第11話 side 澪
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帰宅し、自室に戻った澪はそのままベッドにダイブした。
少しの沈黙のあと、がばっと起き上がった澪の顔は真っ赤に染まっていた。
「どうしようどうしよう~!! 言っちゃったよ~~~!!!」
ベッドに転がっていたアニ森の特大たぬきぬいぐるみを手に取ると、それをぎゅーっと抱きしめる。澪の豊満な胸に押しつぶされて、ぬいぐるみは苦しそうにその形を歪ませていた。
「だって! だって涼が悪いんだもんっ!!」
澪は一人、溜まりに溜まった気持ちを吐き出す。
「こっちがいつもどんな気持ちで涼と一緒にいたと思うの!? 涼が潔癖症になってから、涼の負担にならないように、涼が嫌な思いしないようにって、ずっと気にしてたのに! それがなに!? 北白河さんと過ごすのが楽で、潔癖症にも前向きになれそうって、なにそれ!?」
澪はぬいぐるみのお腹をむぎゅむぎゅと鷲掴む。
「たしかに北白河さんはいい子だよ? 可愛くて優しくてスタイルもよくて美人でお淑やか。私だって好きだもん。でも、それとこれとは話が違くないっ!? なにをしたら涼を前向きにできたっていうの? 北白河さんすごい! でも悔しいっ!!」
澪だって何度も潔癖症の克服を涼に提案しようと思っていたのだ。それ故潔癖症について色々と調べたりもした。いつか涼の心が負担にならない程度に、協力できたらとずっと思っていたのだ。
「それなのにそれなのに……先、越された……」
涼の気持ちを前向きにしたのは、自分ではなく椿姫だった。それは澪にとっては非常に悔しいことだった。
涼の前ではいつも明るく振る舞っている澪ではあるが、根はそこまで明るいというわけではない。涼がいたからこそ、澪は今の明るい澪でいられるし、クラスの人気者にまでなったのだ。
「涼はきっと……、憶えてないだろうけどさ……」
澪はもやもやした気持ちを振り払うように勢いよく立ち上がる。
「よし! もう少し潔癖症について勉強しておこう! もしかしたら涼が、克服に乗り気になるかもしれないしっ!」
澪は机に向かい、以前から潔癖症についてまとめていたノートを取り出す。
(涼のためだけじゃない。これは私のためでもあるんだから、頑張らなくちゃ)
けれど少ししてやっぱり帰りの涼の話を思い出しては、もやもやが止まらなくなる澪だった。
「あーっもうっ……! ……涼の、ばか……」




