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潔癖症の俺は、どうしても彼女に触れたい  作者: 四条 葵 


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第46話 幼馴染と放課後クレープ


 中間テストが終わってすぐ、六月に入ると涼達の通う津田森高校では、三者面談が行われる。生徒とその保護者、担任を含めた三人での面談だ。

 一年生の頃に行われた三者面談は、まだ入学したてということもあり、成績や進路を深く掘り下げることはなかったが、涼達二年生ともなるとそうもいかない。普段の学校での素行や態度だけでなく、多かれ少なかれ進路についての話もあるだろう。

 三者面談のおかげで短縮授業となり、毎日四限で終わるのは嬉しいことだが、進路の話となると大体の生徒が憂鬱に感じるかもしれない。


 三者面談初日。特に用のない涼は、そのまま帰ろうとして澪に呼び止められた。


「涼! 一緒帰ろっ」


 皐月は相変わらずバスケ部の練習があるようだが、澪のお菓子作り部は今日もお休みのようだった。


「ああ、帰ろう」


 涼が鞄に教科書やノートを適当に詰めて立ち上がると、そこにぱたぱたと椿姫も慌ててやってきた。


「涼くん、澪ちゃん! 私も一緒に帰ってもよいでしょうか?」


 椿姫に声を掛けられ、涼はドキッとする。

 この前の掲示板前で涼と椿姫は相当噂になっていた。今日もまた一緒にいると、何か言われるのではないかと少し警戒したのだ。


(俺が何か言われるのは別に構わないけど、椿姫さんを悪く言われるのは嫌だな……)


 しかし今日は澪がいる。最近は椿姫が澪と一緒にいるところもよく見掛けるようになった。クラスメイトは澪に好感を持っており、澪と涼が幼馴染であることも周知のはずだ。涼はそれならこの前のように噂されることはないだろうと、椿姫の言葉に頷いた。


「もちろん。帰ろうか」


 涼の返答に、澪も一拍置いて慌てたように返事をする。


「う、うん! 帰ろう!」




 四限終わりの短縮日課とあって、生徒達は浮足立ってみな帰路に就いていた。部活のない者は当然寄り道して帰るのだろう。


 澪と椿姫が何か楽しそうに話している後ろを、涼は自転車を押しながら歩く。

 そうして花屋の前のT字路に差し掛かり、椿姫とはそこで別れた。椿姫は道路を渡って弁当屋の横を歩いて行く。対して涼と澪は駅までまっすぐの道のりだ。


 椿姫に手を振った涼と澪は、並んで歩き始める。


「ねえ、涼」

「ん?」

「……最近、椿姫ちゃんとばかり一緒にいない?」

「え、そ、そうか……?」

「そうだよっ! 中間テストもあったし、勉強ちゃんと真面目にやっててとっても偉いけど、なんだか最近、涼が私のこと構ってくれてない気がする!」

「構うって……」


 確かにゴールデンウィークが明けて、中間テスト二週間前となり、潔癖症の克服練習も一次中断し、バタバタしている間に六月になってしまった。


 涼は今も少しずつ除菌を減らせてきており、精神を落ち着かせるため除菌に頼るようなことも大分少なくなったように思う。


 それも全て、澪との潔癖症克服練習のおかげなのだが、涼は幼馴染である澪への恋心を強く自覚していることもあり、あまり密な時間を作らないようにしていた。というのも、澪は涼を幼馴染だとしか思っていないのか、涼の前ではかなり無防備だからだ。そんな無防備な姿を見せられて、我慢できるほど涼は枯れてはいなかった。


(澪はきっと潔癖症の俺が触れて来るとは思っていないのだろうが、俺は澪に触れたいと何度も思ってるんだよな……)


 実行に移せたことはもちろんない。しかし、自分の理性がどこまで持つのか涼には自信がなかった。


(潔癖症とはいえ、俺だってただの高校生男子なんだぞ……)


 それを知ってか知らずか、澪はぷくっと頬を膨らませてその可愛らしい顔で涼を見つめる。


(ああ、くそっ……)


 可愛い幼馴染に、内心大きなため息をついた。


「……じゃあこれから、どこか寄って帰るか?」


 涼の提案に、澪はすっかり機嫌を直したようで、にこっと満面の笑みを浮かべて頷く。


「うんっ!」




 涼と澪がやって来たのは、津田森高校の最寄り駅の一つでもある、津田森駅前だった。

 駅前には小さな商業施設がいくつかあり、そのうちの一つ、比較的新しい商業施設に立ち寄ることにする。施設内には、カラオケやゲーセン、ファストフード店などが入っているが、二人はカフェエリアにある小さなクレープ屋に入ることにした。


 店先に貼られているメニュー表を二人並んで凝視する。


「うーん、どれも美味しそうで迷っちゃうなぁ……」


 涼の右隣でむむむと顎に手を当てて悩む澪。そんな姿すら可愛く思えるのだから、自分は相当澪に入れ込んでいるのだな、と改めて思い知らされる。


 すると澪はくるっとこちらを振り返った。


「涼は? もう食べるの決まった?」

「ああ、俺はこの抹茶白玉クレープにする」


 涼が選んだクレープは、抹茶アイスと生クリームに、白玉とあずきがトッピングされたものだった。


「やっぱり涼は抹茶を選ぶよねぇ」と澪はくすくすと笑う。


「私はこれにする! ストロベリー&バナナチョコクレープ!」


 注文を済ませ、クレープを受け取った涼と澪は、店先の適当な席へと腰を下ろす。

 抹茶アイスを一口、小さなスプーンで口に運ぶ。抹茶特有の渋みをほんのりと感じるが、甘みの方が強い。しかし涼はこの甘い抹茶も好みだった。


「美味しいねっ!」


 澪もにこにこしながらクレープにかぶりついている。

 その澪の鼻に、盛大に生クリームが付着した。なんてベタな……と思いつつ、涼はそのクリームを取ってやろうと手を伸ばし、すぐに引っ込める。


「涼?」


 涼の行動の意図が不明だったのか、澪はきょとんと目を丸くする。


「澪、鼻にクリーム付いてるぞ」

「えっ! うそっ!」


 慌てる澪に、涼はポケットティッシュを渡す。


「これで拭けよ」

「あ、ありがとう!」


 澪は照れくさそうに笑いながら、鼻に付いたクリームを拭き取り、鞄から小さな手鏡を出して自身の顔を確認する。


「えへへ……ありがとう~」と澪はポケットティッシュを涼に返してきた。

「ん」


 それを躊躇いなく受け取った涼は、そのままそれをズボンのポケットにしまう。

 以前ならこういった物の貸し借りや受け渡しも苦手だったのだが、今はすっかり気にならなくなった。相手は気心の知れた澪であるし、涼が触った物を嫌がるはずがないと、もう十二分に承知しているからだ。


 引き続きクレープを頬張る澪は、「のんびり食べてる場合じゃなかった!」と言って、涼に視線を向ける。


「涼、これからのことなんだけど」

「これからのこと?」


「そう! 潔癖症さよなら大作戦の、未達成の項目についての取り組み! だよ!」




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