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停車

第三十五話 停車


カン――


「視線」到着まで 3秒


車内の表示が切り替わる。


赤い文字だった。


何となく嫌な色だった。


俺はまだ後ろの扉を見ていた。


さっきの黒いもの。


あれが何だったのか、まだ引っかかっていた。


気のせいかもしれない。


でも、何か違う気がした。


「……何見てるの」


凪原だった。


俺は少し黙る。


「いや」


「何かいた気がした」


凪原は少し後ろを見る。


数秒。


「何もいない」


「……だよな」


そう言った時だった。


ガタン。


今までより大きく電車が揺れた。


同時に、車内の電気が一瞬暗くなる。


パッ。


パッ。


パッ。


明滅していた。


俺は反射的に窓を見る。


そして止まった。


増えていた。


窓の中の人だった。


さっきまでは数人だった。


今は違う。


座席全部だった。


立っている人もいる。


吊革を持っている人もいる。


車両の奥まで全部埋まっていた。


制服姿。


全員同じだった。


顔は普通だった。


でも気持ち悪かった。


全員、こっちを見ていた。


俺と。


凪原を。


瞬きもしない。


表情も変わらない。


ただ見ていた。


「……おい」


俺の声が少し低くなる。


凪原も窓を見ていた。


今までより少しだけ顔が硬い。


本を握る手にも力が入っていた。


その時だった。


ゴォォ……


電車が減速し始める。


車輪の音が響く。


窓の外の黒が少しずつ形を持ち始める。


ホームだった。


駅だった。


でもおかしかった。


人がいた。


大量に。


ホームいっぱいに立っていた。


何十人も。


何百人も。


全員制服だった。


そして。


全員、こっちを見ていた。


電車が止まる。


プシュー……


ドアが開く。


誰も乗ってこない。


誰も降りない。


でも。


ホームの人達は動かなかった。


ただ見ていた。


ずっと。


俺達を。


第三十五話 停車 終

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