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潔癖症の俺は、どうしても彼女に触れたい  作者: 四条 葵 


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第14話 二人だけの秘密


「それで結局、俺はなにから始めたらいいんだ?」


 触れられるものを少しずつ増やす、という話だったが、これからなにを触る練習をすればいいのだろうか?


「澪ちゃん、そこもちゃんと考えてきましたとも! 今、涼とのトークルームにも送るね!」


 そう言った澪はさっとスマホを操作し始める。間もなくして、涼のスマホがブーっと振動した。


 澪から送られてきたメッセージに書かれていたのは、以下のような項目だった。



【潔癖症さよなら大作戦】

①ポジティブな思考で取り組む

②触れるものを少しずつ増やす

(以下すべて除菌しない)

・他人の席に座る

 ・他人のシャーペン、ノートに触れる

 ・他人のスマホに触れる

 ・他人にブレザーを貸す

 ・他人の家に行く

 ・飲み物や食べ物をシェアする

 ・他人を家にあげる

 ・他人に触れる

・他人と手を繋ぐ

 ・他人と



 澪からのメッセージには、十項目のチャレンジ内容が記載されていた。


 読む限りはそこまで難しい内容でもないように思うが、実際やってみないことにはなんとも言い難い。


 涼は【潔癖症さよなら大作戦】と書かれた項目に一通り目を通し、そして最後の項目が欠けていることに気が付く。


「澪、最後の項目なんだが、他人と、のあとが送られてこなかったぞ。コピペミスか?」


 涼が尋ねると澪は、「あ、ああ! さ、最後の項目ね!? あー、ごめんっ、まだ考え中でっ!」となにか取り繕うような変に慌てた様子を見せた。


 涼は不思議に思いながらも、まあ最後までいけるかどうかもわからないし、ととりあえず最後の項目については一旦置いておくことにした。


「こんな感じのことをやっていこうと思うけど、涼は大丈夫そう?」

「ああ、やってみるよ」


 涼の前向きな返答に、澪は嬉しそうに笑う。


「うん! 一緒にがんばろうっ! それで、」


 と澪が話を続けようとしたところで、屋上に皐月が顔を出した。


「涼! 澪!」

「皐月」


 涼と澪を見つけるや否や、皐月は駆け足でやって来る。

 澪は何故か慌ててノートを自身の背中に隠した。


「今日は屋上で食べてたんだな! バスケ部のミーティング行ってた! って、もう昼休み時間ねえじゃん! 早く食わねーと!」


 皐月は涼の隣に適当に腰を下ろすと、持ってきていたビニール袋から焼きそばパンを取り出し頬張りはじめる。


「涼ちんと澪ちんが二人で飯食ってるとか、珍しくね?」

「ああ、俺が澪を誘ったんだ」

「へえ! これまた珍しい! なんかあったん?」

「それが、」


 涼が潔癖症に向き合ってみようと思う、と皐月に説明しようとしたところで、澪が慌てたように口を挟んだ。


「そうそう涼がね! アニ森の魚図鑑見せてほしいって言うからさ~! 魚コンプリートしたいんだって! それでアニ森談議に花を咲かせてたの!」

「え……」


 澪の返答に、涼は目をぱちくりさせる。


 涼はもちろん、皐月にも打ち明けるものと思っていたので、澪が話を逸らしたことに目を丸くしてしまった。


「ほー、そうなん。図鑑コンプリートなぁ……。次回作が出るまでには、やっておきたいところだよなぁ」


 次々とパンを飲み込みながら、皐月が返答する。

 そこで五限目はじまりの予鈴が鳴ってしまった。


「やばっ! ちょっと自販機行ってくるわ!」


 そう言って皐月はまた慌てて屋上を出て行く。忙しない男である。


 涼と澪もレジャーシートを畳み、屋上を出て教室へと向かう。

 涼はそこでやっと澪に疑問をぶつけた。


「なあ澪、どうして皐月には言わないんだ? さっき話逸らしただろ?」


 澪はぎくっと肩を揺らす。


「だって……皐月くんがいると面倒なんだもん」

「そうか? 皐月は意外と頼りになると思うが……」

「えーいいよ……、この【潔癖症さよなら大作戦】は、涼と私の二人で十分! ていうか! 二人だけの秘密にしよ? ね?」


 秘密にしてなんの意味があるんだ?、そう疑問を口にする前に、澪が続ける。


「ほら、その方が潔癖症克服できたときに皐月くんへのサプライズになるし! きっと驚くよ~! 涼が潔癖症克服できたら!」

「まあ、そうか……?」


 皐月も涼の潔癖症をかなり気に掛けてくれている。克服出来たらそれはもちろん喜んでもらえるのだろうが……。


 皐月のことだ、涼と澪がなにかこそこそやっていたら気が付きそうなものである。しかし気が付いたとて、きっと皐月はなにか言ってくることはないだろう。


「ね? 涼、お願い?」


 澪がやたら甘ったるい声を出してお願いしてくるものだから、涼はそれ以上強く言えず、承諾することにした。


「わかったよ」

「やったあっ! ぜったいに二人だけの秘密だからねっ!」

「はいはい」


 真っ青な空の下、渡り廊下でくるりと回って喜ぶ澪の姿がなんだか可愛らしく見えた。




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