冷たき来訪者XV
「そうだな……。明日は特に居たくないな。親戚中が集まるんだよ」
灯真は少し困った顔をしながら作り笑いをした。
少しずつ自分の話を雪菜に話をして、心が和らいでいった。
しばらくすると、料理が灯真達の前に並べられた。どちらもおいしそうで一つ一つの手間が掛かっているのが完成度から感じられた。
「人ってこんなものを食べるの?」
「え、まあ、うん……。食べたことがないのか?」
「うん……」
おかしな人だな、と灯真はみそ汁を飲みながらそう思った。
二人は黙々と食べながら一言も会話をせず、しんみりとしていた。
周りはガヤガヤと騒いでいて、その雑音が耳に入ってくる。楽しそうな家族の会話。自分には、そんな大それたことなどできるとは思えない。
二人は食べ終えると、灯真は受付で支払いをして、施設内をゆっくりと歩き回った。食後の卓球、ゲームセンターなど遊ぶところを回るのが多かった。
「ねぇ、あそこは何なの?」
「あそこはお土産屋だよ。雪菜は、本当にここの地元の人なのか?」
「うるさいわね! しょうがないでしょ、来たことが無いんだから……」
頬を赤らめながら、灯真の頬をつねった。
「いたっ! 何するんだよ!」
「分からないなら自分で考えるといい。それよりもちょっと中を見てみたい……」
雪菜は、物珍しそうにお土産屋を見つめている。
それを見ていた灯真は微笑みながら合図を送り、彼女のために寄り道をした。
ご当地キャラのキーホルダーやお菓子、服、ハンカチなどの日用品で使うことができる物ばかりが置いてあった。
その中で雪菜は、一点の品に目を引き寄せされていた。
六枚の白花弁をもつ花の形のヘアピンセット————
彼女の容姿だったら絶対に似合うだろう。
今日のお礼にプレゼントを贈るのも悪くない。照れくさい所もある。
「何か欲しいものでも見つけたのか?」
遠回しに雪菜に訊いてみる。
「ううん。可愛い髪飾りだと思っただけよ」
「そうか……。俺、欲しいものができたからレジで買ってくる」
白々しく、そう言いながら彼女の前を通る時に左手で素早くヘアピンセットを手に入れる。
そのまま、安いキーホルダーを適当に選んで列の後ろに並ぶ。
灯真が持っているヘアピンを雪菜は知らずに他の品を見ている。
「あれ? ————今、姿が薄く見えたような……」
灯真は、目をこすりながらもう一度彼女の姿を見る。やはり、彼女の姿が薄れて見えるのだ。
「そうだったのか……。雪菜は人じゃなくで……」
ホッとした気持ちと、少し残念な気持ちが灯真の心の中を駆け巡る。
このまま気づかないふりをして、最後まで同じ人間として付き合った方がいいのか、きちんと彼女に訊いた方がいいのか、迷ってしまう。
レジで精算してもらい、金額を確認する。
ヘアピンセット・二千円————
値段を確認しないまま、勢いよくその場の流れで手にしたものが二千円という未成年には高額な値段だった。
最初は驚きを隠せずにいたが、出したものは仕方がない。取り止めようにも後ろには並んでいる人たちがたくさんいる。それ店員を困らせるのに悪気を感じた。息を呑んで、手を震えさせ、ゆっくりとお金を数えながら置いていく。




