バター
ピピピッ、横になってる女の子の脇からその音は聞こえた。
その同時に留都は脇に挟んである体温計を手に持つ。
画面に表示されてるのはエラーの文字。
「おかしいなー」
変に思いもう1度脇に挟む。
先程まで外で雨に濡れて倒れていたのだ。
風邪を引いたら危ないと思ったので、その対策として出来ることを始めていた。
あれから時間は経ったが倒れた女の子はぴくりともしない。
まじまじと見つめるが、その先には黒上ロングの美少女が横たわっている。
玄関先で起こった出来事を思い出せば瞳の色は真っ赤な色をしていた。
一体女の子は何者なんだと考える。
確か、ターゲットとかナイフのことを言って、自分の身に危害を与えようとした。
本来であれば警察に連絡する案件だ。
だが、留都はそんなこと一切しなかった。
警察に渡す前に女の子はずぶ濡れで目を覚まさないのだ。
案件より女の子の命のほうが大事であろう。
誰でもそう思うはずだ。
ザーという外から聞こえる雨音はやがて聞こえなくなりじきに太陽が顔を出した。
まだ暑い時期でもあり今の時間帯は1番日差しが強いのでエアコンで部屋を涼めるしかない。
留都は学校帰りでもあり夏の温度で体力を消耗していた。
女の子は眠っている。
自分も疲れてるし同じように寝ようかなと横たわる。
エアコンの涼しい風も当たり気持ちいいと解放感に浸ってるとすぐさま寝息を立てた。
それから何分経ったであろうか。
お腹に圧迫感を感じ呼吸が苦しい。
うーとうなされながら目を開けるとその先には先程まで横になっていた女の子が腹部にまたがりナイフを持っていたのであった。
「うわっ」
「どうやら起きたようね、もう2度と目を覚まさないようにしてあげる」
きらりと尖った刃物を見せつける。
「ちょ、ちょっと待って。まず話をしよう」
女の子は首をかしげる。
「話?」
「そう、話。まずは起きさせて」
留都は1つ提案をした。
いつまでも横になりお腹に座られると息がしづらいのだ。
女の子は留都のお腹から離れると横にちょこんと座った。
「ふぅ、助かった」
「まだ助けたわけじゃない、あなたはターゲット」
相変わらず変なことを言ってくるなと思いつつ、留都は会話を試みる。
「まず、自己紹介から。あなたの情報を教えてください」
クスッと笑い、女の子は答えた。
「獲物に情報を教えるわけないでしょ、あなた相当バカね?」
バカにされ留都はイラッともきたがそのまま会話を進める。
「私は縁起留都、隣の街の高校に通っていて1人暮らししてます。好きな食べ物は桃缶、嫌いな食べ物はゴーヤとアボカド。それから料理作りが好きで毎日自炊。掃除は苦手で隣に住んでる畑さんが1か月に一回掃除に来てくれます。あと」
続きを言おうとすると、女の子は先程まで持っていたナイフをしまった。
少しは警戒を解いてくれたのかと思ったが、そう考えるのはまだ早かった。
「敵に自分の情報をべらべら話すなんて無防備にも程があるわ」
「私はあなたの敵じゃないんだけどなー」
「私からしたらあなたはターゲットであり獲物よ」
「はいはい、まぁ、これから過ごしていく中でお互いのことを知っていこう」
「なぜ? あなたは私にやられる身なのに知る必要なんてないでしょ?」
「あのねー、はぁ」
会話が成立しない中、留都は大きくため息をついた。
だが、女の子は疲れも見せずただ座ってこちらを見ている。
「あなたの名前だけ教えて、それだけでいいから」
女の子はそう言われると、少し間が空いた。
そして、小声でこう言った。
「…バター」




