第26話 side 澪
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「わっ! やばっ! 寝ちゃってたかもっ!」
五時のチャイムが鳴って、澪は飛び起きる。すっかりうたたねしてしまったみたいだ。さすがに帰らねばと慌ててスクール鞄を肩に掛けて教室を飛び出した。
昇降口にやってくると、男女の声が聞こえてくる。
「では次の勉強会はゴールデンウィーク明けですかね」
「あ、また次回もあるんだな」
「あ……、ご迷惑、でしたか……?」
「いやまさか。まだ続くんだなって、なんとなく……嬉しくなっただけ」
「よかったです!」
なんだかやたらと仲睦まじい男女の会話に、澪は少し羨ましくなる。
(いいなあ、両想いだったりするのかなぁ……)
そんなことを思いながら下駄箱からローファーを取り出そうとして。
「では涼くん、また」
「ああ、また……椿姫さん」
聞こえてきた名前に、澪は思わず手にしていたローファーを落としてしまった。
二人は昇降口を出て行き、それぞれの帰路に就いたようだった。
澪は慌てて靴を履き替えて、昇降口を飛び出した。
そこには、凛とした綺麗な姿勢で校門へと歩く椿姫の後ろ姿があった。ぱっと左を見ると、涼がちょうど駐輪場に向かって歩いていくところだった。
澪はその場で立ち尽くしてしまう。
「え…………うそ……?」
それは間違いなく澪のよく知る涼と椿姫の姿だった。
涼と椿姫が一緒に勉強しているのは知っている。けれどまだ二回目だったはずだ。こんなにも距離を詰めているなんて、澪は思いもしなかったのだ。
澪はぐっと唇を噛みしめる。
(このままじゃ、きっとだめだ……。北白河さんに、涼を取られちゃう……!)
漠然とそんな言葉が頭に浮かんで、澪は無我夢中で走って帰った。




