その34 君の傷
レシートに書いた2文字。たった2文字。それなのにこんなにも痛く重く感じる。先生は何も言わず部屋を出て行った。私は座ってたベッドにそのまま寝転がる。・・・私、佐々木のことが好きなんだ。佐々木は私のこと、どう思ってる?ねぇ。君の下手くそな敬語が好きだよ。君の軽口が好きだよ。君の笑顔が好きだよ。君の態度が好きだよ。私は、君が好きだよ。でも、君は私をどう思ってる?
ドアがノックされた。
「俺ですよーご飯行きましょー」
っ!私は深呼吸する。ファブリーズを最後に体にふりかけ、ドアを開けようとする。でも、手が震えてドアノブが掴めない。
「起きてますかー?」
佐々木は、佐々木がこのドアの目の前にいるんだ、私の好きな人がここに居るんだ。そう思うと、怖くてドアが開けられない。スマホがなった。
『起きたら隣の部屋来てくださいね』
・・・助けてよ。私、君と喋りたいよ。隣に座りたいしご飯も食べたい。デートもキスもそれ以上のことだってしたいよ。でも、ドアが開けれない。怖いよ。
私は泣きそうになりながら通話ボタンを押す。先生はすぐ出た。
「どうした?佐々木と話すのが怖いか?」
私は何も言えない。
「佐々木を異性として意識しちゃったのはわかる。それで怖いのもわかる。だから、俺は何もしない。ていうか、できない。自分の恋心は自分で管理しろ。お前はもう高校生なんだ」
電話は切られた。目の端に涙がたまる。わけも分からず、電話を佐々木にかけてみる。
「どうしました?まさか!話せるようになったんですか!?」
・・・ふふっ。
「んで、なんで電話なんですか?ちょっと手が離せないのか、食欲がないのか、どっちですか?」
・・・どっちでもないよ。君の声を聞いて、安心したかった。でも、君に会うのは怖いの。佐々木の声は安心できるのに、会うのがこんなにも怖い。
「あ、お化粧とかしてるからスマホが触れないのか。んで、暇だから俺の話が聞きたいんですよね」
・・・君の話はいくらでも聞きたいな。
「じゃあ、軽く昔話をします。むかしむかしある所に、男の子がいました。男の子は努力家で、誰にも見せずに努力して、周りにそれを才能だと自慢してました」
・・・それは、君の過去の話?
「その少年は、部活で浮きました。その少年だけ抜けて上手かったからです。しかし、その少年は努力をやめませんでした。部活のキャプテンはことある事に少年にできない人の立場に立てと言いました。少年はそれが理解できませんでした。出来ないなら努力する。それが出来ない人に合わせたくなかったからです」
・・・
「少年はパスを貰えなくなりました。それでも自分でボールを奪い、自分で決め、得点王は常に彼でした。しかし、その少年は努力を隠し続けてたから反感を買い続けていました。とある日、少年は部員から袋叩きに合いました」
っ!
「少年は肋骨と左腕、尾骨を折る重症を負いました。中学生ですから、加減を知らなかったのです。しかし、キャプテンはそれに激昂し、部員を全員半殺しにしました。1人は下半身不随、もう1人は左腕切断」
っ!私は立ち上がった。
「少年はキャプテンと仲良くなりました。しかし、中学では彼らの悪評が広まり、関わる人はいなくなりました。彼らはいつしか努力をしなくなりました」
私はドアノブを掴んだ。そして、勢いよくドアを開けた。
「その少年は、幸せになれるのでしょうかね」
佐々木は笑いながら立ってた。私はいてもたってもいられず抱きついた。




