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     冷たき来訪者XVI

「高い……」


 肩を落胆させ、小さな紙袋を受け取ると、バッグの中に入れて溜息を洩らした後、彼女の元へ向かった。

 そろそろ太陽も西の山へと沈み始め、一部が隠れている状態になっていた。今年もそろそろ終わりを迎えようとしている。冬の日照時間も短く午後六時前には薄暗くなっている。それよりも前に家路についておく必要があるのだ。



 その帰り道————


 街灯の明かりがちらちらと点き始め、車やバイク、自転車のライトと混ざり合って明るさをもうひと段階明るくして視界が見やすくなっていた。

 灯真と雪菜は、雪が降る中一言も話さずに雪の道を歩く。


 ふと、雪菜の足元を見ると、物理的に不可能な足の後の深さに確信を持った。灯真の深さは大体十センチに対して、雪菜の足の深さは二、三センチ程である。まず、この異常な積もり方でこの深さはあり得ない。

 家の敷地内に入り、灯真は急に立ち止まった。

 雪菜は、灯真の後ろに立ち、振り返ると一歩後ろに下がった。


「ま、何といえばいいのかな……。まずはこれから質問した方がいいか……」


 一呼吸おいて、雪菜と目を合わせると、口を開いた。


「君は人じゃなくて妖怪ようかいだろ?」


「…………」


 雪菜は黙ったまま————


「脱衣所といい、姿が薄くなったり、そして、今、この足跡が何よりも証拠だ。人間の体重だったらこんなに浅い足跡は出来ない。それに度々、おかしな言動を言っていただろ?」


「————そうか、お前は気づいていたか……。なら、何もかも隠す必要は無かろう。見破った褒美として、私の姿を見せてやる!」


 そのまま雪菜は宙に浮かび、全身から溢れ出すに光に包まれて仮の姿から真の姿に変えた。

 白い着物、水色のマフラー、薄水色の髪、水色の瞳、肌を白く美しい。彼女は雪が似合う妖だ。


「あと一つ、忠告でもしておこう。あやかしに妖怪と言うのをやめておけ。妖の中には私と違って、穏健おんけん派がいるからな……」


 灯真を上から睨みつけて、そう言った。


「分かった。それは何も知らなかった俺が悪かった。最後に渡したいものがあるんだが……いいか?」


「……よかろう。で、その渡したいものとは一体なんだ?」


「これだよ」


 灯真はバッグの中から先程買った紙袋を彼女に渡した。

 受け取った雪菜は、中身を開けると顔色や表情を変えずに中からヘアピンセットを出した。


「…………」


 これを渡して、灯真は何をしたいのか理解ができない。


「それ、君にあげるよ。俺には勿体ないからな。要らないならどこかに捨てておいてくれ」


「ふん。人の子に貰った物など要らないわ! でも……一応有難く受け取っておこう。これを言うのも嫌だが……『ありがとう』とでも言っておこうか」


「ああ、それだけでいいよ。じゃあ、俺も『ありがとう』と言っておくよ」


 照れ隠しをする雪菜に対して、微笑みながら灯真は礼を言った。


「なんで、例を言う……」


「なんでって?」


「私は用が済んだら、お前を喰らって、力を取り戻そうとしたんだぞ! まあ、今も狙おうと思えばやれるけど……」


「知っていたよ。その妖力は昨夜感じた妖力だってことは……。だが、君は俺と共に行動したとしても一度も襲おうとしなかった。それはなぜだ? どこかに心残りでもあったのか? 人を恨んでいることは知っている。俺はそんな妖に何度も襲われ、殺されそうになったからな。それでも君は、恨みを持ちながら俺を殺さなかった。つまり————」


 そんな時だった。

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