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残された人類は、外の世界に夢を抱く  作者: Regulus
1章〜王女と7人の戦士〜
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牛達の荒野

 一行を乗せた車は、何もない荒野をただただ進んでいた。

 何もない荒野に鳴り響くエンジン音は、遠く遠くへと響き渡り周りの動物たちを引き寄せた。

「ここら辺は動物が多いんだな」

「…クローンだらけだがな…」

 口数の少ないヘンリーが口を開くときは過去の話題が多い。

 しかし、過去に限った話ではなく今の話をすることがある。

 その時に限って大体良くないことが起こることを一行は知っていた。

「な、なあ」

「どうした海斗。運転代わって欲しいのか?」

「それはない。それより後ろから何か来てないか?」

「後ろ?」

 全員が後ろを振り返ると牛の大群が一行を乗せた車を追いかけて来ていた。

 海斗はアクセルを踏み最高速度を出すが、牛の足の速度にはかなわずそれらはすぐそこまで来ている。

「海斗!追いつかれるよ!」

「わかってるけど、これ以上のスピードはでねーよ!」

「全く仕方ないわね、そこのギアを1番下まで下げなさい」

「そんなことしたら」

「良いからやるの」

 ポプラに言われた通りギアを1番下まで下げると車の速度がみるみる早くなっていった。

「すごいじゃない!これなら逃げ切れ…」

「そう簡単じゃないのよ、持ってあと2分くらいかしら」

「それじゃあすぐ追いつかれるぞ!」

「…よく見ろ、あの牛たちを…」

 牛の姿を見ると、その全ての鼻に鼻輪が付いていることが見てわかった。

「なるほどそういうことか」

「どういうことだ?」

「牛にとって鼻は弱点なんだ、だから牧場主は鼻輪を付けてそこにロープをくくりつけて軽々しく牛を運べるんだ」

「ってことは、あの牛達の持ち主が何処かにいるのか」

「ご明察。だが…」

「なんだよ」

 空は辺りを見渡すと、そこには何もない荒野が広がっている。

 そこには人の気配はなく、もちろん集落がある様子もうかがえない。

「見ての通りよ、ここには人っ子一人すらいないのよ。それくらいわからないのかしら」

 逃げているうちに2分が経過し、車の速度がみるみる落ちていく。

 その感覚を感じた海斗がギアを戻すも速度は一向に変わらず牛の元へ車が近づいていく。

 牛の中の一頭が車めがけて飛び込んでくる。

 牛の体は横にそれるものの一行に状況は変わらずにいた。

「くそ!もっとスピード出ないのか?」

「やってるがどうも出ない、嬢ちゃんどうにかならないのか?」

「全く失礼なやつね。それなら後20秒くらいでクールタイムが終わるからそれまで耐えるしかないわね」

「全く無茶言うよ」

 再び牛達の中の一頭が車へ飛び込んでくる。

 その軌道は明らかに空達の頭上をめがけている。

 牛が頭上へ落ちてくるのと同時にヘンリーが拳一つで牛を遠くへ殴り飛ばした。

「…後ろは任せて運転しろ。なぜなら俺は牛程度なら殴り飛ばせるからだ…」

「俺も行く」

 走る車の中リーチャオと空が席を入れ替えると再び牛が頭上へ落ちてくる。

 ギリギリで空がその牛を飛ばすも、空の体は車から投げ出される。

 かろうじて片腕で車を掴むも、その体は外に投げ出され牛達の格好の的となってしまった。

「くそ!ヘンリー!引き上げてくれ!」

 ヘンリーが空の手を握ると同時に牛が空の体を捕まえ後ろへ引きずっていこうとする。

 それに耐えきれなくなった空は車を掴んでいた手を離してしまう。

「空!」

 牛達は空をその場へ置き去りにし、車を追いかけて行った。

 空は各々と別行動となってしまった。


 牛から逃げる車に一本の無線が入った。

『…おい…聞こえてるか?…』

「空からだ!ポプラ対応頼む」

「全く人使いが荒いのよ。聞こえてるわ」

 雑音の混じる無線に対応するポプラ。

『…よかった…俺は無事だからお前らは先に街へ向かってくれ…すぐに追いつくから…』

「大丈夫じゃなさそうだけど、取り敢えずわかったわ。先で待ってるから早くくるのよ、良いわね?」

『…わかった…必ず追いつ………』

 最後の言葉も聞けずに無線は途切れた。

 無線が途切れると同時に、後ろの方から爆発音が聞こえてくる。

 牛達はその爆音につられその方向へ走って行ったことにより、車に乗っていた者は助かった。

「どうやら逃げきれたようね」

「これからどうするの?」

『そうですね、空殿を迎えに行きますか?』

「それはダメだ。あいつが先で待ってろってんだから俺たちはそうするしかない」

 海斗の回答を受け入れ、車は空を待つため次の国へ向かった。


 車から投げ出された空は無線を切ると、ポケットに入っていた手榴弾をそ奥の方へ投げ起爆させる。

 手榴弾は爆発し、大きな音を響かせる。

「頼む、これでうまくいってくれ」

 空の思惑通りに牛達は音のなる方向へ進路を変え走り出した。

 その姿を見届けた空は立ち上がり辺りを見回す。

 辺りを見回すと東の方角に一軒の民家技あることに気がついた。

 空は腰につけていた刀の鞘を杖代わりにし、その民家を進んで行った。


 民家まではそう遠くなく、數十分で着いた。

 ドアをノックすると空は力尽きその場に倒れてしまう。

 そのドアの中からは一人の少女が出てきた。

「はーい、どちら様ですか?ってうわぁ!」

 少女はガスッという音ともに空の体をドアで引いてしまい、空の存在に気がついた。

「大変こんなにボロボロに、一体何が…それよりも早くうちの中に入れなきゃ」

 少女はそのか弱い腕で精一杯に空を引っ張り家の中へと入れた。


 少女が民家へ空を入れてから2日後空は目を覚ました。

「うぅぅ…」

 目を覚ました空は無理矢理体を起こそうとする。

「嘘!目覚ました?」

「ここは…?」

「無理に体を起こさないで取り敢えずこれを飲んで」

 空は少女に助けてもらい体を起こし、水を飲む。

「どう?落ち着いた?」

「ああ、ありがとう…」

 空が目線を上げるとそこには美しく可憐な少女がいた。

 空は少女を見るなり顔を赤らめた。

「どうしたの⁉︎まだ体調悪いの?」

「いや、大丈夫。それよりもここは?」

「あなたがここにきたんでしょ、ここは荒野の中のただの家」

「君は誰?」

「私が誰かよりまずはあなたが誰なのか聞かせてくれないと」

 少女にいわれ空は照れ臭そうに自己紹介をする。

「そうだな。俺は空、旅をしてる年齢は18歳だ。それで君は?」

「見てわかるでしょ?私はここの家主、名前は皐月。年齢はあなたと同じ、職業は…」

 このままでは話が止まらないと感じた空は皐月の目の前に手のひらを向け、話を止める。

「皆まで言わなくて大丈夫だ。それよりも助けてくれてありがとう。俺はどのくらい寝ていた?」

「ざっと2日くらいかしら」

「そうか、なら急がないと」

 空が立ち上がろうとすると鈍い痛みが身体中へ伝わる。

 その痛みに耐えかねた空は再びベットに倒れてしまう。

「無理しないほうがいいよ、あなた全身打撲してるんだから、早くて後1日は安静にしてないと」

「そうも言ってられない、この先の街で仲間が待ってるんだ」

「それでもダメ、治るまでここにいていいから」

 渋々状況を受け入れた空は、ベットの上に座りこむ。

 表立った表情や行動は穏やかな空は、心の中だけは穏やかではなかった。

 皐月は、空をベットから立ち上がられる手助けをし空を椅子に座らせる。

「簡単なものだったら作れるけど食べる?」

「お願いします…」

 たどたどしい空の様子を外に皐月は食事の支度を始めた。

 その姿に空は不思議な感情に見舞われた。


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