お腹いっぱい食べたと思ったらお義兄様の前で古代竜に拐われました
遡ること少し前、私はあまりにもお腹が減って、襟首を掴んでいたズバン王太后の手に噛みついた。
決してお腹が減っていたからじやない!
いくらズバン王太后が丸々太っているとはいえ、私は王太后を食べようなんて考えもしなかったんだから!
「まあ、あんたならやりかねないけれど」
「違うって言っているでしょ」
後でセッシーに呆れられたけれど、私は否定しているのに!
「でも、恐怖の山姥とチエナ宮廷内で恐れられているズバン王太后に噛みつくなんて事を良くやったわね。さすが無敵のエリは違う」
とか呆れられた。
まさか王太后が、嫉妬のあまり前側室の手足を切り取って人豚としてトイレに放置していたなんて知らなかった。私も聞いていたらやっていないわよ。そんな恐ろしいのに逆らったりはしない。
「どうだか?」
セッシーに疑い深そうに見られたけれど……
ズバン王太后は本当に山姥だったんだ。
でも、山姥だってそこまで酷いことはしない筈だ。
そんなのがチエナの頂点に立っているなんて許してよいのか?
やっぱりここは山姥退治をしなければいけないのではないかと私は思わず考えてしまった。
でも、今はそれどころじゃない。
王太后の手から落とされた私は、転移空間を突き抜けたのだ。
そして、眼の前にバイインの要塞都市が見えた。
慌てて障壁を張るが、なんか宇宙から帰還するスペースシャトルみたいに私が真っ赤に光っているんだけど……
これはやばい!
ウーハンの巨大要塞みたいに完全に破壊すると食料が無くなってしまう。
今回は食料がないと本当に死んでしまう。
私は被害が最低限で済むように突っ込んだ。
ドカーン
私の直撃を受けた扉は当然木っ端微塵に吹っ飛んだ。
そのまま、地面に激突する。
ドカーン
ドン
バン
ボケン
壁をぶっ壊し、地面に穴を開けて、最後は
ズボッ
と何かの間に挟まったのだ。
無事になんとか不時着した。
私はショックのあまり今回も気を失ってしまったのだ。
その私の鼻にクンクンいい匂いがしてきた。
何、この美味しそうな匂いは?
私はバッチリと目を覚ましたのだ。
この壁の向こうから臭ってくるみたいだ。
私は壁を押したのだ。
バシャーーーーン
壁が一面剥がれ落ちた。
「ギャーーーー」
料理をしていた子供が悲鳴を上げたのだ。
「ちょっと大丈夫?」
私は声をかけたが、男の子は必死に後ずさる。
「ちょっと取って食おうとなんてしないから」
私が言い訳したときだ。
グーーーー
私のお腹が盛大に鳴ったのだ。
「お姉ちゃん、お腹減っているの?」
男の子が呆れて聞いてきた。
私は真っ赤になって仕方なく頷いた。
「美味しい! これめちゃくちゃ美味しいわ! あなた天才なんじゃない」
私はそのハン少年の作っていた練習用のまかない汁を食べさせてもらっていた。
ハンは10歳でこの要塞都市で見習いコックとして働いているそうだ。
今日は休みの日だけど、この地下室でまかない料理の練習をしていたらしい。
10歳なのに凄い!
それも、この豚汁っぽい料理はとても美味しかったのだ。
お腹の減っていた私は何杯もお代わりさせてもらっていた。
「天才って、それほどでもないけれど」
ハンははにかんだ笑顔がとてもかわいかった。
「ところでお姉ちゃん、なんで壁から出てきたの?」
ハンが聞いてきた。
「ちょっと怖い山姥みたいな人に追われていて、逃げてきたのよ」
私は笑って誤魔化した。
「ふーん、そうだったんだ。大変だったね」
ハンは何も疑わずに私に食べさせてくれた。
それに服がぼろぼろだからと料理人の制服まで貸してくれたのだ。
なんで10歳の子の服がぴったりなんだろうと少し思うところはあるが、この子が大きいだけだ。
私が小さいんじゃない!
私は久しぶりにお腹いっぱい温かい料理を堪能したのだ。
「ああ、食べた、食べた」
私は膨らんだお腹を押さえた時だ。
「おい、ハン、ここに怪しい女が来なかったか?」
そこに武装した兵士たちが大挙して入ってきたのだ。
「えっ、怪しい女なんてこなかったけれど」
私は必死に顔を隠そうと下を向いたが、
「その者は、何だ?」
隊長らしき男が私を見て言った。
「えっ、いや、そう言えばこの壁壊して入ってきたけれど? お姉ちゃん、山姥に追われているんじゃなかったの?」
「や、山姥だと。ハン、余計なことを言うな。お前が言っていい言葉ではないぞ。下手したら処刑だからな」
隊長が慌てて叫んでいた。
王太后から逃げたのが早くもバレたみたいだ。
私は男達に捕まってしまった。
ハンは唖然と私を見ていた。
「有難う、ハン。お腹いっぱい食べさせてくれて」
私はお礼を言って微笑んだのだ。
そして、そのまま檻に入れられて屋上に連れて行かれた。
屋上に王太后がいるんだろうか?
でも、兵士たちは私を屋上に置くと一目散で逃げ出したんだけど……なんで?
私には理由が判らなかった。
キェェェェ
その時空からなんか聞きたくもない咆哮が聞こえた。
「えっ?」
それはまっしぐらに私をめがけて襲ってくるんだけど……
それは良く見たら古代竜だった。
嘘ーーーー!
なんでこんなところに古代竜がいるのよ?
私は檻ごと空へ連れ去られたのだ。
なにこれ?
ひょっとして私は古代竜の餌にされたの?
その時、私は遠くに懐かしい魔力を感じたのだ。
この感じは!
「お義兄様!」
私は遠くにレッドに乗ったお義兄様を見つけたのだ。
お義兄様が助けに来てくれた。
私は思わず叫んでいた。
「エリ!」
お義兄様がこちらを見てくれた。
もう大丈夫だ。これで私は助かる。
ホッとした。
でも、そのお義兄様がチエナの軍に攻撃されている。
その間に古代竜はドンドンスピードを上げてくれた。
ええええ!
これじゃあ無理だ。
「お義兄様!」
私がもう一度あげた声は少し涙にかすれていた……
お義兄様は間に合いませんでした。
古代竜に拐われたエリーゼの運命やいかに?
続きは明日です。
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