その33 君の隣
お金を押し付けるように渡され、先生は部屋に戻ってしまった。私はコンビニに行く前にトイレに入る。用を足し、手を洗う。鏡に映る私の顔はまだ赤かった。隣で女の人が化粧をしてたから、私は顔を洗いたかったけど、さすがに恥ずかしいから代わりに手を入念に洗う。
トイレを出て、エレベーターに乗り込む。中で女の人が電話をしてた。
「たがらさぁ、私あんたのこと好きなんやて。逃げんでホテル来てや」
私はまた顔が赤くなりそうになった。私もこうやって佐々木に言えたらなぁ。って、まるで私、佐々木と付き合いたいみたいじゃん。エントランスで降り、コンビニに入る。ミンティアのぶどう味と麦茶、えーっと、佐々木は確か麦茶嫌いって言ってたから緑茶にしよう。
「え、わざわざ買ってくれたんですか?さすが山重さん!しかもご丁寧に緑茶じゃあないですか!」
・・・ふふっ、佐々木ならこう言うかな。後はえっと、ポケットティッシュも手に取り、お菓子のブラックサンダーも手に持つ。・・・無糖だから不味かったのかな。やっぱりブラックサンダーを戻して、缶のカフェラテを手に取る。ペットボトルのコーヒーは偽物らしいしね。
お会計を済ませ、部屋に戻る。時計を見てもまだ約束まで30分もある。はぁ。缶コーヒーを開けてみる。1口だけ飲んでみる。うん、甘い。甘くて美味しいかも。
ノックされた。佐々木かも。鏡を見てみる。少しだけ顔が赤いけど別におかしくないよね。ドアを開ける。
「・・・毎回そう露骨にがっかりされると心に来るぜ」
先生だった。私は部屋に入れる。私はベッドに座ると先生は不思議な顔をした。
「男を部屋に入れた時はベッドには座らないほうがいいぞ」
なんで?私は首を傾げる。
「押し倒されたら抵抗できないだろ」
なるほど。
「今から2人で飯行くんだろ?」
頷く。
「お前はどうしたいんだ?友達のままでいいのか?」
私は少し躊躇ったけど頷いた。
「・・・じゃあ、アイツに彼女ができても文句は言えないからな。アイツ、モテるぞ」
っ、ま、まあ、その、さっ、佐々木が誰と付き合っても、私には関係ないし。祝福するし。
「・・・嫌なんだろ?」
・・・
「どうなんだ?佐々木の隣にいたいのか?」
・・・
「佐々木、実は先週告白されてたぞ。偶々見ただけだが」
っ・・・、私、私は!佐々木がっ
「どうしたいんだ?」
私は震える手でペンを持ち、レシートの裏に小さく小さく、文字を書く。
『好き』
「・・・それでいいじゃねえか」
先生は私の頭をわしゃわしゃと撫でた。振り払う。




