【第3巻シーモア先行配信記念3】お義兄様と学祭の学園で女たちのキーキー声をものともせずに、二人して食べさせ合いしました
お義兄様たちの媚薬騒ぎを解毒薬を飲ませて一段落した時だ。
「さて、エリ、そろそろほかの所を見て回るか?」
お義兄様が言い出してくれた。
「えっ、ここにいなくてよいの?」
私は驚いてお義兄様を見た。
「大丈夫だろう。俺がいなくても」
お義兄様は平然と言うが、
「な、わけないだろう。お前がいるいないでは集客が全然違うだろうが」
トマスさんが当然のごとく怒り出した。
「俺の代わりに帝国の皇子を二人雑用係で残していくから」
お義兄様が当たり前のようにローレンツお義兄様とマルクスお義兄様を指差しているんだけど……
良いのか?
「はあ、兄上、何を言ってムグムグ」
マルクスお義兄様が文句言い出したのを何故かローレンツお義兄様が口を塞いでるんだけど。
「どうぞどうぞ。二人で楽しんで下さい」
ローレンツお義兄様は不敵な笑みを浮かべているんだけど。
「ちょっとローレンツ兄上。なんで」
「お前は馬鹿か。ここで兄上を怒らせてみろ。明日の訓練が倍になるぞ」
「そう言うこと。じゃあ兄上、明日の訓練なしなら良いよ」
あっという間に態度を変えてマルクスお義兄様がお義兄様に言うんだけど……
「お前、余計なことを」
ローレンツお義兄様がマルクスお義兄様を睨みつけた。
最後のはお義兄様には余計な一言だったような気がするけれど、
「判った。ここの売上に貢献したらな。足手まといになっていたなんて聞いたら明日の訓練は倍にするからな」
「えっ、そんな」
「だから言うなって言ったのに」
マルクスお義兄様はローレンツお義兄様にどやされていた。
「じゃあ、トマス、この二人はどれだけ使っても良いから、後は宜しくな」
「えっ、ちょっと、レオン、待てよ!」
トマスさんの声を無視して、お義兄様は私の手を引いて教室を出てくれたのだ。
まあ、私としてもお義兄様と学祭というものを楽しみたかったから良かったけれど。
あの二人を置いていって良かったんだろうか?
まあ、ふたりともお義兄様ほどではないにしても顔は良かったし、帝国の皇子様だ。黙っていたらとても格好良く見えるかもしれないし……二人が聞いたら怒り出しそうな事を考えながら歩いていると、学園のメインストリートは屋台がいっぱい出ていて、美味しそうな匂いが漂ってきた。
「ああああ、お義兄様、美味しそうな匂いがする」
私は匂いに釣られるようにそちらに歩き出したのだ。
「うん? さっきケーキを丸ごと食べたのに、もうお腹が減ったのか?」
お義兄様がからかってきたが、
「えっ、だってデザートと他の食事は入るところが違うんだから」
「そんな訳無いだろう」
私の言い訳にお義兄様は笑ってくれたが、ついてきてくれた。
「キャー、レオンハルト様!」
「あっ、レオンハルト様。美味しいクレープがありますよ」
「焼きそばはいかがですか?」
たちどころに女たちに囲まれるんだけど、すごい人気だ。
「うーん、今日は妹に食べさせたいんだ」
「えっ?」
「妹さんって?」
女たちがキョロキョロした。
私はお義兄様の背中に隠れていたのに、あっという間にお義兄様に前に連れ出される。
「まあ、可愛らしい」
「でも、レオンハルト様に妹なんていらつしゃったっけ」
「側室様の連れ子よ」
「ああ、あのサンタルの子爵家ご出身の」
女たちが少し馬鹿にしたように私を見てくれるんだけど、私は少しムッとした。
「まあ、レオンハルト様もお子様のお相手大変でしょう」
同情したように女の一人が言ってくれるんだけど。
「君たちは何か勘違いしているようだが、エリーゼは我が父の命を救ってくれた剣聖バージルの娘だ。私は彼女の面倒は一生涯見ると剣聖には誓っているんだよ」
お義兄様が笑みを浮かべて言うが、これは機嫌が良くない印だ。
それに、私の面倒を一生涯見るとお父様と約束したなんてそんな事は初めて聞いたんだけど……
私がお義兄様を見上げると、
「エリは何が食べたい?」
お義兄様が作り笑いして私を見てくれるんだけど、
女たちの中にはいたくないし、私は外から漂ってくる串焼きの美味しそうな匂いにつられて、
「あっち」
私は串焼きの匂いのする方を指さしたのだ。
「これはレオンハルト様。お久しぶりですな」
「シェミリー、久しいな。頑張って訓練をしているか」
「はい、なんとか」
お義兄様は上級生で串を焼いている男と話しだした。知り合いらしい。
恐らく騎士志望だ。
「ところで、レオンハルト様が女連れとは珍しいですな」
ジェミリーはお義兄様が私の手を繋いでいるのを見て驚いた顔をした。
「妹だ」
「妹御と言われると剣聖様のお子様ですか」
「そうだ。母上の連れ子でエリーゼだ」
「エリーゼです」
私は頭を下げた。
「これはご丁寧に。ジェミリーと申します」
「ジェミリーは伯爵家の次男で騎士志望なんだ」
「そうなんですね。また私とお手合わせして下さい」
私が喜んで言うと、
「はああああ! お前は俺以外と手合わせは禁止だ」
「ええええ! お義兄様。なんで」
「危険だからだ。嫌なら二度と教えないぞ」
「そんな」
私はムッとした。
「レオンハルト様が自ら教えておられるのですか?」
ジェミリーさんは驚いてお義兄様と私を見比べてくれた。
「まあ、エリは剣聖の娘だ。そこそこ筋はある」
「レオンハルト様が褒められるなんて相当の腕なんですね」
お義兄様の言葉にジェミリーさんが驚いた顔をしていたが、
「褒めてはいない」
「そうよ。お義兄様はいつも厳しいことばかりしか言わないんだから」
私が膨れて言う。
「貶さないだけでも凄いですよ」
「この年だからだ。普通の騎士に比べたらまだ全然だ」
「当たり前でしょう。この年で騎士とやりあえたら天才です」
「俺はやりあえた」
「あなたは別格です」
お義兄様の自慢にジェミリーさんは呆れていた。
「はい、どうぞ」
焼いていた長い串をジェミリーさんが私に差し出してくれた。
「ありがとう」
私が取ろうとして何故かお義兄様が受け取ってくれたんだけど……
「手が汚れる」
まあ、確かに串はタレが少し付いていたけれど、そんなの気にしないのに!
私はマテをされた犬の気分だった。
「いくらだ?」
「剣聖の娘さんにはお金はもらえませんよ」
ジェミリーさんはそう言うと笑ってくれた。
「じゃあ、遠慮なくもらっておくぞ、ほら」
お義兄様がむっとしていた私の口の前に串を差し出してくれた。
「ありがとう、お義兄様」
私はそうお礼を言うとにこりとして肉をぱくりと食べたのだ。
「美味しい!」
私は満面の笑みを浮かべた。
「キャッ」
「嘘!」
「あの子、レオンハルト様に食べさせられたわ」
女どもが何か言うのが聞こえたが、私はお義兄様に食べさせてもらうのは普通だったので、きょとんとした顔をした。
「エリ、口元にタレが付いているぞ」
そう言うと、お義兄様が私の口元を手で救ってそれを口に加えてくれたのだ。
「ええええ!」
「ちょっ、ちょっと」
「あれは間接キスでないの!」
「嘘!」
「許せない」
なんか外野が叫んでいるけれど、私は無視した。
「お義兄様、タレも美味しかったのに」
私が文句を言うと、
「ほら、もう一つ」
お義兄様が食べさせてくれた。
「えっ」
「そんな!」
女たちが悲鳴をあげている。
「じゃあ、お義兄様も」
私は串を持つお義兄様の手を掴んでお義兄様の口元に持っていったのだ。
ぱくりとお義兄様が食べてくれた。
「嘘!」
「あのコレオンハルト様に食べさせた」
「あのレオンハルト様と」
「そんな」
本当に外野はうるさい!
私はちょっといたずら心を起こしたのだ。
お義兄様の口元もタレで汚れていた。
「お義兄様」
「うん、何だ?」
私はこちらをむいたお義兄様の口元のタレの部分を舐め取ったのだ。
それは後ろから見たらキスしたみたいに見えたはずだ。
「えっ」
「嘘!」
「キャッ」
「レ、レオンハルト様と」
「あの子キスした」
「ええええ!」
外野が大騒ぎするのを私達は無視したのだ。
私とお義兄様は、それからもいろんな食材を食べさせ合ったのだった。
絶好調のバカップルぶりの二人でした。
ここまで読んでくれてありがとう!
感謝の言葉もありません。
さて、この話の第三巻絶賛発売中です。
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/
連休のお供にぜひとも読んで下さい。
面白いこと請け合います。
2万字の新規書き下ろしは最終学年のお義兄様とエリーゼです。
また二人して色々やってくれます。
毎日2回更新の『男爵令嬢に転生したけど』も絶賛更新中です。
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