再会セッション ― 弦と鼓動、ふたたび鳴る ―
放課後の教室。
杏仁豆腐はフェスに向けた曲作りの真っ最中。
机の上にはコード譜、菓子パン、やる気と睡魔。
カズ「このサビ、ちょっと青臭くね?」
ユウ「青春だからな。」
タクミ「いや、青春に頼るな。」
ダイキ「“青春”って単語使った時点で終わってるからな。」
ユウ「お前らのセンスの方が終わってるわ。」
ドアが勢いよく開いた。
「やっほー! 青春やってるー!?」
全員「……え?」
昼間の転校初日、静かでおとなしそうだった“あの子”が、
今はパーカー姿でギターケースを抱え、明るすぎるテンションで立っていた。
ダイキ「……誰?」
タクミ「昼の転校生、別の人格アップデートされてね?」
カズ「昼:猫。夜:ライオン。」
ユウ「……お前、初日とのテンション差どうした?」
ヒナタはにやっと笑って、髪をかき上げる。
ヒナタ「初日くらい猫かぶるでしょ? “女子の礼儀”ってやつ。」
カズ「礼儀のベクトル間違ってる。」
ダイキ「かぶるっていうか、今完全に脱ぎ捨てたな。」
タクミ「猫がギター持って襲来してる。」
ヒナタ「フェス出るんでしょ? うちも“ハレバレ”で出るの! よろしくね!」
ユウ「お前、まだバンドやってんのか。」
ヒナタ「そっちこそ。まだギターでしょ?」
ユウ「いや、今ドラム。」
ヒナタ「は!? お前が!? リズム感、死んでたのに!」
ユウ「お前、相変わらずだな。」
その「お前」で、空気が一拍止まる。
カズ「……出た。“お前”発言。」
ダイキ「心の距離、ゼロメートル。」
タクミ「ミナミ先輩が見たら、確実に温度下がるやつ。」
ヒナタ「じゃ、久々に合わせてみようよ!」
カズ「今この流れでセッション!?」
ユウ「……まぁ、いっか。」
ギターを手に取る音。
弦の響き。
笑いながら、息が合う。
音が、懐かしさと今を同時に鳴らしていく。
──その音を、廊下の向こうで聴いていた三柱。
レイナ「やば。あの距離、恋のリハビリじゃん。」
アイカ「再燃予報、60パーセント。」
ミナミ「……お前、ね。」
夕陽が床を撫でるように差し込む。
ミナミは小さく笑って、
「……まぁ、悪くない音だったわ。」とだけ言った。
教室にはまだ音が残っていた。
フェス前の校舎で、懐かしさと熱が同時に息をしていた。




