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潔癖症の俺は、どうしても彼女に触れたい  作者: 四条 葵 


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第47話 潔癖症さよなら大作戦 再始動


 涼の潔癖症克服のために、澪と行っていた克服練習は以下の項目だった。


【潔癖症さよなら大作戦】

①ポジティブな思考で取り組む

②触れるものを少しずつ増やす

(以下すべて除菌しない)

 ・他人の席に座る

 ・他人のシャーペン、ノートに触れる

 ・他人のスマホに触れる

 ・他人にブレザーを貸す

 ・他人の家に行く

 ・飲み物や食べ物をシェアする

 ・他人を家にあげる

 ・他人に触れる

 ・他人と手を繋ぐ

 ・他人と


 他人を家にあげる、の項目まではクリア出来ているので、残っているのは、

・他人に触れる

・他人と手を繋ぐ

・他人と

の三項目だった。


「テスト期間もあって、克服練習お休みしてたでしょ? そろそろ続きを始めてみてもいいんじゃないかなって」

「そうだな……」


 大分他人の触った物に触れるのも抵抗がなくなり、除菌も減らせるようになってきた。このまま順調にいけば、残りの三項目もクリア出来そうに思う。


「で、結局最後の項目はどうするんだ? 以前訊いた時は、まだ考え中だとか言ってたよな?」


 涼の質問に、澪はあの時と同じように少し困ったように笑う。


「あー、うん、ね?」

「ね? と言われても」

「ま、まだ考え中なの! もうちょっと待ってて!」


 澪はこの潔癖症さよなら大作戦を、涼のために全て考えてくれている。何もかも任せきりにしている涼にとって急かす理由はない。澪の潔癖症に対する知識は、涼よりも当然のように多いのだ。


「ひとまずは! 

・他人に触れる

を少しずつチャレンジしたいね」


 澪が上目遣いで涼の様子を窺う。


「……そうだな……」


 涼にとって他人に触れることが、一番のトラウマになっている。

 幼少の頃、潔癖症の原因となったクラスメイト、秋月 穂乃(あきづき ほの)に『触らないで』と言われたからだ。


 しかし、そんなトラウマを抱えながらも、涼は『澪に触れたい』という二律背反の気持ちも持ち合わせているのだ。この項目は、慎重に進めなくてはならない。今後の涼と澪の関係を揺るがすことになってしまうかもしれないからだ。


 澪は、うーんと顎に手を当てながらゆっくりと口を開く。


「今まで人に触れるのが苦手だった涼に、いきなりじゃあ触れてみようか! って言うのはやっぱり難しいよね? 何かその前にクッションがあるといいかも?」

「そうだと、助かるな……」


 以前澪に、『涼にならどこを触られても平気』だと言われた時も、結局涼は触れることが出来なかった。触れることに抵抗があったのだろう。幼馴染という関係性が壊れることを恐れていることもあると思うが。


 それならば、直接触れる前に、何かしらのクッションがあった方が、抵抗も減るのかもしれない。しかし、その何かしらのクッションとはどういったものがいいのだろうか……。


 澪はクレープの最後の一口をぱくっと口に放り込み、唇に付いたクリームをぺろりと綺麗に舐めとった。


 そんな澪の様子をまじまじと見てしまった涼は、慌てて視線を店内に逃がす。

 ふんふん、と何か考えていた様子の澪はこう提案した。


「いきなり触れる練習をするのはハードルが高いから、手袋をはめて触る練習をするっていうのは?」


「手袋?」


「そう! まず二人共冬用の手袋をするの。それで握手みたいに手に触る練習をして、その手袋も、どんどん薄くしていって、最後は素手で握手できるようになったらいいかなって!」

「なるほど。それをクリアすれば、次の項目である、

・他人と手を繋ぐ

も出来るようになってるかもしれないってわけか」

「うんうん! なってたら最高だよね!」


 澪はにこっと笑う。

 いつだって涼のことを大事に、一番に考えてくれる幼馴染に涼は頭が上がらなかった。


「よし、それで練習してみよう」

「うんっ! 私も冬用の手袋用意しておくから、涼も冬用の手袋、箪笥から出しておいてよねっ」


 涼の部屋に箪笥はないが、衣替えしたときに衣装ケースの下の方に閉まってしまったのは確かだった。


「ああ、用意しておくよ」


 澪は涼を見て、にっと口角を上げる。


「よしっ! 潔癖症さよなら大作戦、再始動、頑張ろう~っ!」


 澪が手を天高く突き挙げる。


「おい、ここ店内だぞ」


 涼が小声で言うと、澪は「あっ!」と言って、しおしおと手を下ろしていく。


「え、えへへ~。ついいつものノリで?」


 やれやれと思いながらも、涼は「おー」と小声で小さく拳を挙げた。


 恥ずかしそうにしていた澪はそれを見て、嬉しそうに笑ったのだった。




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