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残された人類は、外の世界に夢を抱く  作者: Regulus
1章〜王女と7人の戦士〜
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荒野の民家/新天地

 皐月の献身な介護により空の容体はみるみる良くなり、次の日には軽い運動をできるまでに回復した。

 気がつけばすでに翌日の夕方になっていた。

「お体の方大丈夫ですか?」

「おかげさまで、この通り」

 空が陽気に腕を振り回すと、痛みに耐えきれずその場で悶絶してしまう。

「まだダメじゃないですか」

「そうだったみたいだな」

「全く、私が医者じゃなかったらどうしてたつもりなんですか?」

「え?君医者だったの!?」

「そうです、私は医者なのです」

 自信満々に胸を張る皐月の姿がおかしく空は思わず笑ってしまった。

「何がおかしいんですかっ!」

 皐月は笑う空の背中を勢いよく叩く。

「痛ったい!何すんだよ」

「いいえ?何も?」

 しらを切り、よそを向く皐月は口を尖らせ下手な口笛を鳴らしていた。

「そうだ、もう俺行かなきゃ」

「何言ってるんですか、まだダメですよ」

「君が言ったんだろ明日には出れるって」

「あくまで憶測の話です。絶対ではありません」

 そう言った皐月は晩御飯の支度を始める。


 皐月がご飯支度を始めようとコンロの火をつけようとすると、そのコンロの火はつかず皐月は困惑する。

「あれ?」

「どうしたんだ?」

「いや、火がつかなくて」

 皐月がひねりを回すも、かすれた音しか出ず火はつかなかった。

「どれ、見せてみろ」

 空がコンロの様子を調べると、原因がわかったのかコンロの周りをいじり始める。

「すごい、そんなことできたのね」

「まあな、元々旅をしてた時は機械いじりばかりしていたからな。よし、これでどうだ?」

 皐月がひねりを回すと、元どおり火がついた。

「ありがとう!これでご飯支度ができる」

「いいや、構わないさ。そうだ、他に直して欲しいものはないか?」

「そうね、いっぱいあるからご飯のあと言うわ」

 そう言い、皐月は晩御飯の支度を進める。

 その手際はやはり見事なものであり、あっという間に食事が食卓に並んだ。


 食事中の話はお互いの好きなものの話や、空の旅の仲間達の話が多かった。

 趣味思考の違いはあるものの好きなものを話している二人の顔はいつもにこやかだった。

「そうだ、機械いじりが好きなんでしょ?」

「そうだな、ある程度好きかな」

「なによある程度って」

「ある程度だよ」

 微笑む皐月の顔を見るとやはり空の顔は赤くなり、空は皐月から目をそらす。

「そっか…ねえ、やっぱり今すぐ戻りたい?みんなのところ」

 皐月からの唐突な話に驚き空は顔を上げる。

「なんだ唐突に」

「いや、いつも話に出てくるからさ、戻りたいのかなって」

「そうだな…」

 空は暫く考え返事を返す。

「それは戻りたいけど、今は怪我のこともあるし、何より皐月の頼みを終わらせることが優先だからな」

「…そ、そうなの…」

 空の返事を聞き皐月は少し頬を赤らめる。

「さ、さあ。早く食べて空にはこれからビシバシ働いてもらわないといけないからね」

「そうだけどどうしたんだ?顔が赤いぞ?」

 皐月は目の前のご飯を勢いよく平らげ食器を流しの方へ運んだ。

 その姿を不審そうに見届け自分も食器を片付けた。


 所代わり空と別れた海斗達は、日が暮れる頃に街へと着いていた。

 街自体はそう大きくなく、人も賑わっていた。

 手分けし、足早に宿を決め食事をしていた。

「空大丈夫かな?」

「んあ?大丈夫だろ」

「あんたはちょっとは心配しなさいよ」

 食べ物で口を満たし、口の横に食べ残しをつけた海斗がなんのことかとポプラの方を向く。

「ちょっとは食べ方気をつけなさいよ」

「俺のことか?」

「あなた以外に誰がいるのよ」

 空がいないことを除いてはいつも通りの様子の一行は、この街の雰囲気がおかしい事に気が付き始めていた。

『マスター本当にこの街大丈夫なんでしょうか』

「そうね、街の人々の様子がおかしい」

 周りの人々は皆帽子をかぶり誰一人としてその帽子を取ろうとはしなかった。

 それはまさに何かを隠すように。

「そろそろお会計してちょうだい?」

「ポプラが払えよ」

「私は無駄なことにお金を使いたくないのよ。さあ払って」

「ったく仕方ねーな」

 海斗がウエイトレスを呼び支払いをする。

 ポプラはその間無防備となったウエイトレスのバンダナを取るとそこにはあるものがあった。

「なるほどそう言うことね」

 ウエイトレスのバンダナの中には二本の角のようなものがあった。

 角を見られたウエイトレスの少女は持っていた伝票を落としその場から走っていなくなってしまった。

「なんだったんだあれ」

「…角だった…」

 海斗が店内の人々を見るも皆海斗から目をそらしそそくさと店から出て行ってしまった。

 その姿を見届ける海斗達の元へ一人の男がやってくる。

 男の頭にはやはり大きな二本の角があり、男は角を隠そうとはしなかった。

「お客さん困るんですよねそう言うことをされると」

「一体どう言うことだ?」

「お客さん普通の人間でしょ?ここの人たちはね、あなた方普通の人間が怖いんですよ」

「だけど、この街はあなた達の言う普通の人間を受け入れてる様子よ?」

 ポプラは、さらに探りを入れる。

「それはそうだよ、俺たちは普通の人間にこのツノさえ見られなければいいからな。今までの旅人はこの角を見るなりその場からすぐに逃げてしまったんだ。時にはその角欲しさに俺らの同胞を殺したりもした。そんなことを経験してるんだ恐れて当然だろ」

「だけど俺たちはそんなことはしない」

「そりゃあ、にいちゃん達が悪いように見えないのは門番がこの街へ通した時点でわかっている問題だ、だがな、あまり公の場でそんなことはするなよ」

「どうしてだ?」

「さっき話した角を狙いにくる連中、俺たちは勝手に『角狩り』と呼ばせてもらってるが、この街にはその角狩りを憎んでる奴らが少なからずいるんだ、もしそいつらに見つかったらあんたらは間違いなく殺される。いいか、これは警告だ、くれぐれも変なことは起こすなよ」

 店主の男の話に思わず息を飲んだ一行は会計を済ませ、宿へ戻る。

 話が伝わるのが早かったようで、街の人々は、一行を見るなり目をそらし、空いている窓は締め切られてしまう。

「くそ、あのおっちゃんが言ってたのは間違いじゃなかったのか」

「そうだけど、それでもおかしいわね」

「考えてても仕方がないから早く宿へ戻るわよ」

 リーチャオに言われ一行はそそくさと宿へ戻る。

 一行は店主に言われた通り余計なことをしないよう、静かに宿で夜を明かした。

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