる。ドアを破壊したのが牛であることから間違い無いだろう。

『ゴン!』

「イタッ!ちょ、何?てか誰!」

本来であれば逃げ出すのが正しい判断であるはずだ。しかし今の私には麦わら帽子を置いて行くなどという選択肢は存在しなかった。

麦わら帽子を助けて、笑顔で駅に向かうんだ。私は決意を固めると椅子を投げつけ、台所に走り出す。

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