砂漠の遺跡:C
「ヘンリー、お前一体何者なんだ?」
空の口から、今までの信頼関係を吐き捨てるような言葉が発せられた。
海斗はその場で言葉を失い、リーチャオはただその姿を呆然と見ている事しか出来なかった。
「答えろよ、なあ!俺達の事騙してて楽しかったか?」
怒りに身を任せ、罵倒を浴びせる空。
空の言葉を信じられない海斗が口を開いた。
「そ、空?何言ってんだよ、こいつはヘンリーだ、まぎれも無く今までそんなに長い時間じゃあ無かったが一緒に度をして来たヘンリーだ!それともなにか、こいつがあっち側だとでも言うのか?」
「そう言う事だ」
「そんな訳無いだろ。こいつは俺らと同じだ」
「これを見てもそんな事言えるのか?」
海斗の目の前に一枚の写真がだされた。
そこには人工的に生きながらえさせられているヘンリーの姿が写っていた。
「何だよこれ。これが何だってんだよ!何だよ、ここに写ってるヘンリーが本物だって言うのか?」
「ああ」
「嘘だろ?またそんな事言って俺を騙そうってんだろ?ヘンリーもそうなんだろ?な?」
「........」
「おい、ヘンリーなんか言ってくれよ。どうして俯いてるんだよ」
「そりゃあ言えないよな。自分がそっち側だったんだからな」
「おい!空!お前は黙ってろよ!」
黙って下を向いたままのヘンリー。
空は海斗の大声に驚き頭の中がいっぱいになってその場で言葉を失った。
「二人とも落ち着いてよ!今はヘンリーから話を聞かなきゃ!」
「なあ、空、お前はどうなんだよ。どうなのか言ってくれよ」
「ねえ、いい加減海斗も落ち着いてって!」
「あんたは黙ってろ!」
海斗を沈めようと近寄るリーチャオを突き飛ばした。
「きゃっ!」
「おい!海斗!何してんだ!」
「すまない。やりすぎた」
その空間にはしばしの静寂が走り、いつしか流れる砂の音すらも鮮明に聞こえていた。
「いい加減なんとか言ったらどうなんだ」
「お前まだそんな事言って...」
「はあ、とうとうバレちまったか。仕方ない、降参だ。いいぜ、話してやるよ。だが、その前に空、お前はどこまで知っているんだ?」
あきらめたように空へ問いかける。
「いいだろう。ただ俺の記憶の流れ通りに話させてもらう」
空は、遺跡内で撮って来た写真を一度眺め話を始めた。
「俺達はこの遺跡のようなこの場所を探索して来た。中にはただただ廊下が続いてるだけだったりしたんだが、そこである部屋に当たったんだ」
「ある部屋?」
「ああ、そこはまるで何年か前まで誰かが生活していたかのような生活感があったな。そこには多くの書類が散乱していた。リー、あれまだ持ってるか?」
「ええ、あるわ」
リーチャオが空へそこそこの厚さの書類を渡した。
「この書類なんだか分かるよな、ヘンリー」
「ああ、分かる。それは俺が書いた物だからな」
「何だよそれ、貸せ!」
海斗が空の手から乱雑にその書類を奪い取り中身に目を通した。
企画書の名前や、発案者、そしてその資料に書かれていた真実。全てが今までの信用崩すきっかけとなってしまった。
「じゃ、じゃあ。空おまえ、ヘンリーがあの科学者だって言うのか?」
「いや、そうじゃない。以前こいつが話をしてくれたよな、科学者は自分の子どもをクローンにして生き返らせたって、そして俺達を襲ったあの女のマスクも覚えてるか?」
「覚えてるさ、だけどよ生き返らせたのは娘だろ?だがこいつは...まさか!」
「おそらくな、海斗、そいつの顔を引っ張ってくれ」
海斗がヘンリーの顔を引っ張ると、それはマスク状になっており中から一人の女が出て来た。
「それが本当のお前の顔か。お前は一体誰だ?」
「私はエミリー・アルフィート。ヘンリーの娘から作られたクローンだ」
「やっぱりな」
空は自分の予想が当たっていた事を確認すると、再び話をし始めた。
「どうして、父親の名前を名乗っていた?」
「その方が都合が良かったからさ。エミリーって名前はクローン達の中じゃ知らないやつが居ないからな」
「次にだ、どうしてあんたはクローンの反応が出ないんだ?」
「そんなの簡単だよ。私は純粋な完成品。他の奴らは模造品なだけさ、模造品の奴らの脳はコンピューターで出来てるから反応が出る。それと反対に私の脳は純粋な人間の脳で出来てるから引っかからないってこと」
「次で最後の質問だ。なぜ俺達に近寄った?」
エミリーが深くため息をつく。
「ああああ!メンドクセーな!考えたら分かるだろ。私はあんたらを利用して私の目的を達成しようとしてたんだよ」
「なるほどな」
空が納得すると四人の背後からコツコツという足音と共に一人の男が近寄って来た。
「やっと見つけましたよ。プロトタイプ。もう逃げられません」
異様に背の高いその男は、じわじわとエミリーの元へと近寄ってくる。
エミリーを縛っていた縄がほどけ腰に着いていたピストルをこめかみの方へと持って来た。
「それ以上近寄らないで!それ以上近寄ると、今ここで死ぬわ!」
「やめろ、エミリー。私も手荒な真似はしたくないんだ」
「手荒な真似だ?今は俺達がこいつに話を聞いてるんだ!あんたこそ近寄るんじゃねー!」
男に殴り掛かる海斗はいとも簡単に投げ飛ばされてしまった。
「海斗!」
「大丈夫だ空、ただのかすり傷だ」
起き上がれずその場で倒れる海斗の事を男は、冷たい目で見ていた。
「ゴキブリ風情が私に触れないでください。さあ、行きますよプロトタイプ」
「いやよ!」
「ああー、こっちが下手に出てればそんな事を、これだけは使いたくなかったですが仕方ありませんね」
「な、何よそれ。うっ!」
男はコートのポケットの中から取り出した注射器をエミリーの首もとへさした。
注射器の中の薬が体内へ注入されるとエミリーは死んだように気を失いその場に倒れた。
男はエミリーを担ぎ砂漠の中へ歩いていく。
「おい!まてよ!あんた一体だれだ?」
空が引き止めるように質問すると、男は淡々と返答した。
「はあ。ゴキブリ風情に名前を教えるのは癪に触りますがいいでしょう。私の名前は『エイジス』。まあ、今後会う事もあるかもしれない。その時はよろしく頼みますよ」
そう言い残し、男とエミリーは砂漠の中へと消えていった。




