冷たき来訪者Ⅻ
「ん? 誰だろう……」
鳥居の前で立ち止まると、そこには可愛らしい少女が座っていた。
例えるなら雪の中で力強く生き抜いて咲いている一輪の花のような感じだ。黒髪ロングに水色の瞳、地元の学生服を着て、首にはマフラーを巻いていた。
今まであった人との中で雰囲気が違っていた。
目が合うと、灯真は目を逸らしてそのまま階段を上ろうとした。
「あなた、ここの地元の人? それにしては寒そうな表情をしているわね」
と、少女が話しかけてきた。
「いや、母親の実家がここだから帰郷しただけだけど……」
「へぇー。じゃあ、この神社に何のようなの? よっぽどのない限りこの神社に近づこうとする人はいないわよ」
「なんで? ここは神様を祀っている場所だろ?」
灯真は足を止めて、少女の目を見て問う。
「そう、ここは昔、ここの山の神様を祀っていたところなの。でも、時代の流れでその信仰心は薄れていった。信仰心が無くなったらその神様はどうなると思う?」
「他の地に移動するか、そのままその地で終わりを迎えるのを待つ。この二択か?」
「後者は、大体あっているわ。信仰心が無くなった神は、その自我を保つことが出来ずに消えていく。でも、ある例外では穢れに陥って悪の強い妖になるっていう噂があるの」
少女は不敵な笑みを見せてそう言った。
彼女は、どこまでそれを知っているのか。その話が本当なのか。灯真は、半信半疑で聞いていた。
「それは本当なのか? それに君は妖怪が見えるのかい?」
「いいえ。私には見えないわ。これはある人から聞いた噂話よ。ま、それを信じるかどうかはあなた次第だけど……」
「あ、そう。それでも俺には関係のない事だ。お参りはさせてもらうよ」
「やめておいた方がいいよ。……そうだね、私も暇だからついて行くとしましょうか」
少女は頭に積もった少量の雪を払い除けて、ゆっくりと立ち上がった。
「いや、俺に付き合う必要なんてないよ。それにお参りが済んだらすぐに行く場所があるんだけど……」
「だったら最後まで付き合う。いいでしょ。大晦日で何もやることが無いから昼間からこうして時間が過ぎるのを待っているんでしょ?」
「い、いや、だから……」
「はい、もう決まり。じゃ、行こうか」
少女は楽しそうにしながら階段を登っていく。
灯真は、溜息をつきながら彼女の後をついて行く。
空には雪雲が西の空から見え始めた。今夜もまた、降りそうな予感がした。
階段を登り終えると、参道のそばにある身を清める場所の手水舎で手を洗う。水が冷たく、しもやけ症状になりそうだ。少女は平然と手を洗っていた。
小さな拝殿の前で賽銭箱に財布から出した五十円玉を入れ、手を合わせて願い事を唱えた。
彼女も隣に立って一緒に手を合わせる。
何を願っているのだろうか。さっきまでこの神社の事をあまりいいとは思っていなかったはずだ。でも、お参りするときはしっかりとするらしい。
「それじゃ、次に行くとするか……」
「どこに行くの?」
「本屋に行ってから温泉に行き、そして、家に帰る予定だが……」
「温泉……」
「どうかしたか?」
「あ、いや……。何でもないよ。ほら、この地域での本屋といったらあそこに見える本屋のことでしょ?」
少女は慌てて指をさして言った。




