その35 決着
どれくらい抱きしめてたのかは、自分でもわかんない。佐々木は拒否するわけでもなく、かと言って抱き返す訳でもなく、ただ立っていた。恥ずかしくなって離れる。
「したら、ご飯行きましょ」
佐々木に連れてかれて、定食屋でご飯を食べた。何を話したのか、何を食べたのかすら思い出せない。気がついたら競技場にいた。
「あれ?ストレッチしなくていいんですか?」
言われてストレッチしてないことに気がつく。集中しないと。私はスマホをしまい、四肢を伸ばす。軽く一緒にジョギングをした。
私はスマホを取り出す。何度も書いては消してを繰り返して、10分以上かかって、震える手で送信ボタンを押した。
『今から勝負しませんか?私が勝ったら、付き合ってください』
佐々木はスマホを見て、何も言わずにスタートラインに立った。私もクラウチングスタートの構えを取る。
「走り出していいですよ」
私はその声を合図に飛び出した。ブロックがないのに、完璧なスタートを切った。そのまま速度を落とさず体を傾け、コーナーを曲がりきる、横をチラっと見る。あれ、佐々木は?慌てて前を見るも居ない、立ち止まって、振り返る。いない。佐々木はスタートから動いていなかった。・・・私が勝ったら、付き合ってくれるんだよね?私はまた走り出した。1歩1歩、ゆっくり噛み締めるように。コーナーを曲がり、最後の直線。佐々木は大きく手を広げた。私は加速して、その腕に飛び込んだ。大好き。佐々木。




