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青春ギャラクティカ  作者: 灰色ぎつね
398/402

弦鳴る午後 ― 転校生、ヒナタ登場す ―


「いえーーい!!フェスだーーーっ!!」


昼休みの教室。

杏仁豆腐4人は机を囲み、校内フェス出場決定の勢いで盛り上がっていた。


ダイキ「優勝したら焼肉だな!」

カズ「もうそれしか言ってねぇ。」

タクミ「ユウの“湿度100%の曲”とか、絶対MCで事故るからな?」

ユウ「青春は、湿気のなかに生きてる。」

全員「知らねぇよ!」


笑いの中、風がカーテンを膨らませる。

その瞬間までは、いつも通りの昼だった。



ガラッ。

ドアが開く。


担任「転校生を紹介する。仲良くしてやってくれ。」


黒いギターケースを背負った少女が入ってきた。

陽の光が髪を縁取って、ふっと空気を変える。


「……ヒナタです。よろしくお願いします。」


その名前に、ユウの手が一瞬だけ止まった。

視線が交わる。

ヒナタ「……久しぶり。」

ユウ「あ、うん……久しぶり。」


静かだった。

それなのに、教室の温度がわずかに上がる。


カズ「え、知り合い?」

タクミ「今“久しぶり”って言ったよな?」

ダイキ「なにその微妙なテンポ。絶対なんかあったろ。」


3人がざわめくなか、マナティだけが腕を組んで、

ゆるく微笑んだ。


マナティ「……この空気、恋の残り香ね。」


「え?」と周囲が反応する前に、チャイムが鳴る。

ヒナタは何事もなかったように席へ向かい、

ユウは目を伏せてスティックをくるくる回していた。



放課後、部室。

ドラムの上に積まれた楽譜とお菓子の山。

杏仁豆腐の4人が集まり、

さっきの出来事をリプレイ中。


ダイキ「なぁ!今日の転校生!」

カズ「ヒナタ、って言ってたな。」

タクミ「お前の顔、完全に“知ってる人”だったぞ?」

ユウ「……まぁ、知ってる。」

3人「やっぱりな!!」


ダイキ「てか、お前、中学の時言ってた“ギター教えてくれた人”って……」

ユウ「うん。ヒナタ。」

全員「やっぱ元カノじゃねぇか!!!」


ユウ「元カノとかじゃねぇよ!ただ教えてもらってただけ!」

カズ「その“だけ”が信用ならんのよ!」

タクミ「お前、あの頃“音が好きだった”って言ってたじゃん。」

ユウ「あぁ。今でも、あの音は覚えてる。

 でも、恋の話じゃない。音の話だよ。」


ダイキ「フェス前に詩人やめろ!」

カズ「現実戻ってこい!」

タクミ「ヒナタ=元音の人、か……ややこしい。」


マナティが、隣の席から顔を出す。

マナティ「ま、あの空気は普通の“再会”じゃなかったけどね。」

ユウ「……うるさい。」

マナティ「でもいいじゃない。

 青春って、だいたい“再会”で壊れるんだから。」


(沈黙)


ユウ「……壊れたまま、鳴らす音も悪くないけどな。」



夕方の屋上。

風が静かに吹き抜ける。

三柱がフェンスにもたれて、下を見ていた。


レイナ「ねぇ、マナティ。ユウんとこ、今日すごい騒がしかったけど?」

アイカ「恋愛濃度が異常だったわね。」

マナティ「ユウの元カノが転校してきたの。」


沈黙。

夕陽が金色に傾く。


レイナ「へぇ、ドラマじゃん。」

アイカ「観測値:波及不可避。」


ミナミは、少しだけ目を細めた。

風に髪が揺れる。


ミナミ「……静かね。

 熱って、本気で冷めた時の方が、空気きれいなのよ。」


レイナ「それ、今のうちだけって顔してるけど。」

ミナミ「……さぁ。観測は、もう始まってるでしょ。」


校庭の向こう、部室棟からドラムの音が小さく響いた。

夏がまた、動き出す。


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