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大賢者は何もしない ~面倒事は弟子と助手に任せる~  作者: エビテン


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ドッグラン15

賢者になる為の学業があるというのに、今は冒険者稼業だ、自分は何をやっているのだろうか?

フォルが八体の悪鬼を相手に、単騎で戦闘で勝利した……。

うち、一体は先生だったらしいが。

先生はほとんど加勢しなかったらしい……。

どうやら多数の敵を相手にフォルがほとんど自力で撃破したとの事だ。

現在、討伐依頼があった魔物と交戦状態に入った所である。

敵攻撃目標は、グレイ・クローラー四体。

(かしこ)(みどり)、すだくあしにて、所狭(ところせ)し、(まと)え 」

自分が詠唱を終えると、前面のグレイ・クローラー四体に風の障壁に巻かれ、行動が抑制された。

自分は現在、どこのパーティーにも属しておらず、臨時の外部協力者としてギルドに籍を置いている。

魔術師は数が少ない、故にその立場が許されている。

本日のパーティーメンバーが各個に攻撃を仕掛ける。

二人は片手剣に盾、一人は弓だ。

魔物四、対、冒険者三プラス、支援一。

動きが鈍らされたワニのような体格をした豚面の化け物は、危なげ無く彼等に仕留められた。

グレイ・クローラ―。

初陣のフォルに重傷を負わせた、あの魔物だ。

あの時は五体だったという……一対五、一二歳の武術を始めたばかりの少女と魔物が五体、正気の沙汰では無い……。

目の前にいる彼等は、剣士二人がビギナー、いわゆる初心者ランク、弓使いがスタンダード・ランク、標準等級だ。

複数のグレイ・クローラ―とは本来、その規模で相手をする物なのだ。

一二歳の小娘が一人で太刀打ち出来る訳が無い。

だが、あの負傷からひと月、たったひと月で悪鬼八体と立ち回り、毒は受けたものの勝利を納めたという。

悪鬼も弱い部類の魔物だが数が多すぎる、しかも狭いダンジョン内では無く視界が良好な山肌での戦闘。

熟練等級(エキスパート・ランク)でも一人で戦う事はしない。

戦闘とは出来るだけ損害を少なく、且つ、確実に勝てるように行うものだからだ。

「あんたのおかげで今回も楽が出来ましたぜ、学者様、ありがとうございます! 相変わらずいい腕だ」

朗らかに剣士は笑うが、自分は彼等とフォルと重ね合わせ、その異常性を再認識した。

とにかく、依頼は完了だ、これから冒険者ギルドまで徒歩で報告に戻る事になる。

境界線付近の山小屋での生活のおかげで、すっかり足腰が鍛えられていたのが幸いした。

冒険者ギルドはいつも賑わっている、境界線にほど近いこの地は、常に魔物の脅威に晒されている。

その一方で、それらから採取される魔石や方素材の恩恵を受けている。

自分にとってはごく当たり前の事だが、先生はこの状況は異常だと言う。

現在、我々の身の回りには、魔石を利用する魔道具や魔法素材によって成り立っている。

利用出来る物を使っているだけ、と自分は思うのだが先生にはお気に召さないらしい。

「どうしたんすか? 学者様」

先ほどの剣士に声を掛けられ、我に返った。

自分と同じビギナー・ランクというのもあり、この二人の剣士とは頻繁に依頼を共にしている。

長身の男、ミントは細身だが全体が引き締まっており、力強い戦い方をする。

一方、ボクスは平均的な体格だが身が軽く、間合いの取り方が上手い。

二人とも気さくで裏表が無く、実に気が楽だ。

そんな二人に対して、自分は素直に疑問を投げかけて見る。

「ああ、ミント、それからボクスも。そなたなら悪鬼八体を相手にどう戦う?」

思わず訪ねてしまったが、何か参考にはなるかもしれない。

彼等は一〇代後半でまだ若いビギナー・ランクだが、そろそろスタンダードに昇格する程の経験は持っている。

「地形の想定は? それともダンジョンですか?」

ミントは頭を掻きながら困惑したような表情を浮かべた、質問が大雑把すぎたか。

「ダンジョンならどう戦う?」

「当然、各個撃破ですね、狭さを利用しての。三人もいれば周囲警戒はいけるし、それで事足りるのでは?」

それでも、やはり人数は必要か……。

「では、隆起がある山肌で悪鬼が現れたら?」

「遭遇戦ですか? 敵の布陣によりますが、まず囲まれないようにする事ですね。八体ともなると前衛三人に支援の魔術師か弓使いがいれば、まあいけるんじゃないっすか?」

「悪鬼は弓を使うヤツもいるし一概には言えんだろう、支援系は二人はほしい。まずロング・レンジを潰してからだな……」

ボクスがミントの回答に口を挟む。

「いや、待ち伏せされたのだったら、切り込んだほうが早い」

ミントが首を横に振って反論をするが、ボクスは承服出来ないといった様子で眉を吊り上げた。

「それはリスクが高いすぎるだろ、敵の数が多すぎる」

何やら言い合いが始まてしまった……自分は手の平を彼らに向けて、落ち着けとなだめた。

「すまぬ、粗雑な想定をした自分に非がある。だが……其方達はビギナーかスタンダードを想定しているが、エキスパートなら単騎で対応は可能か?」

自分の問いに剣士二人はあきれ顔で腰に手を当てた。

「学者様、冒険者は一騎当千ではありませんぜ、確かにエキスパート・ランクの人達は戦いが上手い。単騎でやれない事は無いでしょう。だが基本は連携や戦術で戦うモンだ。マスター・ランクでも多勢に無勢ですよ」

マスターランクか……。

確かに彼等は一騎当千、諸外国からの要請で世界中を飛び回っている特殊職だ。

その称号を持つのは大陸では三人、うち一人はグランディル出身だが常に国外で活動している。

彼等は主に特種の魔物か、ダンジョンの主の討伐に駆り出される。

「では、エキスパートでも一人で八体の悪鬼に対応する事など無いのだな?」

二人は首を縦に振る事で、肯定を示した。

「参考になった、礼を言う」

自分は、懐の亜麻袋から五〇〇ディール大銀貨を取り出す。

「これを昼食代に当ててくれ、ではすまぬ、自分は急ぎ用が有るのでこれでお暇する」

「えー、報告書は作ってくれないんですか?」

ミントは大げさな仕草で不満を漏らす、冒険者とは分かり易い、素直に好感が持てる

「それは大賢者様に禁止された、なので其方達に頼む」

冒険者達に別れを告げると、足早に神殿にある転移陣に向かう。

ここは最前線のグランディルとはいえ、ビギナー・ランクの仕事は難易度が低い。

いや、そんな事は無い……フォルと先生は異常だ。

あの二人が境界線でどのような事をしているのか、この目で確認すべきだ。

自分は同行を要望する為に、先生の元に急いだ、今日は昼前に山歩きから戻っている筈だ。

青のローブを部屋に置くと、汗まみれのシャツを取り換える。

夏の盛りに、着て歩くようには出来ていない。

もう涼しくなるまで、ギルドに神殿のローブを着て行くのは止めよう……。

顔を知られているのだ、わざわざローブで立場を示す必要もなかろう……暑くてかなわぬ。

あんなに誇らしかったのに、まさか煩わしく思える日が来るとは。

冒険者のランクは3種類プラス1です。

ビギナー・ランク 初心者、スタンダード・ランク 標準

エキスパート・ランク 熟練者、マスター・ランク 特殊職

としてみました。

現実的に考えたら、幾つも細かく分ける必要はないように思います。

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