表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

その7 得体のしれない後輩君

私は地面に腰を下ろし、柔軟を始める。背中押してほしいなーとチラッと佐々木を見ると、佐々木はグラウンドに落ちてる石を拾って、並べていた。なにしてんの。まぁ石拾いだから偉いっちゃ偉いんだけど、私のストレッチの手伝いしてほしい。私は少し躊躇ったけど手を叩いた。

「はいはい、お呼びでしょうか?お嬢様」

私は何も言わず自分の背中を指さす。

「押してほしいんです?」

頷く。

「じゃ、やりますけどくれぐれもセクハラとか言わないでくださいね。おっと喋れないなら問題なかったな。じゃあ押しますよ」

少しイラっとしたけど、まぁいっか。痛い。痛い。


私がやってる競技は400m。自己ベストは56秒19。正直これ以上伸びる気がしないけど、走ること自体が好きだから続けてる。

鞄からスマホを取り出し、佐々木にラインする。でも佐々木は気が付く様子もなく私以外のトラックを走ってる部員にハイタッチを求めてる。どうせ無視されるに・・・あ、みんなタッチするのね。ふーん。私は佐々木の脛を蹴った。

「痛っ、つぁー脛はナシっすよ。痛いよぉ」

私は何も言わずスマホを見せる。

「別に一緒に走るのは問題ないですけど、俺、足遅いですよ」

『じゃあ、競争する?』

「絶対に遠慮っす」

『じゃ、しばらく走ろっか。タータンの上に上がる前に人工芝で砂とか落として』

「はいはーい」

『はいは1回』

「はいはい」

並走してジョギングを始める。佐々木のランニングフォームは腕の動きが少なく、歩幅も大きいから多分長距離が得意そう。というか、佐々木昔運動とかしてた?かなり綺麗なフォームだけど。

「それで聞いてくださいよ。昨日山重さんと別れて帰ってたら自販機あったんですよ。俺あのあたりあんまりいかないから自販機の位置とかメーカーとか知らなかったんですけど、その自販機チェリオだったんですよ。んで喉乾いてたから緑茶買おうとしたんですよ。俺麦茶嫌いなんで普段緑茶とかこだわって飲むタイプなんですけど。んで慣れた手つきで100円玉入れたら光んないボタンがいくつかあったんですよ。おっかしーなーって思って。んで値段見てみたらいくつか120円だったんですよ。ヤバくないです?俺らの小学生のおいしいジュースを支えてくれたチェリオがいつの間にやら100円じゃあ買えなくなってるんですよ。びっくりして財布落としちゃいましたよ。それで財布落としたら今日期限切れのクーポンも財布から出てきたこれはラッキーって思ってその店までのマップ開いたらなんとたった1キロって表記されててスキップしながらその店まで行ったんですよ。それでクーポン使って牛丼食べたんですよ。うますぎますね。牛丼。もし俺が死んだら牛丼のクーポンを一緒に燃やしてほしいですね」

・・・喧しいなこいつ。今400トラック1分10秒のペースで走ってるのにずっと喋ってる。むっとしてスピードを上げた。

「それで帰ったら弟が、あ、俺弟と兄貴と姉貴がいるんですよ。兄貴と姉貴は就職してそれぞれ香川と東京にいるんですけど、その弟が俺を見るなりクーポン渡してきたんですよ。今日までだからテイクアウトしてきて!ってんで案の定牛丼のクーポンだったんですよ。弟自転車に乗れないから帰ってきた俺にクーポン押し付けてきたんですよ。んでまた自転車のペダル踏んでおんなじ牛丼屋に行ってきたんですよ。今度はテイクアウトしようと思ったら親切な店員のおばちゃんにまた来たのかい?よぉ食べるねぇって皿に入れられて牛丼出されたんですよ。おっかしいなって思ってクーポンをよく見たら店内飲食限定って書かれててあのバカ野郎日本語がきちんと読めてねーのかって思いながらなんとか書き込んで、自腹で1杯テイクアウトして帰ってきたら母さんがご飯できたよって。腹減ってねーって思いながらキッチンに行ったら父さんが会社でもらったとか訳の分からんほどのカキフライが食卓に数多においてあったんですよ。しゃおら食ったろってしこたま食い散らかした後、体重計に乗ったんですよ。んで70kgって表記されて血の気が引きましたね。まぁうんこして朝起きたら69kgに戻ってきたからびっくりするくらいうんこしたみたいなんですよ。んで今日朝ごはんに残ってたカキフライ全部平らげて自転車乗ってここまで来たもんですから横っ腹が痛くて痛くて。いやぁ、運動俺きらいですねぇ」

・・・え、私ですら息切らすようなペースで走ってるのに、なんでこんなずっと喋れるの?私は立ち止まって肩で息をする。

「んで校舎着いたら先生がいるんですよ。いつも通り一方的に暴言は吐かれた後、土曜日大会の下見に行けっていわれたんですよ。土曜日、山重さん空いてます?」

私は色々言いたいことをこらえて、頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ